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営業益1兆円超えの好調ソニーが見据える「リスク」と「チャンス」

ソニーの本社前のロゴ

撮影:伊藤有

ソニーグループ(以下ソニー)の「営業益1兆円超え」の2021年度通期決算が話題を集めている。

このところソニーは好調な業績で推移している。2021年度も売上高は9兆9215億円(前年比10%増)、セグメントごとの売り上げを見ても、金融分野を除き、売り上げ・営業利益ともに増加している。

ソニーグループ2021年度連結業績。売上高は前年同期比10%増の9兆9215億円、営業利益は1兆2023億円に。

ソニーグループ2021年度連結業績。売上高は前年同期比10%増の9兆9215億円、営業利益は1兆2023億円に。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会資料より

こうした状況は、今期2022年度も継続する見込みで、売上高は11兆4000億円、本業の儲けにあたる営業利益は4%減ながら「1.1兆円超え」と強気の見通しを公表した。

ソニーの2022年度業績見通し

2022年度通期見通し。本業の儲けにあたる営業利益こそ4%ダウンを見込んでいるが、売上は11兆円オーバーと強気の予測だ。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会資料より

ただ、ソニーグループ副社長兼CFOの十時裕樹氏は「2022年度は、対処すべきリスクが多い、とりわけ外部環境が厳しい年になる」と警戒感を崩さない。

円安はソニーには「プラス」。ただし急速な為替変動には危機感も

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ソニーグループ副社長兼CFOの十時裕樹氏。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会の配信より

企業を襲う昨今のリスクの1つは「円安」だ。一般論として、部材の調達コストや流通コストなどが高くなり、利益率を圧迫する要因となりうる。

ただ現状、ソニーは円安が「プラス」に働いている状況のようだ。

ソニーとしては、「ドルに対して円安が1円進むごとに+10億円」の営業益の増加インパクトがあると見積もっている。

ソニーの円安為替影響

ソニーの現状での為替見積もり。1ドル=123円、1ユーロ=135円と想定、円安が1円進むと10億円、営業利益増のインパクトがあるという。数字は2022年度の5月見通しでの試算。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会資料より

例えばイメージセンサーを中心とした半導体事業は、コストは円建てで考えられているものの、売り上げは「ドル建て」なのでポジティブな影響が出る。また、映画や音楽も基本、アメリカを主軸にドル建てで進んでいるため、やはり利益についてはポジティブな影響が出る、とする。

セグメントごとの売り上げ・利益を見ると分かりやすいが、「ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野」「エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S、いわゆるエレクトロニクス製品)分野」「イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野」、そして「音楽」「映画」分野は、為替の影響が大きくプラスになっている。

2021年度セグメント別業績。

2021年度セグメント別業績。多くの分野でかなり、為替によるプラスの影響が出ている。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会資料より

ただし、急速な為替変動そのものは、経営にとってリスクであることに違いはない。

十時CFOは「従来から、為替の変化に耐えられる体制に、ということで、オペレーションのデジタル・トランスフォーメーションなどを進めている」と話す。

ロシア・ウクライナ情勢についても同様で、「それら(ロシア・ウクライナ周辺)地域からの売り上げは0.7%程度であり影響は限定的だが、今後の影響を注視している」(十時CFO)という。

PlayStation 5の「中国ロックダウン」のリスクは3カ月

ps5-03

世界的な品薄が続くソニーの人気ゲーム機「PlayStation 5」。需要の高まりと半導体不足などから増産が追いつかない状況が続いている。

撮影:西田宗千佳

ソニーが視野に入れるリスクの1つは「部品調達」の問題だ。

G&NS分野は2022年度も好調が予想されている一方で、人気のゲーム機「PlayStation 5」(PS5)自体の製造と市場への供給は、まだ需要を満たし切れるほどには至っていない。

2022年度、ソニーはPS5を1800万台出荷すると見込んでいる。ただしこれは「部品調達の目処がついている分」での数量だ。これまで、2022年度には2260万台の出荷を目標としてきたが、より保守的な数量を公開するにとどまった。しかしこれでも、2021年度(1150万台)の約1.6倍となる。

「今の感触として、需要はもう少し高い。在庫水準も非常に低い状況。そういう意味では、まだ(生産量は)足りない」と十時CFO。PS5の1800万台出荷を守れるか、そして、さらに上積みを実現できるかどうかは、いまやソニーの稼ぎ頭であるG&NS部門の業績の重要なポイントだ。

ソニーの家電メーカーとしての業績にあたる「ET&S分野」も、2021年度は調達面で悩まされた。カメラやオーディオ製品を中心に欠品が出て、一時的な受注停止や値上げ措置もあった。

ただ、結果だけを見ると、(為替の影響を加味する必要はあるが)増収増益で終わっている。

従来のエレクトロニクス分野にあたる「エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野」

従来のエレクトロニクス分野にあたる「エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野)」。調達での苦労はあったが、現在は落ち着いてきていると言う。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会資料より

十時CFOは現状を「昨年度の後半に比べると改善している」と見ている。「調達先の変更、設計変更などの対応がこなれてきた」(十時CFO)結果、製品供給の遅れも小さくなっているようだ。「少なくとも部品調達は問題ない」とも話す。

一方、懸念されているのが、中国・上海を中心としたコロナ禍によるロックダウンの影響だ。

「今回の状況がどのくらい継続し、拡大していくかは予見するのが難しい」(十時CFO)状況で、PS5の生産についても、「部品調達の目処は立っているが、中国でのロックダウン拡大があれば、生産に影響する可能性がある」とする。

現状、こうしたロックダウンの影響は3カ月程度と見積もられているが、「物流・調達を含め、慎重に対処を進めていく」(十時CFO)という。

映画・音楽分野の「チャンス」

もちろん、市況の変化によってプラスに変わってきた部分も多い。

分かりやすいのは「映画」と「音楽」だ。

音楽は世界的にストリーミング・ミュージックの収益性が高まり、収益拡大の流れは当面続きそうだ。

ソニーの音楽分野

音楽分野は2022年度も増収傾向にある。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会資料より

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増収の要因の1つは、ストリーミング・ミュージックの収益性の向上。2019年度に比べても、売り上げの水準が一段上がった。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会資料より

映画は、アメリカ市場の興行収入がコロナ流行以前の半分まで回復してきた結果、売り上げは上がってきている。この流れは今年度も続く見込みだ。

ソニーの映画分野

映画分野。アメリカ市場での映画館興行収入の回復と為替により、大きく回復を続けている。なお、売上高、営業利益ともに2019年度の水準(売上高1兆円、営業益682億円)は既に超えている。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会資料より

日本でも1月に公開された「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」の大ヒットを受け、スパイダーマンを軸にした作品群と、ゲームを原作にした作品群の強化で、ヒットIPの創出を狙っている。

スパイダーマンのヒット

「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」が世界的大ヒットになったこともあり、「ユニバース展開」を含めた戦略を加速する。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会資料より

2022年度、ゲーム分野で「売上高を+約1兆円」の衝撃

先ほどPS5出荷の中国リスクで言及したG&NS分野(いわゆるゲーム関連)についても、プラス要因がある。先述のとおりPS5の出荷予定台数こそ保守的な数字だが、2022年度の売り上げ予測は3.6兆円と、2022年度は前期に対して1兆円近い上積みを予想している。

ソニーのPS5などのゲーム分野

ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野。巣篭もり需要の一巡とPS5の供給量限界もあってか、2021年度は横ばいだったが、2022年度は一気に3.6兆円の売上を目指す。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会資料より

「巣篭もり需要が落ち着いた今もユーザーのエンゲージメントは続いており、ポジティブに捉えている。6月に(有料会員制サービスの)PlayStation Plusのリニューアルを予定しており、ユーザーの支持を期待している」

と十時CFOはいう。

発売時期は未定ながら、VR用周辺機器である「PlayStation VR 2」の発売も見えており、トータルでの収益力は強い、という主張だ。

またここでも、映画同様に収益を「自社でのIP開発」に振り向け、長期的収益率向上を目指す。ただし、ゲーム開発やスタジオ買収の費用計上にともなうコスト増から、営業利益は減収を見込む。

ゲーム分野での、ソニーの自社開発・自社IPコンテンツの開発費と売上。

ゲーム分野での、ソニーの自社開発・自社IPコンテンツの開発費と売上。自社IP強化で長期的な成長戦略を目指す。

出典:ソニーグループ2021年度業績説明会資料より

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