iPad Air 第5世代とMagic Keyboard。
撮影:小林優多郎
「iPad Air」(第5世代)を数日使ってみた感想は、やや乱暴かもしれないが「もうこれでいいじゃん」だ。
発表当時からスペックを見ながら「チップがM1になって、ほぼPro」「最もコスパが高い」と書いていたが、その期待は裏切られなかった。
筆者は2021年3月発売の「12.9インチiPad Pro(第5世代)」、2021年9月発売の「iPad mini(第6世代)」を仕事でもプライベートでも使っており、それぞれと比較しながらその根拠を書いていきたい。
iPadを「フルお仕事端末」として使うには
左からiPad mini、iPad Air、12.9インチiPad Pro
撮影:小林優多郎
筆者にとってiPadはすでにPCと同じぐらい使い込んでいるデバイスだ。
先日、ワーケーションも兼ねて妻の実家の山口に帰省したが、その時は12.9インチiPad Pro(第5世代)とMagic Keyboardの組み合わせだけで仕事ができた。
iPad上で進める作業の内容をもう少し詳しく書くと、以下のような具合だ(括弧内は具体的なアプリ名)。
- ネットで調べ物(Safari/Chrome)
- 原稿の執筆(Type)
- 写真の現像(iPad版Lightroom)
- 写真の編集(iPad版Photoshop)
- 写真のリサイズ(ショートカットApp)
- 図版の作成(iPad版Illustrator)
- 原稿のアップロードと整形(Safari)
- 編集部での連絡(Slack)
Photoshop、IllustratorのiPad版はデスクトップ版と比べるとまだまだ機能は劣るが、筆者が使う程度の機能や他のアプリと組み合わせるとかなり実用的になる。
そんなにAdobe製品が使いたければ「MacBook Airでもいいのでは?」というツッコミもあるだろうが、タッチやApple Pencilでのペン操作ができる点、(セルラー版であれば)テザリングなしですぐにネットにつながる点はMacBookにはない魅力だと思う(同条件では「Surface Pro 8」などになる)。
今回は本原稿を執筆するにあたって、12.9インチiPad Pro(第5世代)で試していた内容をiPad Air(第5世代)でも試してみることにした。
ディスプレイの差は大きさと色味
左から12.9インチiPad ProとiPad Air。
撮影:小林優多郎
テキストエディタでの原稿作業、Safariの使い勝手などは全くもって大きく変わらない。これは最近のiPadであればProでも、今回のAirでもminiでも変わらないだろう。
当然画面サイズの違いはある。12.9インチiPad Pro(第5世代)が最も作業領域が広いが、アプリアイコンの並びや各種UIの間隔など12.9インチではやや間伸びしている印象があるため、10.9インチだと「ちょうどいい」感覚だ。
左上がiPad Air、左下がmini、右が12.9インチiPad Pro。実物を比べてみないとわからないレベルではある。
撮影:小林優多郎
発色の違いはある。黒を表示したときの「くっきりさ」はやはり第5世代Airより、ミニLEDを搭載した12.9インチiPad Pro(第5世代)に分がある。
ただ、この違いは同じ実際に横に並べないとわからないレベルではある。
キーボードのサイズ感の違いには慣れがいる
左からiPad Air、12.9インチiPad Pro。
撮影:小林優多郎
個人的に気になった点はキーボードだ。
iPad Air(第5世代)では、11インチiPad Pro(第3世代)と同じ「Magic Keyboard」が使える。
筆者が12.9インチiPad Pro(第5世代)を「重い」と言いながらもずっと使っているのは、1つはこのキーボードの反応の良さと、キーボードが充電不要で使える使い勝手の良さからだ。
Magic Keyboardの機能面としては、12.9インチiPad Pro向けとiPad Air(第5世代)向けに違いはない。
ただ、キーの配列がMac版のMagic Keyboardと比べるとやや特殊だ。具体的には右端から2列〜3列目のキー(例えば「@」 「ー」「:」など)や左から1列目のキーなどのサイズが他のキーの約半分の幅になっている。
慣れてしまえば問題ないのだろうが、自分の場合は「MacとiPadで同じサイズ感のキーボード」だからこそ違和感なく操作できていたのだと改めて実感した。
Adobeアプリは快適、写真の読み込みには留意点あり
続いてAdobe系のアプリ、Photoshop、Lightroom、Illustratorを使ってみた。
第5世代Proも第5世代Airも同じ「Apple M1」を搭載している点が大きいが、PhotoshopとIllustratorについては、自分が普段使う範囲での動作は問題なかった。
とはいえ、両アプリとも実装されている機能は(PC版に比べて)まだ少ない。そのため筆者の場合は、図版やYouTubeのサムネイルなどのテンプレートをあらかじめクラウドドキュメントで保存しておき、図形の大きさだけを変える状態にしている。問題を感じないのは複雑な作業をしていないから、という一面もあるだろう。
Illustrator iPad版。
画像:筆者によるスクリーンショット
Lightroomについては、少し興味深い計測データがある。
筆者は普段、ソニーのミラーレス一眼「α7 IV」にUSB Type-Cケーブルを直接つないで、LightroomからRAWデータをコピーし、調整し、書き出している。
今回の原稿用に撮影したデータ26枚(合計1.08GB)に対し、同じことを第5世代Proと第5世代Airで実行してみたが、体感的にProの方がワンテンポ早かった。
Lightroom iPad版。
画像:筆者によるスクリーンショット
実際に読み込み画面のサムネイル表示の速度はAirが30秒なのに対し、Proが25秒。コピー自体にかかった速度はAirが15秒、Proが13秒だった。この枚数であれば実用的な違いがあるとは言えないが、より枚数が多くなってきた時に差は感じるだろう。
なお、第5世代Airが転送速度最大10GbpsのUSB 3.1端子なのに対し、第5世代Proが最大40GbpsのThunderbolt端子。同じ形状の端子と言えど違いはある。
もちろん、α7 IVのUSB Type-Cは最大10GbpsのUSB 3.2仕様なので、今回のテストと直接関係は薄い。より高速な周辺機器との組み合わせやハブなどを経由してつなげる機器の数が増えたときは、Proにアドバンテージがある。
比較的コンパクトで実用性の高いタブレット
この使い勝手でこのサイズ感はお買い得だ。
撮影:小林優多郎
とはいえ、iPad Air(第5世代)の満足度はかなり高い。当たり前のことではあるが、12.9インチiPad Proより軽いのに同じApple M1の処理性能を持っている。iPad miniよりサイズが大きいことは、今回のような作業の場合はむしろ、画面が大きいというメリットになる。
写真左からiPad Air、12.9インチiPad Pro。カメラの数、LiDARの有無が異なる。
撮影:小林優多郎
価格面で言えば、Airの256GB(9万2800円)と、11インチProの128GB(9万4800円)の価格差がほぼないという指摘もある。Proとの違いは、おおざっぱに言えばスピーカーの数や選択できるストレージ容量の種類、高性能なLiDARカメラか否かだ。
ただ、仕事で使う前提なら「容量優先」という選択は十分成立する。その点で、Airは手ごろな価格のタブレットのメイン機という立ち位置だ。とにかく安く、という人には7万4800円の64GBモデルを選ぶ方法もある。
ちなみに、高性能タブレットで言えば日本では珍しくサムスンから「Galaxy Tab S8+」が4月に発売された。ただ、こちらは12.4インチだ。どちらかと言えばライバルはiPad Proだし、セルラー版の選択肢もない。
「比較的コンパクトで実用性の高いタブレット」としてのiPad Air(第5世代)の立ち位置はまだ揺るがないだろう。
注:この記事では、Business Insider Japan編集部がお勧めの製品を紹介しています。リンクを経由してアマゾンで製品を購入すると、編集部とアマゾンとのアフィリエイト契約により、編集部が一定割合の利益を得ます。
(文、撮影・小林優多郎)