Geber86/Getty Images
毎年発表される「世界幸福度調査」。そのトップ10には例年北欧5カ国がランクインしている。フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランドは、他国に比べて幸福度が高いのだ。
2022年のランキングではフィンランドが幸福度1位となり、デンマーク、アイスランドがそれに続いている。スウェーデンとノルウェーもそれぞれ7位と8位にランクインし、トップ10入りを果たした。ちなみにアメリカは16位、日本は54位だった。
フィンランド出身のファニー・アバーグ(Fanny Aberg)とマーカス・ホンカネン(Marcus Honkanen)は、現在はスウェーデンを本拠にエグゼクティブ人材紹介会社Nordic Mindsを経営している。同社はストックホルムとヘルシンキ、そしてドイツのハンブルクとデュッセルドルフにオフィスを構えている。
Insiderはアバーグとホンカネンの2人に、北欧人の考え方、他国とのライフスタイルや仕事観の違いについて聞いた。
自分自身の幸せをコントロールできる
ファニー・アバーグ(左)とマーカス・ホンカネン。
Nordic Minds
北欧の国では「家族が常に最優先」とアバーグは言う。「家族と一緒に過ごす時間を基準にして労働時間は決まるんです」
午後4時になるとPCの電源を落とし、保育園に子どもをお迎えに行く。夕方は子どもと過ごし、一緒に夕食の食卓を囲むのはごく当たり前のことだとアバーグは言う。「仕事が残っていたとしても、子どもが寝た後でできますから」
ホンカネンも、「北欧の中でも特にスウェーデンは先駆的だと思います。出勤の義務といったものもありませんしね。だから国民は自分自身の幸せをコントロールできるんです」と語る。
「北欧の文化」を象徴する言葉をアバーグに尋ねると、「オープン」「正直」「パーソナル」「透明性」を挙げた。
「北欧の人は、仕事ではカジュアルでありながらプロフェッショナルなんです。廊下ですれ違った人がジーンズにパーカーという格好だったら、新入社員かもしれないし、CEOの可能性もあります」
北欧の会社は上下関係があまりなく、お互いをファーストネームで呼び合うことばほとんどだとアバーグは言う。「下っ端でも管理職でも、誰もが発言できます。組織がフラットなので仕事も効率的に進められますね」
会議が多いのは他国と同様だが、よりカジュアルなものが多いとアバーグは言う。スウェーデンには「フィーカ」と呼ばれる習慣がある。これはコーヒーとお菓子を食べながら友人と過ごす時間のことだ。
仕事上の成功は幸せの鍵ではない
またアバーグによれば、スウェーデンでは「仕事を家庭に持ち込まないという意味で」仕事と余暇の間に明確な線引きがなされているという。
北欧に滞在経験のある人ならその物価の高さはよく知っているだろうが、だからといってそのぶん労働者の収入が多いわけではない。「その反対です。組織がフラットなので、上のポジションになっても給料はそれほど上がらないんです」とアバーグは言う。
中小企業の管理職の場合、多くても月収1万ユーロ(約137万円、1ユーロ=137円換算)とボーナスだという。2021年におけるスウェーデンの従業員の平均月収は3万6100スウェーデン・クローナ(約48万円、1スウェーデン・クローナ=13.3円)だった。
またホンカネンは、生活コストが高くても国民が生活を送れるのは、全国民を対象とした社会保障があるからだと言う。「社会保険には、健康保険、育児保険、障害保険、年金保険、労働災害保険などがあります」
教育が無償で受けられるのも重要な点だ。「ここでは親の経済状況に関係なく、誰もが教育を受けられます」とアバーグは説明する。また、共働きの親は子どもを一日中保育園で預かってもらえるなど、親への支援も充実している。
アバーグもホンカネンも、「肩の力を抜いて」「本当の自分をさらけ出し、職場でも善人ぶらなくていい」ところは北欧の文化ならではだと口々に言う。
ホンカネンは「支配より、信頼に基づいた企業文化をつくることが大切なんじゃないでしょうか」と問いかけ、アバーグもこう続ける。
「人はもっと、自分自身の生活や家族のこと、そして自由な時間に目を向けるべきです。仕事上の成功は、幸せの鍵ではありませんから」
※この記事は2022年5月4日初出です。