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創業3年ベンチャーが日本の建設を変えた! 3Dプリンターで国内初「建築確認申請取得」の構造物をつくった理由

BEYOND vol1 polyuse iwamoto

BEYOND第1回目のゲストは、PolyuseのCEO岩本さん(左)。

撮影:小林優多郎

Business Insider Japanは2022年5月、“変化の兆し”を捉えて動き出している人や企業にスポットを当てるオンライン番組「BEYOND」をスタートした。記念すべき第1回は、神奈川県鎌倉市を拠点に建設用3Dプリンターを開発するスタートアップ、Polyuse(ポリウス)CEOの岩本卓也さんが登場。5月11日(水)に放映した番組の抄録を、一部編集して掲載する。

Business Insider Japan

——ポリウスについて教えてください。

岩本卓也さん(以下、岩本):建設用の3Dプリンターと、コンクリートなどの材料、ソフトウェアの3つをすべて自社で開発・製作している会社です。国内ではおそらく、マシンの開発から(建設まで)全部手掛けているのは僕たちだけだと思います。

——3Dプリンターは世界的にどの程度注目されているのでしょうか?

岩本:2012年頃に世界各国で研究開発が始まり、最近ではアメリカや欧州、ドバイあたりが特に盛んです。ドバイでは、2030年までに新規構造物の25%を3Dプリンターで造ると宣言しているほど。どちらかと言うと、移住者・移民向けの家の建設に使われていることが多いですね。

——日本ではどうですか?

岩本:日本でも、水面下で開発されてはいたんですがなかなか進みませんでした。しかし、建設に従事する人たち、いわゆる職人さんの高齢化が深刻な問題で、また、高度経済成長期に建設した膨大な数の構造物が老朽化してきている問題もある。造り直さなければいけないけれど、造れる人がいないという状況です。それを自動化して造れるところが3Dプリンターの面白さですね。

3Dプリンターで倉庫をどう造った?

——実際にポリウスの3Dプリンターで建設された倉庫を取材しましたが、あれはどのように建てられているんでしょうか?

岩本:大まかに言うと、マヨネーズのチューブを絞りながら積み重ねて(壁にして)いくイメージです。

——太さもマヨネーズくらいですか?

岩本:太さ約3cm、高さ約1cmのシート状のものを積み重ねて作っていきます。

——壁の厚さは3cm以上ありますから、上だけではなく横にも並べていくわけですね。

岩本:はい。あの倉庫は、全部で12つのパーツに分かれています。各パーツは高さ約1.5m×幅約3mで、厚みは太いところで20cm程度でしょうか。それを4-5時間程度で「印刷」してから、群馬県渋川市の現場に運び、現地で「レゴブロック」のように組み立てていくんです。

——組み立てにはどのくらいの期間かかるのでしょうか?

岩本: 2日以内で終わります。僕らの3Dプリンターで行う作業は通常の建設作業の「躯体工事」に当たるんですが、通常の建設作業では躯体工事に15日程度かかるので、3Dプリンターでの作業はかなり短期間で済むことになりますね。

「建築確認申請」というハードルを突破

——渋川市の倉庫は、3Dプリンターの構造物としては国内で初めて建築確認申請を取得しました。建築許可を得るにはどんな難しさがあるのでしょうか?

岩本:床面積が10平方メートル以上の建物については、完成後、自治体または第三者認定機関に、建築基準法に準拠しているかどうかを確認する「建築確認申請」し、準拠していることの承認が必要になります。国内ではこれまで、10平方メートル未満の小さい構造物、例えばトイレのようなものでトライしている例はあったんです。

——ポリウスはそこを乗り越えたわけですね。

岩本:僕らは人が住める空間を造りたかったので、強度や安全性などさまざまな基準を一つひとつ検証し、渋川市に問題ないことを確認してもらって許可を得ました。

——2019年6月の創業からわずか3年で国内初の快挙を果たしましたが、そもそもなぜ建設というレガシーな業界で、3Dプリンターを使ったビジネスを始めようと思ったのですか?

岩本:創業メンバーの1人が一級建築士なんですが、その彼が建設分野で3Dプリンターを活用している海外の研究事例を教えてくれたんです。それを見た時に「何これ、すごく面白い!」と惹かれ、自分も挑戦してみたいと思って実際に作り始めたのがきっかけでした。

建設3Dプリンターの難しさとは?

——3Dプリンターで構造物を造る時の難しさとは?

岩本:何が難しいかと言えば、化学反応でコンクリート、正確にはモルタルを固めるんですが、その反応を適切にコントロールすることです。

——原料が樹脂の一般的な3Dプリンターとは違いますか?

岩本:違いますね。モルタル自体はもともと粉体なんです。それに水を混ぜて瞬間的にドロドロの状態にして、瞬間的に固形化させていくのですが、積み重ねに耐えられる強度のある状態にするのが難しいんですよね。

——固まり過ぎると次の段を積む時に接着しないですよね?

岩本:そうなんです。固まり切ってはいけないし、固まらなさ過ぎると崩れてしまう。そこをコントロールするのがもう本当に大変なんです。だから、創業から2年程はひたすら実験に実験を重ねました。2年後にようやく造形することができ、そこから半年間でさまざまな構造物を造って実証実験を始めました。

BEYOND vol1 polyuse iwamoto

「レガシーの業界は面白い」と語る岩本さん(左)。

番組をキャプチャ

理学部から「文転」しMBAを取得

——岩本さんのキャリアは、起業家としてちょっと不思議ですよね。これまでのキャリアを簡単に教えていただいても良いですか。

岩本:大学は信州大学の理学部で建築とは関係のないバイオ系の研究をしていました。大学院に進む段階で文転をして、一橋大学大学院の商学研究科(当時)でMBAを取得しました。

——なぜMBAを取得しようと思ったのですか?

岩本:小学生時代の夢は科学者でした。一方で、小学生の頃に親が起業して、その手伝いをしていたこともあって、ビジネスって面白そうだなという興味もあったんです。大学では理学部で自主研究にも何度か挑戦できたので、今度は大学院ではMBAを取ることにしました。

——大学院卒業後は普通に就職したんですか?

岩本:コンサルティングファームに就職しました。その時に建設用3Dプリンターを知って、週末起業的な形で3Dプリンターの研究を始めたのですが、資金調達の段階が来たので退職して、ポリウス専業になったというわけです。

——MBAからコンサルはよく見られるケースだと思いますが、そこから建設業界で起業するというのはなかなか思い切った起業ですよね。

岩本:実は、大学院時代に、友人の創業を少し手伝う形で人材のマッチングアプリの制作に携わったんです。その時に、僕はもう少し理系チックなほうが面白いなと思ったんですよね。ネットよりリアルなもののほうが追いかけがいを感じるというか、家のような手触り感があるほうが好きというか……。だから、建設用3Dプリンターにはすぐ飛びついたんでしょうね。それに、レガシー(の業界)はとても面白いんですよね。

——レガシーの面白さとは?

岩本:既存の造り方が新時代になったらどうなるのかと想像してみると、全く違う世界をイメージできるんです。そこがとても面白いと感じましたし、飛び込むチャンスだと思いました。

今後の挑戦と課題とは?

——ポリウスの今後について、課題があれば教えてください。

岩本:技術的な側面から言うと、量産化するための図面をつくるとか、耐久性を高めるといった検証が必要だと思っています。また、渋川市の倉庫は自分たち(ポリウス)で造った3Dプリンターを自分たちで操作したわけですが、それを誰もが操作できるように改良していきたいですね。

また、材料についても、量産化に対応できる供給量を確保できるサプライチェーンをつくる必要もありますし、今の配合材料もまだまだ高いので、低価格で造れるような研究開発も進めていきたいと思っています。

——ビジネス的な側面での課題はありますか?

岩本:住居や部材の性能・低価格化についてもっとしっかり調べる必要がありますし、経年劣化に関しても本格的に検証するなど、販売に向けて準備を進めていきたいですね。

また、法整備についても、今は3Dプリンターで造った構造物を現在の建築基準法に当てはめて許可を得ている状況ですが、3Dプリンター用の新基準をつくるべきだと思っています。そうすれば、もっと面白い形だったり、軽量化できたりと、色々と工夫できるポイントが増えると思います。

——今後、挑戦したいことはありますか?

岩本:2階建てに挑戦したいですね。また、大きなビル用の構造物の作り方も研究しています。将来的には、3Dプリンターで造った構造物が町のあちこちに存在するようになると思います。例えば、皆さんが普段車で通る橋の橋脚や公園で座ったベンチが、実は3Dプリンターで造られているというように、いろんなところで出合うことになるはずです。それを1台のマシンで造るというところが、3Dプリンターの面白さですね。

(聞き手・三ツ村崇志、構成・湯田陽子

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