ショーン・アレンは、フルタイムのエンジニアとして働きながら、副業でキャリアコンサルトを務め、不動産投資家としてノースカロライナ州とカリフォルニア州に6つの物件を所有している。
Courtesy of Sean Allen
2006年、ショーン・アレン(Sean Allen)がノースカロライナA&T州立大学に入学したとき、彼の両親は彼と「ある契約」を交わした。両親が投資用物件として、大学の近くに住宅を購入し、1年後、そこに彼が住むというものだ。
ただし、物件の住宅ローンを両親が払ってくれる訳ではなかった。
「『物件を自分で管理し、入居者を獲得して住宅ローンを支払える状況にしなさい』と両親に言われたんです。そうでなければ、私が両親に家賃を払うことになると」
大学1年目はキャンパス内の寮に住んでいたアレンだが、2年生になると物件に移り住んだ。4ベッドルーム・3バスルームの家で、両親はアレンのために家具をそろえ、月々800ドル(約10万4000円、1ドル=130円換算)のローンの支払いをアレンに任せた。
彼は友人2人を誘って同居し、住宅ローン全額をまかなうため、それぞれ400ドル(約5万2000円)ずつ請求し、光熱費も折半した。また、隣人に月20ドル(約2600円)払って草刈りもしてもらった。
「それが、私が住み込みの大家になるきっかけでした。居住ルールを入居者に伝えるやり方、期待水準の設定の仕方、予定通りに家賃を回収する方法などを学びました」
住み込み大家をしていた大学時代のアレン。卒業後、物件は両親が運用し、アレンは収益を得ていない。
Sean Allen
2010年に大学を卒業したアレンは、ニューヨークのロチェスターに移り、1年間の経営学修士課程を修めたのち、2011年に南カリフォルニアに転居した。内定していた大手石油メジャー、BPアメリカのプロジェクト・マネジャーの仕事に就くためだ。
同時に、ロングビーチで1ベッドルームの部屋を借り、月1600ドル(約20万円)の家賃を払い始めた。
しかしアレンは賃貸暮らしが10カ月経った頃にはたと気づいた。
「年間1万9000ドル(約247万円)も家賃を払うのに、何の資産も自分は得ていない。その時、他に方法があるはずだと思ったんです」
しかもアレンは大学〜大学院時代の学生ローンとして、4万8000ドル(約624万円)もの借金を抱え、毎月600ドル(約7万8000円)の返済に追われていた。
当時のアレンには投資がどういうものか分からなかったが、どうにかして投資を始め、この状況を抜け出そうと考えた。
「そこで、まず最低限お金を貯めることから始めようと思いました。将来の投資のために毎月700ドル(約9万1000円)を貯金し始めたんです」
以降では、アレンがフルタイムの会社員として働きながら、学生ローンを完済し、不動産投資を通じて33歳で100万ドル(1億3000万円)もの資産を築いた方法を前後編の2本立てで明かす。
編集部注:純資産、不動産の所有、借金の完済に関するアレンの全ての主張が真実であることは確認済み。
100万円の貯金で最初の物件を購入
2012年、アレンは住居費を抑えるためにルームメイトを探そうと考えた。そこで、友人であり同僚でもあるデイビッド・シーを誘い、カリフォルニア州ハーモサビーチの2ベッドルームのアパートに引っ越した。
2人はじきに、自分たちでも不動産を所有できるものなのか、購入費用はどのくらいかかるか、2人で購入するとしたらどのような物件がいいか、といった話をするようになった。
「それぞれ8000ドル(約104万円)ほど貯蓄していたので、合計で1万6000ドル(約208万円)の資金がありました」とアレンは振り返る。
元手からすると、6万ドル(約780万円)程度の物件なら買えるだろうと踏んだ。物件購入価格の20%となる1万2000ドル(約156万円)を頭金として払いつつ、残りの4000ドル(約52万円)を契約締結までにかかる費用として想定した。
ただ、物価の高い南カリフォルニアでは、6万ドルの物件など見つかりっこないことも分かっていた。
「でもたまたま、大学時代に住んでいたノースカロライナ州のグリーンズボロという町のことを思い出したんです。あそこなら6万〜8万ドルの物件があるなと。それで、そこから不動産投資を始めてみようと思ったんです」
2013年6月、アレンとシーは、ノースカロライナ州に有限責任会社DASエステートを設立し、不動産業者と会って物件を見るためにグリーンズボロへ飛んだ。そして、2ベッド・2バスルームのショートセール物件(債務者が住宅ローンを支払えなくなり、かつ物件価格が購入時価格より値下がりしてしまった物件)という、望み通りの物件を見つけた。
2人は5万3000ドル(約689万円)を購入価格として提示し、半年間という異例の長さの契約手続きを経て、2013年12月にこの住宅を購入した。そして、カーペットを掃除し、壁にペンキを塗るなど、ちょっとしたリフォームを行った。
12月から1月にかけての時期は、物件を探す人が少なかったため入居者付けに苦労したものの、2014年3月には入居者が決まり、月750ドル(約9万7000円)で貸し出すことが決まった。
毎月、350ドル(約4万5000円)の住宅ローン支払いに加え、不動産管理費、管理組合費などの経費を差し引き、月に約220ドル(約2万8000円)の利益を得た。それは全て、将来の不動産投資のために用意した口座に振り込まれた。
2年足らずで2軒目、3軒目を購入
続けざまに2軒目として、アレンとシーは自分たちが働くカリフォルニア州で物件を探し始めた。この時点でシーはシカゴに里帰りすることを決めていたこともあり、アレンが住める物件に投資することにした。
2人は2014年5月、南ロサンゼルスにある3ベッドルーム・2バスルームの物件を26万4000ドル(約3432万円)で購入し、頭金5%(約171万円)を支払い、残りを一般貸付で調達した。
3部屋のうちの1室にアレンが住み、残りの2部屋を貸したので、住宅ローンは全てまかなえた。光熱費400ドル(約5万2000円)など、その他の月々の出費はアレンが負担した。
その後もアレンとシーは、2015年7月に6万2000ドル(約806万円)のコンドミニアムをノースカロライナで購入し、計3軒の物件から家賃収入を得た。その利益もまた、全てその後の不動産ビジネスにつぎ込んだ。
にもかかわらず、2011年に就職してからアレンは5年間赤字の生活が続いていた。学生ローンの4万8000ドル(624万円)に加え、不動産購入とは関係のない3万3000ドル(429万円)のクレジットカードローンが上乗せされたためだ。高利のローン返済によって、アレンの残高はいっこうに増えなかった。
アレンがどのように借金を完済し、33歳までに1億2800万円の資産を築いたのか、後編に続く。
※この記事は2022年6月9日初出です。