Google I/O 2022の基調講演に登壇したグーグルCEOのサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)氏。
出典:グーグル
グーグルは5月11日(現地時間)から、開発者向けイベント「Google I/O 2022」を開催。
今回はオンライン配信だけではなく、2年ぶりにアメリカ・マウンテンビューの本社でのハイブリッド開催となった。
2年間分の「熱量」に応えるためなのか、5月11日の基調講演は2時間を超えた。発表の内容は非常に多岐に渡り、開発者向けの情報だけではなく、「Pixel」シリーズの各種製品のロードマップも示された。
Google I/Oで発表されたさまざまな内容をサービスカテゴリーごとに解説しよう。
1. 日本でも「Pixel 6a」「Pixel Buds Pro」発表
新型スマートフォン「Pixel 6a」。
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最も日本のユーザーにとって大きなニュースと言えるのは、ハードウェア製品の発表だ。スマホの「Pixel 6a」を含めて下記の商品が披露された。
- Pixel 6a(スマートフォン)……日本でも7月21日予約開始、28日発売。直販価格5万3900 円(税込)。
- Pixel Buds Pro(ワイヤレスイヤホン)……日本でも7月21日予約開始、28日発売。直販価格2万3800 円(税込)。
- Pixel 7(スマートフォン)……展開地域未定。2022年秋リリース予定。
- Pixel Watch(スマートウォッチ)……展開地域未定。2022年秋リリース予定。
- Pixel Tablet(タブレット)……展開地域未定。2023年リリース予定。
「Pixel 6a」は2021年10月に発売された「Pixel 6/6 Pro」の廉価版にあたるモデルで、価格を抑えつつ、6/6 Proと同じグーグルが設計した専用チップ「Google Tensor」を搭載する。
低価格化は、ディスプレイの描画速度(最大60Hz)、メモリー容量(6GB)、背面カメラの数や性能(広角+超広角)、ワイヤレス充電非対応などで機能を抑えたことで実現している。
ただし、「Google Tensor」以外にもセキュリティーチップ「Titan M2」の搭載や5年間のセキュリティアップデート保証も上位モデルとなるPixel 6/6 Proと共通だ。
ノイズキャンセル機能に対応した「Pixel Buds Pro」。
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合わせて発売される「Pixel Buds Pro」は、リアルタイムノイズキャンセルや外音取り込み機能、空間オーディオ機能を持ったイヤホンとなる。
いずれも直販サイト「Google Store」で販売され、Pixel 6aはソフトバンクとKDDIでの販売が公表されている。
2. Pixelで長年空席だった「スマートウォッチとタブレット」にメスが入った
次世代Google Tensorが搭載される見通しの「Pixel 7」シリーズ。
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Pixel 6a、そして今後発表される「Pixel 7」「Pixel Watch」「Pixel Tablet」に共通するのは、AndroidというOSおよびエコシステムだ。
Google I/Oでは毎年、次期Pixelスマホに搭載されるAndroidの開発者プレビューについて語られるのが恒例だが、今回のキーワードは「Better Together」だった。
「Pixel Tablet」は、2014年発売の「Nexus 9」(製造はHTC)以来のグーグルのAndroidタブレットになる。
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Androidは既にスマホやタブレットに限らず、腕時計(Wear OS)、テレビなどに搭載されているが、今よりさまざまな場所でAndroidの利便性を上げる、というのがAndroid 13の狙いだ。
「さまざまな場所」とは「さまざまな端末」に置き換えられる。そのために、大画面タブレット用のUIやスマホとタブレットの連携機能、2021年に買収完了したFitbitのヘルスケア機能の活用に取り組んでいる。
装着していた「Pixel Watch」を披露するグーグルのデバイス&サービス統括のリック・オスターロー(Rick Osterloh)氏。
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グーグルスマホ「Pixelシリーズ」の投入や、長らく「空席」だった、グーグルのAndroidタブレット、Wear OS搭載スマートウォッチを投入する背景には、こうした新機能を、早く、理想的に商品化するという狙いがある。
3. キャッシュレス機能の名称が再び「Google Wallet」に
グーグルの決済サービスは再び「Google Wallet」ブランドに。
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Android周りで言えば、スマホおよびスマートウォッチ向け決済機能のアップデートも発表された。
グーグルは「Google Pay」という名称で、モバイルアプリ、ネット決済サービスを展開している。これが「Google Wallet」という名前にリニューアルする。
リニューアルではあるのだが、「Google Wallet」という名称は2011年にグーグルが初めてモバイル決済・送金サービス参入時に利用した名称だ。その後、Google Walletは同社内の別の「Android Pay」と統合して現在の「Google Pay」という名称に落ち着いたのだが、また元に戻った形だ。
新機能としては、新たに運転免許証や車やホテルの鍵を格納できるようになる(提供される国と地域による)。同種の機能はアップルがiPhoneの「Wallet」アプリで先行している。
なお、日本でもGoogle PayからGoogle Walletへの名称変更も予定されているが、多くの国と違いステータスは「Coming Soon」となっており、時期は不明だ。
また、今後AndroidおよびChrome向けには「Virtual Cards」機能も提供する。これはGoogle Walletに登録したカード番号を直接利用するのではなく、グーグルが発行する別の番号を介して決済をする機能だ。
4. 脱「OK, Google」するGoogleアシスタント
顔識別と音声識別機能を活用した「Look and Talk」機能。
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また、今回もさらに進化したAI機能が発表されている。わかりやすいのは「Google アシスタント」周りの新機能だ。
主に強化されたのは「より自然な会話ができること」。具体的に言えばウェイクワード「ねえ、Google」や「OK、グーグル」を言わなくても、アシスタントとの会話が成立するようになる。
今回発表になったのは2019年に発表されたスマートディスプレイ「Google Nest Hub Max」向けの「Look and Talk」で、Nest Hub Maxを見ながら話しかけると、その人の顔と声を認識するため、ウェイクワードを言わなくても会話が開始できるというもの。
「Quick phrases」では、「電気をつけて/消して」「タイマー/アラームをつけて」といった普段使うフレーズをウェイクワードなしで使える機能。
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また、Pixel 6/6 Proで搭載された「Quick Phrase」機能もNest Hub Maxに拡張された。これはユーザーが指定したフレーズであれば、ウェイクワードがなくてもGoogleアシスタントが応答するというものだ。
いずれもアメリカのNest Hub Maxのみが対象となる点は残念だが、AIアシスタントがより身近な存在になるための1歩と言える。
5. Google Meetを中心に仕事向け機能も強化
Google Meetで光源を擬似的に操作する機能が追加される。
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また、業務向けサービス群「Google Workspace」(旧G Suite)でもAI機能がさらに進化する。
特にパンデミックで需要の高まったWeb会議「Google Meet」の機能強化は多岐にわたる。
- Portrait Restore……古いWebカメラや薄暗い部屋、逆光時でも画質、明るさを改善する。
- portrait light……任意の位置に光源を設定して顔の明るさを改善できる機能。PixelやGoogle One加入者向けに提供されているGoogleフォトの機能をGoogle Meetに移植したもの。
- de-reverberation……地下室などで発生する反響を低減する機能。
また、Googleドキュメントで提供されていた文章の内容を理解して要約文をAIがつくる「summaries in Docs」が、コラボレーションツールのSpacesに拡張された「auto-summaries to Spaces」も提供予定だ。
6. Google Lens、翻訳メガネなどAR分野でも開発進む
カメラが物体を認識し、ネット上の情報などをオーバーレイ表示できる「scene exploration」。
出典:グーグル
また、グーグルはAR(拡張現実)の領域の開発も進めている。
象徴的なのは、カメラを使った検索機能である「Google Lens」を拡張したような「scene exploration」という機能だ。
scene explorationは、Google Lensは検索に関しては基本的に静止画を撮影するのに対し、カメラに映ったスーパーの店頭の商品にそのままネットの評価を表示したり、その中から「高評価」「ナッツ不使用のもの」などをハイライトする機能だ。
なお、グーグルはscene explorationのような画像とキーワード、位置情報など複数の情報を組み合わせた検索を「multisearch」と呼んでおり、カメラ以外にもウェブやアプリのGoogle検索などにも盛り込んでいく。
なお、Google I/Oの基調講演の最後には、翻訳特化型ARメガネと見られるコンセプト製品が発表された。
商品名や詳細や明らかにならなかったが、ビデオを見る限り、対面している相手がしゃべっている内容が翻訳されて字幕として視界に表示されていた。また、手話の翻訳もできるようだった。
いずれのサービスも言語などの都合で、ローンチ後すぐに日本で使えるようになるとは限らないが、利用できる日が楽しみだ。
(文、撮影・小林優多郎)