Z世代の投資スタイルには意外な傾向が見られるという。
Rachel Mendelson/Insider
Z世代の投資家の59%が、酔っ払って取引したことがあると臆面もなく認めている。それでもなお、この層が2021年、S&P500を上回る成績を収めたことが新たな調査レポートで明らかになった。
エイペックス・フィンテック・ソリューションズ(Apex Fintech Solutions)は、400万近くにのぼるZ世代の取引口座を調査し、Z世代の保有する上位100銘柄を特定するとともに、彼らの仮想通貨への見解や、ウォーレン・バフェットのような伝説的投資家に対する見方についても明らかにした。
「5年前まで、こうした投資家の層は存在しませんでした。彼らが投資できるプラットフォームがありませんでしたから」と語るのは、Insiderの取材に応じたエイペックスのCEO、ビル・カプッツィ(Bill Capuzzi)だ。
「しかし、コインベース(Coinbase)やロビンフッド(Robinhood)といったプラットフォームが登場し、今やZ世代が早くから投資するようになっているんです」
バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)も、Z世代の台頭はあらゆる投資家が注視すべき重要なテーマだと強調する。
「Z世代はもはや子どもではなく、大学を卒業し、職に就き、経済の構成員となっています」と同行の国際テーマ投資責任者、ハイム・イスラエル(Haim Israel)は言う。「この先5、6年で、彼らがすべてを変えてしまうでしょう」
成長株からバリュー株へ
1998年創業のグーグルよりも若い層が大半を占めるZ世代の投資家といえば、多くの人が成長株やハイテク株を連想するだろう。
もちろんベビーブーム世代やX世代に比べればこうした銘柄を好む傾向にあるものの、Z世代はここ3カ月でバリュー株へ目を向けるようになったとカプッツィは言う。
「若い世代は、年齢を重ねた投資家たちよりも確かにアグレッシブで、ポートフォリオは成長株に偏っています。しかし、過去3カ月でZ世代にリスク回避の傾向が見られました」とカプッツィは指摘する。
2022年の1〜4月の4カ月間は、インフレ、金利上昇、ロシアのウクライナ侵攻などあらゆる要因によって不確実性が著しく高まり、株式市場が変動した。これが後押しとなってZ世代の投資家たちは、1バレル100ドルを超え急騰した原油の恩恵を受けるエネルギー株を狙うようになった。
「ヨーロッパで起きた戦争が原油を新たな高値に押し上げる中で、エネルギー株は著しく上昇しました。若い層がシェブロンやエクソンモービル株を買っているのは非常に目を引く動向です。Z世代は機転が利き、情報にも通じていることが分かります」とカプッツィは言う。
エイペックスの調査レポートによると、Z世代の投資家が最も保有する銘柄ランキングで、エクソンは順位を34上げて27位になった。シェブロンは76位上昇して49位だ。
また、Z世代はコカ・コーラ、コストコ、ペプシといった銘柄も保持している。定期的に配当が支払われるからだとカプッツィは言う。
「Z世代が保有する上位銘柄のいくつかは、前四半期に配当があった企業です。彼らはコロナ禍で高値だった銘柄やミーム株から、バリュー株へと移行しつつあります」
仮想通貨への抵抗感は薄い
エイペックスのフィンテックプラットフォームには約450万の仮想通貨取引口座があるが、上の世代と違い、Z世代は仮想通貨に対して懐疑的な見方はしていないとカプッツィは感じている。
「Z世代は、仮想通貨を単なる資産クラスのひとつ、利益を生む方法のひとつと捉えています」
その一方で、Z世代は仮想通貨に対して思いのほか賢明なアプローチをとる傾向にあるとカプッツィは言う。資金の大半をビットコインやイーサリアムなどの大型トークンに投資し、ドージコインといったミームトークンからは手を引きつつあるという。
「2大トークンはビットコインとイーサリアムで、それに続くトークンとなると一気に規模が小さくなります。Z世代は賢明ですよ。いきなり有り金を全部ドージコインにつぎ込むようなマネはしません」
投資スタイルのお手本はあの偉人?
Z世代の投資家のスタイルは、“オマハの賢人”ウォーレン・バフェット(左)の投資スタイルに似た傾向がある(写真右はバークシャー・ハサウェイ副会長のチャーリー・マンガー)。
REUTERS/Scott Morgan
Z世代の投資家には自覚がないかもしれないが、ウォーレン・バフェットは彼らに多大なインパクトを与えた。エイペックスが追跡した口座の多くが、91歳の投資家であるバフェットの「バイ・アンド・ホールド」戦略を忠実に実行しているように見えるというのだ。カプッツィは言う。
「当社の四半期ごとの指標を見る限り、かなり一貫性があります。私に言わせれば、それはつまり、バフェットやチャーリー・マンガー(Charlie Munger、バフェットが会長を務めるバークシャー・ハサウェイの副会長)が理想とする、株を買って持ち続けるという戦略に他なりません」
バリュー投資家のバフェットなら、AMCエンターテインメント(AMC Entertainment)やゲームストップ(GameStop)といったZ世代が好む銘柄には賛同しないだろう。いずれもZ世代が保持する上位10銘柄に入っている。
しかしここには、もうひとりの伝説的投資家であるピーター・リンチ(Peter Lynch)の理想が反映されているように見えるとカプッツィは言う。フィデリティの旗艦ファンドであるマゼランファンドの運用で平均29%の年間リターンを達成したリンチは、「自分が知るものに投資する」という運用方針だ。
「ピーター・リンチは、自分が信じるものに投資するよう説きました。だからベビーブーム世代はIBM、プロクター・アンド・ギャンブル、ペプシなどに好んで投資した。彼らは子どもの頃からこうした企業を見てきていますからね」とカプッツィは言う。
「同じ理由で、Z世代はスナップチャットやアップルといった銘柄を好むんです。ミーム株もこうした投資観に合致していると言えます」
(編集・常盤亜由子)