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失敗したら、むしろお祝いしなさい…自分は「知的で賢い」と思う人が陥りがちな人生の罠【音声付・入山章栄】

今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても平易に読み通せます。

成功体験にとらわれず、知識をアップデートし続けるためには「知的謙虚さ」が重要だといいます。では、知的謙虚さを持ち続けるにはどうすればいいか。入山先生が「失敗したらお祝いしなさい」と具体的な解決策を教えてくれました。

【音声版の試聴はこちら】(再生時間:10分18秒)※クリックすると音声が流れます


人間の合理性は限定的なもの

こんにちは、入山章栄です。

今回はBusiness Insider Japan編集部の小倉宏弥さんが気になっているテーマについて考えてみましょう。


BIJ編集部・小倉の写真

BIJ編集部・小倉

入山先生、「知的で賢い人ほど陥りがちなワナがある」という説をご存じですか? BBC Futureの元シニア・ジャーナリストのデビッド・ロブソンが『The Intelligence Trap』(日本経済新聞出版)という本の中で、知的で賢い人ほど自信過剰になりやすく、認知の死角に陥りがちで、学ぶのが下手な傾向がある、と大きく3つのワナを挙げています。

このワナにはまらないためには、「知的謙虚さ」を持つことが重要だというわけですね。確かに知性と思考力は違うという意見もありますし、知性のある人が必ずしもビジネスで成功しているわけではないと思います。この考え方は経営理論的に読み解けるものでしょうか。


「知的謙虚さ」っていい言葉ですね。僕はこの考え方には100%賛成です。何より、この主張は経営学の理論でも説明できると思います。

関連する理論は、僕の著書『世界標準の経営理論』で言えば、第11章で紹介されている「カーネギー学派の企業行動理論(BTF)」です。この「企業行動理論」の前提は認知科学(認知心理学)です。そして「知的謙虚さが大事」というのは、実は認知心理学の基本的な考え方でもあります。

認知心理学で重要な前提は、人間の認知には限界があるので、「人は実はこの世のことをほとんどよく知らない」ということなのです。

実際、この世界のほとんどのことを我々は知りません。世界の広さに比べれば、一人の人間が認識することのできる範囲はものすごく狭い。

例えば、僕はいまブラジルで何が起きているかをほぼ知らないし、ウクライナがどんなにひどい状況かもニュースで報道される以上のことは分からない。最新の量子力学の分野でどういう議論がされているかも知らない。

それどころか、自分の関連する企業の職場で起きた出来事をすべて把握しているわけではないし、指導しているゼミ生が私生活でどういう悩みを抱えているかも十分に知らない。僕の奥さんや子どものことでさえも、100%は理解していないでしょう。

こうやって考えていくと、「人間は驚くほど何も知らない」と分かります。これを経営学に使われる認知心理学の文脈では、「限定された合理性(bounded rationality)」と言います。

提唱したのはハーバート・サイモンという1978年にノーベル経済学賞をとった、認知科学の始祖ともいうべき人。そして「人間の合理性は限定的なものにすぎない」という考え方は、認知科学や認知心理学をベースとした経営理論の基礎になっています。

認知心理学は、ある意味でそれまでの古典的な経済学への批判から始まっています。それまでの古典的な経済学では、「人間は合理的であり、世の中のものをすべて見渡せる」という前提に立っていました。

つまり人間には世界中のものが見えていると仮定して、人間はその中で自分にとって最適なものは何かを合理的に判断して手に入れるものだという考え方をしていた。

もちろんこれは極端かもしれませんが、でもそういうシンプルな仮定があるからこそ、いろいろな数式が使えて分析が可能になるのが経済学のいいところでもあるわけです。

一方で認知科学や認知心理学は、「人間がそこそこ合理的であることは、まあ認めましょう」というスタンスです。でも人間が世界中のものをすべて見渡せるというのは、やはり極端すぎる。人間の脳にはどう考えても限界がある。

その限界を認めた前提から入りましょう、ということです。これが「限定された合理性」です。

長い目で見ると、失敗した人のほうが賢くなる

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