2022年5月9日、ロシア・モスクワの赤の広場で行われた戦勝記念日パレードに出席したロシアのウラジーミル・プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ国防相。
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- プーチンは、戦勝記念日の演説でウクライナでの戦争について何らかの発表をすると予想されていた。
- 彼が正式に戦争を宣言するか、ロシアが勝利したと発表するだろうと考える人もいたが、どちらでもなかった。
- 「プーチン大統領は、祝うべき勝利がないことを認めた」と、アメリカのリンダ・トーマス=グリーンフィールド国連大使はCNNに述べた。
ロシアのウラジミール・プーチン(Vladimir Putin)大統領が2022年5月9日の戦勝記念日の演説で、ウクライナでの戦争について重大な発表を行うのではないかと予想されていたが、結局、戦略を転換することはなく、主にクレムリンが数カ月間流布してきた紛争に関する根拠のないプロパガンダを押し付けることに終始した。
欧米の政府関係者や専門家は、プーチン大統領がウクライナに正式に宣戦布告するか、あるいは勝利を宣言するのではないかと考えていた。しかし、彼はそのどちらも行わず、代わりに戦争を正当化する理由を繰り返し述べ、西側、NATO、ウクライナが「先制」侵攻する以外の選択肢を与えなかったというシナリオを押し通した。
「プーチン大統領は、祝うべき勝利がないことを認めた」と、アメリカのリンダ・トーマス=グリーンフィールド(Linda Thomas-Greenfield)国連大使はCNNに語った。「彼はウクライナに乗り込んだものの、数日で彼らを屈服させることはできなかった」と彼女は付け加えた。
ロシアはこれまでのところ、戦争で大きな成果を上げることができず、2月24日に侵攻を開始して以来、最大で1万5000人の兵力を失ったと推定されている。ウクライナの首都キーウの占領に失敗したロシア軍は現在、東部のドンバス地方に目を向けている。
「プーチン大統領は、祝う勝利がないことを認識している...彼はウクライナに乗り込んだが、数日で彼らを屈服させて、降伏させることはできなかった」
アメリカのリンダ・トマス=グリーンフィールド国連大使。ロシアが第二次世界大戦の勝利を祝う「戦勝記念日」に。
ロシアでは毎年5月9日にナチスドイツの降伏を記念して戦勝記念日を祝う。プーチン大統領はこの日の演説の中で、ロシアを世界における善の力だとして、ロシア軍がウクライナでネオナチと戦っているという偽りの主張をした。
プーチン氏はウクライナのロシア軍へのメッセージで、「君たちは祖国とその未来のために戦っている。誰も第二次世界大戦の教訓を忘れないように。拷問者や死の部隊やナチの居場所が世界にないように」と述べ、「君たちの父親、祖父、曾祖父が勝ち取ったものを今日守っているのだ」と付け加えた。
侵攻開始以来、民間人居住地域を容赦なく標的にしているロシア軍は、戦争犯罪を犯したとして非難されている。プーチン氏は、ウクライナでのいわゆる「特別作戦」はロシア系民族を守るために開始したと主張しているが、戦争はロシア語圏を特に激しく襲い、ウクライナ全土に苦しみをもたらしている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、戦争が始まって以来、580万人以上のウクライナ人が国外に逃亡した。
プーチン氏は演説で、戦争を拡大する計画を示唆しなかったが、侵略を終わらせるために動くという兆候も示さなかった。
世界の多くは、この戦争に反対し、前例のない制裁をロシアに科しており、国連でも非難する投票を行った。
この戦争に対する世界的な怒りを表すかのように、ロシアの駐ポーランド大使が5月9日にワルシャワで第二次世界大戦で死亡した赤軍兵士が埋葬されている墓地に敬意を表そうとした際、赤いペンキをかけられた。ロシア外務省はこの事件に対する声明で、「ネオナチの支持者が再び顔を見せた。そしてそれは血にまみれたものだ」と述べ、ロシアの無謀な戦争に反対する人々を、またしても親ナチだと誤認させている。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)