研究者によると、軍事パレードに参加した兵士らは金正恩総書記との記念撮影のため、しばらく平壌にとどまっていたという。
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- 4月25日に北朝鮮で実施された大規模軍事パレードが、新型コロナウイルスの感染を拡大させた「スーパースプレッダー・イベント」だったと特定された。
- この軍事パレードで行進した兵士らが新型コロナウイルス感染症の検査で陽性になったと、ラジオ・フリー・アジアは報じた。
- 朝鮮中央通信は5月16日、北朝鮮の4月下旬以降の「発熱」患者の数は120万人を超えたと伝えた。
北朝鮮では、4月に実施された大規模軍事パレードに参加した多くの兵士が新型コロナウイルス感染症の検査で陽性となったことで、この軍事パレードがウイルスの感染を拡大させた「スーパースプレッダー・イベント」だったと特定されたと、ラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
RFAによると、中国との国境に近い新義州に駐留する複数の兵士が5月に入って、新型コロナウイルス感染症の症状を示し始めたという。
「高熱と急性の呼吸器症状が見られました… 保健当局による検査の後、オミクロン株に感染していることが確認されました」と国境警備に携わる関係者がRFAに語った。
「検査で陽性となった兵士の大半は、4月25日の軍事パレードに参加していました」
北朝鮮では朝鮮人民軍創設90周年を記念して、4月25日に大規模な軍事パレードが実施され、2万人以上の兵士が参加していた。
国営メディアが公表した写真は、平壌の金日成広場に多くの人々がマスクなし、ソーシャルディスタンスなしで集う様子を示している。
朝鮮人民軍創設90周年を記念した軍事パレードに出席する金正恩総書記と李雪主夫人。パレードは夜間に行われた。
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当時、北朝鮮ではまだ新型コロナウイルスの感染者数はゼロだとされていた —— ただし、専門家はパンデミックが始まって以来、感染者は1人もいないとする北朝鮮の報告に懐疑的な見方を示していた。
しかし、5月12日に最初の感染者が報告されてからは少なくとも120万人の感染が確認されるなど、「発熱」が大流行していると朝鮮中央通信は5月16日に報じた。これまでに少なくとも50人が死亡し、50万人以上が治療を受けているという。
いま起きている新型コロナウイルスの感染拡大は「4月25日のパレードと密接に関連している」と韓国統一研究院の研究者、洪珉(Hong Min)氏はAFPに語った。
「2か月前から2万人以上がパレードに向けた準備を進めてきて、金正恩総書記との記念撮影のためにしばらく平壌にとどまっていた」と同氏は指摘している。
NK Newsによると、韓国は15日朝、マスクやワクチン、検査キットなどを提供しようと、南北ホットライン(南北直通電話回線)を通じて北朝鮮と連絡を取ろうと試みたものの、北朝鮮は応じなかったという。
(翻訳、編集:山口佳美)