コロナ禍の在宅需要を追い風に従業員数、株価とも躍進を遂げたテック企業が、ここに来て総崩れの様相を見せている。
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新型コロナウイルスの大流行により、世界で数千万、数億の人々が外出制限措置に従わざるを得なくなり、同時に、仕事や娯楽、社会との関係維持のためにインターネットの活用を余儀なくされた。
一方、ハイテク産業はその影響でかつてない好景気に沸いた。が、それもいまや過去のものとなりつつある。
コロナ変異株の感染拡大に端を発するグローバルサプライチェーン障害、行動制限からの急速な経済再開に伴う高インフレ、そうしたタイトな市場環境がロシアのウクライナ軍事侵攻と西側諸国による経済制裁によって助長され、連鎖反応が世界経済に深刻な打撃をもたらそうとしている。
ズーム(Zoom)やオクタ(Okta)、ブロック(Block)、トゥイリオ(Twilio)などコロナ禍で躍進したテック企業は2020年から21年にかけて従業員を倍以上に増やし、株価も急上昇した。
しかし、2021年11月中旬ごろから、それら急成長を遂げた企業を筆頭に多くのハイテク銘柄が弱気相場入りし、各社とも今後想定されるコスト削減とレイオフの波に身構えている状況だ。
米調査会社エベレストグループ(Everest Group)のパートナー(テクノロジー分野担当)、ニテシュ・ミッタルは次のように分析する。
「コロナ禍で熱狂的に盛り上がり、ピーク需要を迎えたものの、それはもともと持続可能なものではなかったため、調整局面がやって来たわけです。
人々が自宅に籠もり、テック企業が提供するサービスに多くの時間を費やす状況が大前提としてあって、それはパンデミックからの回復が進めば当然持続不能になります」
例えば、アマゾン(Amazon)は行動制限を受けて急増したインターネット通販(EC)需要に応えるべく、2020年から21年にかけてスタッフの大増員に取り組んだ。結果、従業員数は2019年末時点に比べて2倍以上に増えた。
しかし、2022年は消費者の外出機会が増え、旅行や外食などへの支出は再び増加に転じた。2022年第1四半期(1〜3月)の決算発表によれば、アマゾンの売上高成長率は鈍化し、純損益は7年ぶりの四半期赤字。38億4400万ドル(約5000億円)の損失を計上した。
同社のブライアン・オルサフスキー最高財務責任者(CFO)は4月末、記者団に対して「これまでの人手不足が一気に人余り状態に変わった」と発言している。
また、テック企業のなかにはすでに人員削減に着手したところもある。
ネットフリックス(Netflix)の株価は2019年から21年にかけて2倍にふくれ上がり、従業員数は3割以上増えた。ところが、株価は11月中旬につけた史上最高値をピークにその後低迷が続き、4月中旬には(史上最高値との比較で)70%の下落となった。
同社は2021年12月に開設したばかりの公式ガイドサイド「Tudum(トゥダム)」運営部門を含め、すでに人員整理を始めている。
下で紹介するチャート【図表1】は、米主要テック企業の2019年末〜21年末の従業員数変動率(右側)を、2021年11月19日〜2022年5月5日の株価変動率(左側)と並べて示したものだ。
株価下落が必ずしもコスト削減や人員整理に直結するとは言えないものの、上場企業の経営陣は往々にしてこうした市場の劇的変化に反応して動く。
アマゾン創業者で前最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾスは最近、ツイッターにこんなコメントを投稿している。
「市場は教えてくれる。そして、その教訓には痛みが伴うこともある」
【図表1】米主要テック企業の従業員数および株価変動率(画像をクリックすると別ウィンドウで拡大表示されます)。
出所:ヤフーファイナンス、米証券取引委員会(SEC)資料よりInsider編集部(Andy Kiersz)作成
(翻訳・編集:川村力)