吉野家「生娘をシャブ漬け」発言に調査求める署名開始。発起人が語る、その後の講義で起きたこと

早稲田大学が開講している社会人向け講座で、吉野家の元常務が「生娘をシャブ漬け戦略」などと発言した問題で、吉野家と早稲田大学に対し抗議した受講生が署名を立ち上げた。

これまで大学と話し合いの場を設けてきたが、問題意識が共有されていないと感じたからだ。

現在も継続している当該講座では、他の受講生から「講師の萎縮が心配」「SNSの投稿を禁止するべき」などの発言もあったという。経緯を聞いた。

早稲田大学の教授も賛同

吉野家、早稲田

問題発言があった吉野家、早稲田大学に対する署名が立ち上がった。発起人は抗議した受講生だ。

出典:Change.org

署名の宛先は吉野家ホールディングスと株式会社吉野家、そして早稲田大学だ。

求めているのは、

  • 第三者委員会で組織内における差別、セクハラ・パワハラの実態を調査して公表すること
  • コンプライアンスルールの策定と公表
  • コンプライアンス教育(特に役員や教授・講師に対して)と実施内容の公表
  • 管理職などで女性や第3の性、海外出身者などを30%以上雇用して​​ダイバーシティ・インクルージョンを推進すること

などだ。

賛同人には早稲田大学の教授で、大学側のこれまでのハラスメント対策に課題意識を持つ教授らも名を連ねている。受講生は言う。

「早稲田大学側の人権・差別・ハラスメントに対する課題意識が弱いこと、定められたハラスメントガイドラインが充分に機能していないことを目の当たりにしました。
また吉野家は社員への暴力や暴言に基づく団体交渉、就活生への国籍差別などの問題が立て続けに公になっています。社内で今回のようなニュアンスの発言が日常的に行われていなかったと言い切れるでしょうか?

早稲田大学で学ぶ学生や吉野家で働く従業員へのハラスメント被害の実態調査と、根本的な改善策の実施が必要だと思い、署名を立ち上げました」(受講生)

「講師の萎縮が心配」「SNSを禁止すべき」

吉野家

撮影:西山里緒

受講生はこれまで代理人の伊藤和子弁護士と共に、4月22日に早稲田大学、25日に吉野家に対して署名と同じ趣旨の要望書を送っている。

4月22日には問題となった「生娘をシャブ漬け戦略」や「家に居場所のない男性が何度も来店する」などの発言があった早稲田大学の「デジタル時代のマーケティング総合講座」の担当教授と事務局の責任者らと話し合いの場が設けられた。

また翌23日には講座内で今後の運営について教授と受講生らで話し合う機会もあったという。

「早稲田大学はすでに再発防止策を検討しているということでしたが、誰が旗振り役になるかは未定とのことでした。

また講座内で今後のことを話し合った際には、一部の受講生から『講師が萎縮することが心配』『SNSの投稿を禁止すべき』などの声も上がりました。当事者や関係者間で今回の発言の問題点や深刻さが共有できているとは思えません

署名によって社会的な関心の高さを示さなければ、根本的な改善がなされず、問題は風化し、さらに被害を受ける方が増える可能性もあるではと懸念しています」(受講生)

受講生の中には「自身の認知の歪みに気づいた」「抗議してくれたことに感謝している」と話す人もいれば、「(伊東氏から)学ぶ機会を失わせたことをどう考えているのか」「あなたとは一緒にチームを組みたくない」と言う人もいたそうだ。

受講をやめる人も

早稲田大学

撮影:大隈優

こうしたこともあり、受講生は講座の受講を中止する決断をした。受講料の38万5000円は全額返金されたという。今回の件を受けて受講を中止した人は、受講生のほかにも5人以上いると早稲田大学から説明があったそうだ。

「社会人になって数社でマーケティングの仕事をする中で、偏った性別や思考が多い環境で悔しさを感じることが多々あったので、勉強して力をつけようと思って受講しました。教育の場でもこのような差別や偏見が待ち受けていたことにショックが大きいです。

関係者だけではありません。この件に関するさまざまな方の意見を見ていても、差別ではなく単なる失言だと捉えている人が少なくないことに危機感を覚えています」(受講生)

署名の賛同人であり、話し合いの場にも同席している伊藤和子弁護士も同意見だ。

「組織としてSDGsやダイバーシティ&インクルージョンを推進したりハラスメントのガイドラインを設けたりと、HPにはしっかりしたことが書かれているけれど実態が伴っていないことが明らかになりました。この現状は非常に不誠実です。

吉野家や早稲田大学には、差別やハラスメントにしっかりと対応することは社会の要請なのだと理解してもらいたい。署名がその後押し、プレッシャーになればと思っています」(伊藤さん)

これまでの経緯は以下のタイトルの記事で報じている。

吉野家 常務「生娘をシャブ漬け」発言:早稲田大「直ちに降ろす」と声明

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(文・竹下郁子

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