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- イーロン・マスクは、出生率が上がらなければ「日本は消滅する」と警告した。
- このツイートは、移民政策や子育てのコストに関してネット上の議論を巻き起こした。
- 専門家は、日本の出生率はジェンダー平等の大きな問題を示しているとInsiderに語った。
イーロン・マスク(Elon Musk)が日本の出生率に注目し、人口を増やす努力をしなければ、日本は消滅の危機にあると警告した。
世界で最も裕福な人物であるマスクは、日本の人口が2021年、過去最高の64万4000人減少したという記事のデータに対するコメントをTwitterに投稿した。
「当たり前のことを言うが、出生率が死亡率より高くなるような何らかの変化をもたらさない限り、日本は消滅するだろう」と、マスクはツイートした。
「これは、世界にとって大きな損失となる」
マスクの多くのツイートと同様に、このメッセージはすぐにネット上の議論を呼び、移民政策や子育ての高いコストにまで話が及んだ。
日本の将来の人口は、移民による増減(他国から日本への転入者数−日本からの転出者数)にも左右されるため、それほど単純ではない。
こんなことをつぶやいて何の意味があるのだろうか。日本の人口動態の将来をめぐる不安は、「日本がいずれ消滅する」ことではなく、人口減少に伴う社会の混乱にある。
ミシガン大学人類学名誉教授で日本に関する専門家であるジェニファー・ロバートソン(Jennifer Robertson)は、マスクの警告を「無知」と誇張の例としてみなしているとInsiderに語った。
「日本では、性別による分業が完全に平等なで人口が少ないことの価値と、そうではなくて人口が多いことの価値について、議論が加熱している」とロバートソンは語った。そして、「政治家は、なぜ女性(そして多くの男性)が結婚しないのか、結婚しても子どもを持たないのか、その理由について無頓着なままだ」として、一人親が直面する差別や子どもに関するコスト、日本での育児の選択肢が少ないことなどを指摘した。
アメリカンエンタープライズ公共政策研究所の上級研究員、ザック・クーパー(Zack Cooper)は、人口への懸念は日本の移民政策の改善で対処できる可能性があるとInsiderに語った。
「日本の政治家が移民規制を緩和すれば、海外から多くの人が日本での高給の仕事を求めてやってくる。それによって日本の人口が安定的になり、育児や介護職の助けになるだろう」と彼は話した。
カリフォルニア大学バークレー校のポリティカルサイエンスとアジア研究の教授、スティーブン・フォーゲル(Steven Vogel)は、日本の人口減少が世界経済へ大きな影響を及ぼすようにはみえないが、イタリア、ギリシャ、韓国など国々を含めた出生率の世界的な減少のテストケースになり得ると話した。
マスクが出生率の低下について懸念を表したのは、これが初めてではない。2021年、彼は地球上に十分な人がいなければ、「文明は崩壊する」と警告した。2017年には、世界の人口は「崩壊に向かっている」と語っている。
世界銀行によると、世界の出生率は1960年代から着実に低下している。日本の人口は11年連続で減少しており、世界で最も高齢者の多い国だ。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)