トンガの噴煙を段階ごとにとらえた、GOES-17衛星による一連の静止画像、2022年1月15日撮影。
Joshua Stevens/Kristopher Bedka/Konstantin Khlopenkov/NASA Langley Research Center/NOAA GEOS-17/NESDIS
- NASAの衛星データによると、トンガの火山噴火の影響は宇宙にまで及んでいた。
- 噴火は地球の大気圏上層部を攪乱し、ハリケーンのような速度の風と異常な電流を引き起こした。
- 研究者によると、これは近代で最大規模の宇宙空間における攪乱だという。
2022年1月15日、太平洋の島国、トンガ沖の海底火山が噴火し、世界中に強烈な衝撃波と高速の津波を引き起こした。現在、科学者たちはこの噴火がどれほどの規模であったかを解明し始めている。
アメリカ航空宇宙局(NASA)がこのほど公開した衛星データによると、この噴火はトンガの大部分を火山灰で覆い、家屋を破壊し、少なくとも3人が死亡する津波を引き起こしただけでなく、噴煙が宇宙まで到達したことが分かっている。「この火山は、近代で最大規模の宇宙空間における攪乱を引き起こした」と、カリフォルニア大学バークレー校の物理学者で、この噴火に関する新たな論文の筆頭著者であるブライアン・ハーディング(Brian Harding)が声明で述べている。
Geophysical Research Lettersに2022年5月10日付で発表されたこの論文では、NASAの人工衛星ICON(Ionospheric Connection Explorer)と欧州宇宙機関(ESA)によって収集された衛星データが使用された。分析の結果、噴火により発生したガスと粒子から成るプルーム(噴煙)が、地球の大気圏上層部(電離層)で、ハリケーン級の速度の風と異常な電流を引き起こしたことが判明した。
2022年1月15日に発生したトンガでの噴火は、世界各地だけでなく宇宙にまで影響を及ぼした。強烈な風と異常な電流に関するデータは、NASAのICONミッションと欧州宇宙機関によって収集された(イラストの縮尺は原寸に比例しない)。
NASA's Goddard Space Flight Center/Mary Pat Hrybyk-Keith
噴火による強烈な風が、地球の最も薄い大気層にまで到達し、そこでさらに速度が増したことが、データによって示されたと研究者は述べている。「ICONの記録では、電離層に到達した風の風速は時速450マイル(724km/h)だった。これは、ICONが打ち上げられて以来、高度120マイル(193km)以下で観測された中で最も強い風だ」と、NASAは声明で述べている(最も勢力の強いハリケーンの最大風速が時速約200マイル(322km/h)程度)。
大気圏上層部に入った強風は、東から西へ流れる細い「赤道ジェット電流(equatorial electrojet)」にも影響を与えた。噴火後、この電流は通常の5倍の強さになり、何度も向きを変えた。
「赤道ジェット電流は、赤道付近の狭い領域に存在する何百キロワットにもなる非常に強い電流だ」とハーディングはSpace.comに語っている。
「通常は東向きに流れ、磁気嵐によって時折反転することがある。しかし、地上で発生した現象の影響で、それが完全に反転し、強化されるのを観測したのは今回が初めてだ」
地上で発生した現象によって、宇宙の気象がどのような影響を受けるのか、まだ分からないことが多いが、今回の発見によって理解が進むだろう。NASAは、より多くのデータを収集し、これらの関係を解明するために、DGC(Geospace Dynamics Constellation)ミッションの一環として、小型衛星の一団を地球の大気圏上層部に送ることを計画している。
[原文:Tonga volcano eruption was powerful enough to reach space, new images from NASA show]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)