シルバーラングール(左)とテングザル(右)。
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- 発見された「謎のサル」は、遠縁にあたる2種のサルが混血した希少な例である可能性であることが、新たな研究論文で示唆された。
- この研究によると、遠縁の種同士の交配は「野生ではほとんど観察されていない」という。
- この混血のサルは、生態系のバランスが崩れていることを示す「警戒すべき徴候」である可能性が高いと、論文の著者らは述べている。
ボルネオ島で目撃された「謎のサル」は、遠縁にあたる2種のサルが混血した希少な例である可能性が高いと、International Journal of Primatologyに掲載された研究論文が示唆している。
マレーシアのボルネオ島キナバタンガン川の近くで目撃されたこの謎の霊長類は、同じ森林に生息する遠縁の2種、テングザルとシルバーラングールの子どもである可能性が高いと研究者は述べている。
近縁種が交配して混血が生まれることはあるが、遠縁種同士の交配は「野生ではほとんど観察されていない」という。
この2種は別の属であり、見た目も大きく異なる。テングザルの成獣は赤茶色の毛に長い鼻を持つ。一方、シルバーラングールの成獣は毛先だけが灰色になった黒い毛に覆われ、凹凸の少ない顔をしている。
両種の身体的特徴を持つ「謎のサル」の写真は、このリンクから見ることができる。
新型コロナウイルスの流行により、現地調査ができなかった研究者たちは、2017年にSNSに掲載された写真で初めて、当時はまだ生まれて間もないこの謎の霊長類を確認した。2020年に撮影された写真によると、このサルは今や大人のメスとなり、子どもがいるようだ。
「彼女は赤ちゃんに授乳しているように見えた」と、論文の共著者であるマレーシア科学大学の霊長類学者、ナディーン・ルパート(Nadine Ruppert)がLive Scienceに語っている。
「我々は皆、畏敬の念を抱いた。現実とは思えなかった」
異なる種から生まれた混血のほとんどは不妊であり、子孫を残すことができないことから、このサル親子の謎がさらに深まっていると、Live Scienceが報じている。
他のメスの子どもの世話をしていた可能性もあるが、乳房が張っているように見えたため、授乳中であることが示唆された。
この奇妙な混血のサルの存在は、生態系のバランスが崩れている証拠かもしれないと、ルパートはニューズウィーク(Newsweek)に語っている。
「混血であると思われる個体の存在自体は、生態系のバランスや2つの種にとって懸念すべきことではないが、すでにバランスが崩れていると思われる生態系では警戒すべき徴候だ」
いずれの種のオスも、通常は成熟すると交尾の機会を求めて家族の集団から離れるが、森林破壊による生息地の減少が交尾の機会の制限につながっていて、このことが混血の説明になるかもしれないと、ルパートはNewsweekに語っている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)