Rolex
- 「コスモグラフ デイトナ」はロレックスの中で最も人気があり、平均4万8000ドルの値がついている。
- 過去最高額は、2017年のオークションで落札されたポール・ニューマンが身に着けていたデイトナRef.6239の1780万ドルだ。
- エリック・クラプトンが所有していたゴールドのデイトナも170万ドルで落札され、記録的な額となった。
1962年、過酷なカーレース「デイトナ24時間レース」の前身「デイトナ・コンチネンタル」の初開催から1年後、ロレックス(Rolex)はコスモグラフ(Cosmograph)のニューモデルを発表し、その腕時計を「デイトナ(Daytona)」と名付けた。
コスモグラフの特徴である、一定距離の速度を計測できるタキメーター(tachymeter)は、フロリダの大西洋岸にあるコンクリートのように固く締まった砂浜、デイトナビーチで自動車が成し遂げてきた長い歴史に敬意を表すものだった。
1992年にロレックスがデイトナの公式時計となってから、デイトナ24時間レース、つまり現在の「ロレックス24(Rolex 24)」の勝者には、特別な刻印が施されたコスモグラフが授与されている。
ここでは、このアイコニックな時計が時代とともにどのように変化していき、世界中から羨望を集める時計となっていったのかを紹介していこう。
1963年のオリジナルモデル「コスモグラフ デイトナ(Cosmograph Daytona)」
Rolex
オリジナルのコスモグラフ デイトナ(Cosmograph Daytona)は、カーレーサーの視認性を高めるためのコントラストの強いフェイスを特徴としている。タキメーターの目盛がベゼル上に刻まれ、秒針を使用して一定距離の平均速度を測定できるようになっている。
「クレイジー・ドック(Crazy Doc)」
Phillips
2022年5月、ミュージシャンのエリック・クラプトン(Eric Clapton)がかつて所有していたコスモグラフが174万ドル(約2億2680万円)で落札された。これはイエローゴールドのRef.6239モデルではこれまでで最も高い価格だった。
さらに珍しいことに、オークション会社フィリップス(Phillips)によると、「クレイジー・ドック(Crazy Doc)」 と呼ばれるこの時計は、パルスメーターダイヤルを備えた唯一のイエローゴールドのRef.6239だという。
パルスメーターダイヤルは、医療従事者 (ミュージシャンも含む) のために、1分あたりの心拍数を簡単に測定できるようにしたものであり、15拍をカウントして、対応する数値を読み取るという。
「ポール・ニューマン(Paul Newman)」
Rolex
デイトナの歴史は、レーシング・ドライバーでもあったハリウッド俳優ポール・ニューマン(Paul Newman)が愛用していた特別仕様のデイトナ抜きには語れないだろう。
2017年には、あるコレクターがポール・ニューマンが所有していたデイトナRef.6239を1780万ドル(当時約20億円)という驚異的な価格で落札し、その歴史に名を刻んでいる。
1965年 「オイスター(Oyster)」
Rolex
コスモグラフは1965年にさらに進化し、オリジナルモデルで採用されていたポンプ式プッシャーに代わり、ねじ込み式のプッシャーを採用したモデルが発表された。意図に反してプッシャーが操作されるのを防止するのとともに完全防水になり、ロレックスはこの時計に「オイスター(Oyster)」の名を付けた。また、視認性を向上させるため、ブラックプレキシガラスがタキメーター・ベゼルに採用された。
1988年「パーペチャル(自動巻き)」
Rolex
1960年代から1970年代にかけてクオーツムーブメントが登場していたが、ロレックスは機械式腕時計の完璧さへのこだわりを強めた。1988年に発表したコスモグラフには自動巻きクロノグラフムーブメントを採用した。このムーブメントはスイスの公式クロノメーター認定を受け、その優れた精度が証明された。またオイスターケースの直径は36mmから40mmに拡大され、リューズを保護するショルダーが追加された。ベゼルはオリジナルの金属製に戻された。
2000年 新しい「ムーブメント」を搭載
Rolex
1988年に発表したコスモグラフ デイトナがあまりにも人気があったため、2000年に発表した新シリーズは、少なくとも外見上はデザインを変更していない。内部はこれまでの4030から、完全に自社で設計・製造されたCal.4130ムーブメントに置き換えられた。Cal.4130のクロノグラフ機構の部品の数は60%削減され、パワーリザーブは50時間から72時間に延長された。さらに、ローターには「デイトナ」の名が刻まれ、華やかさを添えている。
2016年 現代の傑作
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ロレックスは2016年、現行のコスモグラフ デイトナを発表した。その美学は1965年のバージョンを思い起こさせるが、紫外線よる影響で色褪せることで知られているプレキシガラスの代わりに、ロレックスの技術者たちはセラミックのベゼルで目盛をプラチナコーティングするセラクロムベゼルを開発した。
身に着けるトロフィー
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「ロレックス24」でハーレイ・ヘイウッド(Hurley Haywood)と並び最多の5勝を挙げたスコット・プルーエット(Scott Pruett)は、ドライバーにとってのロレックス デイトナの意義をこう総括している。
「私のデイトナウォッチは、いつもたくさんの楽しい思い出をよみがえらせてくれる。ロレックスとデイトナは切っても切れない関係にある。24時間の激しいレースの後に、“Winner”という文字が刻まれた時計が贈られるのは、永遠に残る瞬間だ」
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)