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「バーチャル開催は無意味だ」テック系海外イベントに急速な「リアル」揺り戻し…国内外の温度差は顕著

会場の写真

2年ぶりのリアル開催にこぎつけた、今年1月の「CES2022」。

撮影:笠原一輝

「バーチャルでの展示会も、中途半端なハイブリッド開催も、無意味だ」

ここのところの世界的な大規模イベントの変化は、この2年間の試みの「結論」を大手が言外に表現し始めているように感じる。

2020年の3月に新型コロナがパンデミックになっていると宣言されて以降、IT系の展示会はバーチャル開催が当たり前になった。しかし、2022年度に入って、完全にその揺り戻しとも言える、急速な変化が起こり始めている。テクノロジー業界における主要な大規模イベント(カンファレンス、展示会)の最新状況をまとめたのが以下の表だ。

巨大イベントのリアル開催状況をまとめた表

主要な大規模イベント10個を一例として取り上げた。2020年〜2021年にかけてバーチャル開催が増加傾向にあったが、2022年は一転、リアル開催またはハイブリッドに移行しているのがよくわかる。

Business Insider Japan作成

始まったリアル開催への揺り戻し

ブースの写真

ドイツで開催される世界的な家電展示会「IFA」。写真は2019年開催時のドイツテレコムブースの様子。

出展:Messe Berlin

例年9月の上旬にドイツの首都ベルリンにあるベルリン・メッセで開催されているデジタル家電展示会「IFA」(イファと発音する人も多いが主催者はアイエフエーと発音する)は、2020年の小規模なリアル開催、2021年の完全バーチャル開催を経て、2022年9月には、従来の規模での「完全対面による開催計画」を明らかにした。

IT系の巨大コンベンションでは、1月上旬に開かれたCES、2月末に開催されたMWCのいずれもが、紆余曲折はあったが対面での開催にこぎ着けている。

大規模イベントが様変わりを強いられた一方、アップルやマイクロソフトなど大手企業のプライベートイベントは、バーチャルイベントに「変貌」してなお、成功した事例の1つだ。

というのも、例えばアップルのWWDCや、マイクロソフトのBuild、アドビであればAdobe MAXなどのフラッグシップイベントは、基調講演+セミナー(詳細を解説するブレイクアウトセッション)で成り立っている。つまり、対面が必要なのは基調講演や展示会部分程度だった。

巨大コンベンション主催者たちの学びと苦悩

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CES2022の前夜祭イベントに出展していた日本のハードウェアスタートアップ、Shiftall。展示会での偶然の出会いはスタートアップには重要だ。

撮影:笠原一輝

対照的にこの2年の間、バーチャル化に苦戦したのがCES、MWC、COMPUTEX、IFAといった巨大展示会のイベントだ。

例えばCESであれば、例年16万人ほどの来場者がおり、開催時期の街(開催地:ラスベガス)の人口が変わってしまうと言われるほどの集客力があった。こうしたイベントの主要部分はむしろ対面での展示会にあり、体験をバーチャル化するのは簡単ではなかった。

CESの主催者CTA(Consumer Technology Association、全米民生技術協会) International Programs 担当シニア・ディレクター、ジョン・ケリー氏は、

「対面で行なわれるイベントの魅力は、製品に触れ、製品を見られることはもちろんだが、同時に“偶然の出会い”という瞬間があることだ。これこそが対面イベントの魅力であり、バーチャルで再現するのは難しい」

と筆者に語った。

そうしたCTAの意見に、IFAを主催するMesse Berlin上級副社長 兼 IFA上級部長 イェンス・ハイテッカー氏も同感だとする。

「パンデミックの発生によりインターネットの活用がもっと必要だと言うことを学んだ。しかし、それと同時に対面の重要性も学んだ。大規模な出展社であれば、展示が無くても自社のブランドを活用してメディアや来場者にアピールすることはできる。しかし、中小企業やスタートアップはそうではない。そうした企業にとっては“偶然の出会い”がある展示会が必要なのだ」(ハイテッカー氏)

バーチャルの活用はIFAも2021年に進めたが、少なくとも展示会に関しては当初期待していたほどの効果を得ることはできなかった。やはり対面の展示会が必要だと痛感したという。

グローバル規模の巨大展示会、IFAは完全対面への復帰を宣言

今回、IFAの主催者Messe Berlinは、9月2日からベルリンで開催する予定の「IFA 2022」を完全に対面の、かつ何の制約のない完全なイベントとして開催すると明らかにした。

ハイテッカー氏の写真

Messe Berlinのハイテッカー氏。

筆者キャプチャー

Messe Berlinのハイテッカー氏は、4月末に報道関係者向けに実施した質疑のなかで、次のように説明した。

「昨年とは状況が大きく異なっており、欧州でのCOVID-19の感染状況は落ち着きをみせている。
既に先週、弊社の会場(筆者注:メッセ・ベルリン、ベルリン市にある巨大コンベンション会場、日本で言えば幕張メッセのような会場だが、規模はより大きい)で、フード関連のイベントが開催され、何も制限なくマスクもする必要がなかった。
もちろん来場者がマスクをして頂くことは構わないが、主催者としてそれを強制する必要はなくなりつつある」

展示会の規模も、パンデミック以前の例年の規模で開催する計画で、既に上位20社の出展社のうち15社が参加を表明してくれている、とIFA 2022の完全な規模での開催に自信を示した。

すでにドイツや米国には「イベントの検疫的な制約はほぼない」

ハイテッカー氏によれば、政府や地元自治体などのバックアップもあり、既にベルリンでのイベントに検疫的な制約は何もないという。

1つだけ制限があるとすれば、ドイツへの入国で、この記事を書いている時点(5月9日)時点では日本からドイツに渡航する場合には、ワクチン接種証明書か、ドイツ入国前48時間以内に受けたPCR検査などの陰性証明書が必要なことだ。これを満たせば、ビザなしの短期渡航が許可されている。

国境における水際対策がどうなっているかは、グローバルなイベントを開催する主催者にとっては大きな問題だ。既に米国やドイツのような欧州の主要国は、ワクチン証明書があれば制限なしの渡航を認めている(米国は渡航1日前のPCR検査が必須)。

この1カ月ほどの間に、欧米の各国は国境をどんどんオープンにしていってる……そういう印象を海外と行き来の多い多くのビジネスパーソンは持ち始めているはずだ。

羽田空港

旅行客で混み合う羽田空港(2022年4月29日撮影)。

REUTERS/Maki Shiraki

筆者個人の話でいえば、(ここ数カ月で)海外出張が2019年水準に戻り始めていることを実感している。外資企業とのコミュニケーションや、すでに埋まり始めた自分のカレンダーをみつめながら「なぜこうも対応が違うのか」と実感せずにはいられない。

いま筆者はインテル社が開催しているプライベートイベントに参加するために、米国テキサス州のダラスに渡航している。このリアルイベントでマスク着用はオプションだ(強制ではなく、したい人はしても良い)。また、街中では既に誰もマスクをしていない。アメリカは急速にコロナ後に向かって変わっているように見える。

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