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ソフトバンク22年度「営業益1兆円越え」目標を読み解く2つのポイント…「PayPay子会社化」と「値下げ影響」

ソフトバンクの宮川潤一社長。

ソフトバンクの宮川潤一社長。

写真提供:ソフトバンク

「厳しい1年だったが、過去最高の売上、利益を達成できてほっとしている」

ソフトバンクの2022年3月期の連結決算で、宮川潤一社長は安堵の表情を見せた。

モバイル通信事業における新料金プランや新型コロナウイルスの影響を受けながらも、売上高は5兆6906億円(前年比9%増)、営業利益は9857億円(同2%増)、純利益は5175億円(同5%増)。

社長就任1年目で「おっかなびっくり」だったという宮川氏は、「腹をくくってアクセルを踏んだ」ことで、「後半は持ち直した」。結果的には過去最高益で、全て期初予想を上回る好調な通期決算を迎えた。さらに、2022年度は中期目標の「営業利益1兆円突破」にも自信を見せる。

とはいえ、決算の言葉の端々には、手放しで喜べるというわけでもない状況も見え隠れする。

ソフトバンクが対峙する2022年の課題を、2つのポイントで解説する。

1. 新料金プランの「値下げ影響」は2022年も続く

売上、利益ともに過去最高で好調な決算。

売上、利益ともに過去最高で好調な決算。

出典:ソフトバンク2022年3月期毛さん説明会資料

宮川氏が現職に就任したのは2021年4月。政府主導の携帯料金値下げの大号令を受けて、ソフトバンクがいわゆる新料金プラン「メリハリ無制限」を開始したのが3月だったため、就任時から新料金プランの中での舵取りが必要だった。

連結決算をセグメント別に見ると、モバイル事業を含むコンシューマ事業において、通信料金の値下げ影響(▲770億円)がいかに大きな重しであるかが見て取れる。

営業利益の増減

通信料金値下げによる770億円のマイナス影響を、契約数の増加や他のセグメントの事業でカバーした。

出典:ソフトバンク2022年3月期毛さん説明会資料

同社のモバイル事業には、ソフトバンク、ワイモバイル、LINEMOという3つのブランドがある。新料金による値下げは、容量無制限のソフトバンクブランドだけでなく、中容量のワイモバイルも料金を値下げした。結果、ワイモバイルに人気が集中したことで、ソフトバンクからの移行だけでなく、他社からの移行もワイモバイルが中心となり、通信事業の収益性が悪化した。

「4月から社長になり、急に値下げの影響が毎月のように数字に出て、これはちょっとマズいぞとおっかなびっくり(していた)。どうしようかと考えていた時期が半年ぐらいあった」(宮川氏)

その結果、第3四半期まではスマートフォンの純増数が20〜40万程度にとどまり、回線の純増数でも、第2四半期は6万など(前年は41万)四半期によっては2020年度の数分の1に陥ることも。一時は低空飛行が続いていた。

LINEMO

2021年3月にはオンライン専用プランのLINEMOも誕生している。

撮影:小林優多郎

ソフトバンクの主力はモバイル事業だが、ヤフーやLINE、PayPayなど、スマートフォン関連のサービスも多く抱えている。それらの自社スマートフォンユーザーの利用率が高いことも分かっていた。

ソフトバンクとしては、自社モバイルユーザーを増やす→自社サービスの利用者が増える→自社サービスを(キャリアの垣根のない)ユニバーサルサービスへと成長させ、他キャリアのユーザーへも拡大する足がかりに……という流れが見えてきた。

そこで、起点になる自社スマートフォンユーザーを増やすことが重要だと判断した。

色んな角度から計算をして、やはりアクセルを踏もうということで、(ユーザー)獲得費(が増えること)も恐れずにやり始めた」

「一言で答えると腹をくくった、ということ」(宮川氏)

という。加えて、コロナ禍が多少の落ち着きを見せたことで、ソフトバンクが得意とする営業力を生かすこともできた。

その結果、第4四半期にはスマートフォン純増数69万、回線純増数40万という数十万単位の増加で、「ソフトバンクらしい純増をお見せできるようになった」と宮川氏は胸を張る。

後半にアクセルを踏んだことで、一気に純増数を回復させた。

後半にアクセルを踏んだことで、一気に純増数を回復させた。

出典:ソフトバンク2022年3月期毛さん説明会資料

前述のとおり、「腹をくくった」ことで、過去最高の売上高になったが、料金の値下げ影響は、実は2022年度も残り続ける。

それどころか、770億円(2021年度)から900億円(2022年度)と拡大する見込みだ。さらに、2022年度は、過去の端末販売のインセンティブの償却がピークに達し、そのマイナス影響が400億円追加される。加えて、スマートフォン純増が増加した反動による200億円のマイナス影響も発生。

合計約1500億円という大幅な減益要因によって、2022年度の通信関連を含むコンシューマ事業の営業利益は、前年度比25%減(4800億円)にまで落ち込む見通しだ。

モバイルを含むコンシューマ事業では25%減という大幅な減益を予想。特に値下げ影響が900億円と大きい。

モバイルを含むコンシューマ事業では25%減という大幅な減益を予想。特に値下げ影響が900億円と大きい。

出典:ソフトバンク2022年3月期毛さん説明会資料

営業利益に対してこれだけ大きな落ち込みが予想されながら、中期目標の「2022年の営業利益1兆円突破」に宮川氏は自信を見せている。

そのカラクリは、上の資料のとおり、「ヤフー・LINE+その他」セグメントが2021年度の78%増となり、コンシューマの減益分をカバーするからだ。

この分野の成長ドライバーとして、白羽の矢を立てたのが、ソフトバンクが2022年に連結子会社化を見込むPayPayの存在だ。

2. 「営業益1兆円の達成」秘策はPayPay…しかし「まだ赤字」

PayPay02

PayPayのコードをスキャンして支払う風景はかなり日常的になった。

撮影:小林優多郎

ちょうど1年前の2021年5月の決算会見で、ソフトバンクはPayPayを2022年度以降に連結子会社化することを公表した。

11日の決算会見のなかでも、宮川氏は改めて「今年度にPayPayを子会社化する」と説明。連結子会社化によって、2022年度決算のセグメント別予測では、前年比78%以上の増加となる3465億円以上の営業利益が見込めるとする。

ただし、宮川氏は、この営業利益の増益分は、PayPayの本業が生み出しているものではない、とする。

PayPayはまだ赤字。今期のプラスの要素は、(子会社化にともなう)再評価益とPayPayの営業損益、無形固定資産の償却、これらが合算するとプラスになってしまう」

先行投資がかさんで赤字のPayPayは簿価評価が「限りなく低くなっている」(同社CFO・藤原和彦氏)。そこを再評価することになるので、「十分な再評価益が期待できる」と藤原氏。この再評価益が大きくなることでソフトバンク全体の利益を押し上げるため、これで営業利益1兆円以上を達成する計画だ。

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