USSジェラルド・R・フォード(CVN78)の飛行甲板に着艦する、第23航空試験評価飛行隊所属のEA-18G グラウラー。
US Navy/Petty Officer 2nd Class Ruben Reed
- 130億ドルを投じて開発された空母ジェラルド・R・フォードは、フォード級空母の1番艦であり、最新技術を搭載している。
- 元国防長官によると、ドナルド・トランプ前大統領は、同艦の「見た目」について何度も苦言を呈していたという。
- コスト超過と整備の遅延などを経て、フォードは2022年後半には海軍の作戦に参加できるようになる。
ドナルド・トランプ(Donald Trump)前アメリカ大統領は「不格好だ」と航空母艦についてよく不満を漏らしていたという。その批判の的となっていたのは、アメリカ海軍の新型空母「USSジェラルド・R・フォード」だったと前国防長官などの元政府関係者が述べている。
130億ドルをかけて建造されたフォードは、フォード級空母の1番艦であり、世界最大の空母だ。進化した兵器運搬用エレベーター、先進着艦制動装置(AAG)、電磁カタパルト(EMALS)といった一連の新技術が取り入れられ、先行するニミッツ級よりもアップグレードされている。
トランプ前大統領は、これらの新技術について、公的にも私的にもしばしば不満を漏らし、「AAGは水滴がつくと動かなくなる」「新しい電磁カタパルトは旧式の蒸気カタパルトに比べて複雑すぎて、操作にはアインシュタインレベルの知能が必要だ」などと主張していた。
前大統領はこの空母について「絶対にうまくいかない」と思っていたはずだとマーク・エスパー(Mark Esper)元国防長官は、新著『A Sacred Oath: Memoirs of a Secretary of Defense During Extraordinary Times』の中で書いている。
しかし何よりも、前大統領は一貫して艦の「見た目」にこだわっていたという。以下の写真で、フォードをさまざまなアングルから見ることができる。
大西洋を航行する空母USSジェラルド・R・フォード(CVN78)。2022年3月26日撮影。
US Navy/Mass Communication Specialist 3rd Class Jackson Adkins
エスパーは、前大統領の任期終盤に、彼とともにバージニア州のノーフォーク海軍基地を訪れ、病院船のUSNSコンフォートが出港するのを見送ったことを回顧している。前大統領は桟橋で駆逐艦や他の軍艦を眺めながら「なんて美しいんだ」と言った後、フォードを手厳しく批判し始めたという。
「私は何度もこの件に関して何とかしようとしてきたが、その頃にはもう諦めていた」とエスパーは記している。
第8空母航空団(CVW)に所属する航空機を載せて大西洋を航海するUSSジェラルド・R・フォード(CVN78)。2022年4月13日撮影。
US Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Riley McDowell
フォードについて前大統領が特に問題視したのは、艦全体における艦橋の配置だった。艦橋は「アイランド」とも呼ばれる飛行甲板上の建造物のことで、司令塔の役割を果たす。
第8空母航空団(CVW)に所属する航空機を載せて大西洋を航海するUSSジェラルド・R・フォード(CVN78)。2022年4月13日撮影。
US Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Riley McDowell
エスパーによると、前大統領は同艦のアイランドを「本当に醜い。馬鹿げている」と言い、艦の中央部に寄せることを提案したという。「それにかかる時間とコストを想像してほしいものだ」とエスパーは著書に記している。
エスパーは、前大統領がアイランドについて議論する際、「両手を平行にして、遠ざけてから近づけるというジェスチャーをした」と説明している。
「ちょうどフットボールの審判が、ファーストダウン獲得までの距離を測っているようだった」
ニューポートニューズ造船所に向けて、ノーフォーク海軍基地を出港するUSSジェラルド・R・フォード(CVN78)。
US Navy/Petty Officer 1st Class William Spears
フォードのデザインは、長年の努力の結晶だ。海軍の将校たちは、アイランドがそこに配置されたのはフライトオペレーションをやりやすくするためという作戦上の目的があったからだという説明を試みた。だが、前大統領は「これは間違っている。私には美しいものを見る目がある」とマーク・ミリー(Mark Milley)統合参謀本部議長らに語ったと、2021年に出版された『Peril』(ワシントン・ポストの記者、ボブ・ウッドワード(Bob Woodward)とロバート・コスタ(Robert Costa)の共著)に記されている。
大西洋で高速旋回するUSSジェラルド・R・フォード(CVN78)。
US Navy/Petty Officer 3rd Class Connor Loessin
フォードは、開発過程で問題もあったが、耐衝撃性能試験や必要な整備を経て、2022年中には海軍の作戦に配備されるという。フォード級空母の同型艦は、ジョン・F・ケネディ、エンタープライズ、ドリス・ミラーの3艦が計画中だ。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)