「商品検索ならグーグルよりアマゾン」と69%が回答。検索広告のシェアをめぐるビッグテックの仁義なき戦い

グーグルvs.アマゾン

Ramin Talaie/Getty Images; Mike Blake/Reuters; Savanna Durr, Alyssa Powell/Insider

グーグル(Google)は世界で最も人気のある検索エンジンと最もユーザー数の多いブラウザを有し、オンライン広告の最大の販売者でもある。それゆえに、「2番手」という立ち位置に慣れていない。

だが2016年ごろから、マーケティング関連のカンファレンスのパネルセッションやEC企業のプレゼン資料などで、気がかりな統計を目にするようになった。アメリカの消費者を対象とした調査で、商品検索時にはまずアマゾンを使うと回答した人が、グーグルを使うと回答した人を初めて上回ったのだ。

実はグーグルはこれよりはるか以前から、急速に追い上げてくるアマゾンをバックミラー越しに見ていた。

「フェイスブック、グーグル、アマゾンなど現在成功を収めている企業は、自社を特徴づける重要分野に並々ならぬ執着を持っていて、その分野での存在感が薄れることに恐怖を感じています」と、グーグルの元広告・コマース担当上級副社長で現在は検索スタートアップのニーバ(Neeva)を経営するスリダール・ラマスワミ(Sridhar Ramaswamy)は語る。

しかも厄介なことに、グーグルとアマゾンは長年にわたってお互いを頼りながら事業を成長させてきたという事実がある。アマゾンはグーグルに対し、「本当は1セントも払いたくないと思いつつ」(ラマスワミ)、多額の広告を出稿してきた。一方のグーグルは、「ある商品カテゴリーがごっそり丸ごとアマゾンに奪われてしまうんじゃないかと恐れていた」とラマスワミは言う。

グーグルは自分の縄張りでアマゾンと対峙しながら、ここ数年のうちにショッピング戦略を頻繁に変え、ECに強いリーダー人材を代わるがわる起用してきた。直近で参画したのは、2020年にペイパル(PayPal)から転身したビル・レディ(Bill Ready)だ。

グーグルはレディのもと、料金を支払った広告主のみがショッピングページに商品を表示できるとしていた以前のポリシーを変更し、どの業者でも商品を表示できるようにした。

また第三者のコマースプラットフォームとの提携も決めたほか、アナリストらが見るところ、グーグルは昨年頃からプロダクト開発のスピード化を図ってきた。

こうした取り組みが功を奏している兆候も見られるものの、グーグルは依然としてアマゾンに後れをとっている。

アマゾンは、自社プラットフォームでの検索が増えたことで広告収入を伸ばしている。マーチャントがアマゾンのプラットフォーム内外で販促できる機能も続々追加中だ。また、アマゾンのサイトで商品を販売しない広告主の受け入れも増やしている。

こうした取り組みによってアマゾンの広告事業は成長を加速させており、2021年の広告収入は310億ドル(約3.9兆円、1ドル=127円換算)に急増した。

メディアエージェンシーであるハバス・マーケット(Havas Market)のEC責任者、ジェシカ・チャップロウ(Jessica Chapplow)は次のように語る。

「私が広告業界に入った頃はこんな感じでした——フェイスブックはユーザーが好きなものを知っている、グーグルはユーザーが検索したものを知っている、アマゾンはユーザーが買ったものを知っている。でも今ではこれらがお互いにつながって、境界が曖昧になってきました。ECとSEOに関しては、2021年に引き続き今年もグーグルの年になりそうです」

「小売業者は門番に依存すべきではない」

元ペイパルCOOだったビル・レディは、グーグルに移籍したのはオンラインショッピング空間の「民主化」のチャンスが見えたからだと言う。

「Googleショッピングで私たちが行おうとしているのは、オンライン小売のための事業環境を整えること。買い物ができる場所が1つしかない世界には誰も住みたくないでしょう。小売業者は門番に依存すべきではありません」

レディは、自分が移籍して以降Googleショッピングのチームが挙げてきた実績をよどみなく披露してみせる。無料リスティングによる商品掲載枠を追加したことで、グーグルの商品カタログは2020年5月から2021年5月の1年間で70%増になった。2021年5月の時点で、「ショッピンググラフ」と呼ばれるグーグルのデータセットには240億以上の商品が掲載されていたという。

レディが言うもう1つの大きなシフトは、グーグルが発表した提携だ。

グーグルがショッピファイ(Shopify)、ウーコマース(WooCommerce)、ゴーダディ(GoDaddy)などのECプラットフォームや支払いプラットフォームと提携したことで、小売業者はグーグルのショッピングサービスでこれらパートナーの既存のツールを使用できるようになった。

このプラットフォームを使用するマーチャント数は2021年5月までの1年間で80%増となった(グーグルは総数や最新データは公開していない)。

レディによると、これらの努力が実を結んだことは既に第三者が行った調査でも検証済みだという。モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)が2022年3月に実施した調査では、アメリカの消費者の61%がオンラインで商品を調べるときは最初にグーグルのサイトに行くと回答しており、2021年11月の57%から増えている。

一方、アルファベット(Alphabet)の幹部は、ここ何四半期かの広告収入の伸びに最も寄与しているのは小売だと話す(ただしこれは、パンデミックを受けEC全体が活気づくなかで実現されたものではある)。

しかしアマゾンと1対1で比較すると、グーグルが意味のある形で目立った変化を起こせているは定かではない。

顧客体験に特化した企業であるサイトコア(Sitecore)にInsiderが委託して実施したオンライン調査では、対象となったアメリカのウェブユーザー1000人のうち約3分の2(69%)が「オンラインショッピングの時に最初に見るサイトはアマゾン」と回答している。

この数字は、サイトコアが2021年の調査で同じ質問をした時(54%)よりも増加している。2022年の調査では13%が「検索エンジンの検索結果から見にいく」と答えているが、これは昨年の調査時の24%から減少している。

一方、Insider Intelligenceの推計では、アメリカの検索広告市場におけるアマゾンのシェアは、2021年の20.1%から2022年は22.6%に増加するとされている。グーグルのシェアは同期間に57.2%から56.1%に下がる予測だ。またウェブFX(WebFX)によると、アマゾン広告の平均コンバージョン率はグーグル広告の2倍以上だという。

自動化はいい。だが使いこなせていない

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