テスラのCEO、イーロン・マスク。
HANNIBAL HANSCHKE /Getty Images
- アメリカの大企業のCEOの中には、経済が不況へと向かっていると予測する人がいる。
- イーロン・マスクは、「理不尽な時代」を乗り切るための資本準備金を用意するよう企業に助言している。
- デービッド・ソロモンは、リスク選好について検討し、不況に備え始めるべきだと述べている。
不況が近づいている。少なくとも、アメリカの有名なCEOたちはそう考えている。
ここ数週間、イーロン・マスク(Elon Musk)やデービッド・ソロモン(David Solomon)などのビジネスリーダーたちが、迫りくる景気後退について警鐘を鳴らし始めている。実際、「CEO信頼感指数」はパンデミック開始以来の最低水準に落ち込んでいることが、ビジネス調査機関である全米産業審議会(CB:The Conference Board)の最新調査で明らかになった。
この調査は、2022年4月25日から5月9日の間に、主に上場企業のCEO133人を対象に行われた。その結果、大多数のCEOは、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の利上げによるインフレ抑制策によって、緩やかではあるが景気後退が引き起こされるだろうと考えていることが分かった。
CBのチーフエコノミスト、ダナ・M・ピーターソン(Dana M. Peterson)が声明で述べたところによると、CEOたちは将来に対する見通しを「暗い」としており、今後6カ月の間に経済が悪化すると予想したCEOは60%に上ったという。
不況の可能性に関する4人のCEOの見解と、それに備えるためのアドバイスを以下にまとめた。
テスラのイーロン・マスク:「すでに不況に突入している」
テスラ(Tesla)とスペースX(SpaceX)のCEOであるマスクによると、アメリカはすでに不況に突入しており、事態はさらに悪化しようとしているという。
2022年5月16日、ポッドキャスト「All-In」が開催した「All-In Summit」で、マスクは「好景気が長く続くと、資本の配分を誤りがちになる。つまり、愚かな者の上にまで金が降り注ぐようになる」と述べた。さらに、その状況が手に負えないほど進むと、人材の配分までおかしくなり、「バカげたことや人類の役に立たないことをしている企業」に人材が集まるようになるが、結局は「そのようないい加減な企業は倒産していく」という。
不況に対処するためのアドバイスとしてマスクは、役に立つ製品を作り、意味のある企業になることだと述べた。
さらに「資本的にギリギリの経営にならないように気をつけるべきだ」と続け、「理不尽な時代」を乗り切るには、資本準備金が必要だと付け加えた。
ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモン:「1年前よりも注意深く物事を見る」
ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEO。
Michael Kovac/Getty Images
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のデービッド・ソロモンCEOは、今後12カ月から24カ月の間に不況になる可能性は30%だと推測していると、2022年5月18日にCNBCのインタビューで語っている。
「ある時点で、不況あるいは非常にゆっくりとした低調な成長になる可能性は十分にある」
経営者仲間に対しては、リスク選好について検討し、景気後退に備え始めた方がいいとアドナイスした。
「確実にそのような状況になるとは言えないが、もし重要な企業の経営者であれば、1年前よりももう少し注意深く物事を見なければならないだろう」
ウェルズ・ファーゴのチャールズ・シャーフ:景気後退に「疑問の余地はない」
ウェルズ・ファーゴのチャールズ・シャーフCEO。
Reuters
ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)のチャールズ・シャーフ(Charles Scharf)CEOによると、景気後退は「避けるのが難しい」ことになりそうだ。
「FRBは、景気が過熱しているため、経済成長を減速させる必要があると述べている。金利の上昇により、消費者と企業間における健全性のダイナミクスが一定期間にわたって変化することになるだろう」と、シャーフは2022年5月17日に開催されたウォール・ストリート・ジャーナル主催の「Future of Everything Festival」で述べている。
とはいえ、多くの企業がレジリエンシー(回復力)という強みをもって不況に臨むとシャーフは考えている。
「誰もが力強く不況に立ち向かおうとしている。このことにより、不況が短期的であったり、深刻でなかったりして、打撃が和らぐことを期待している」
ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン:「経営者も消費者も、不況に対する備えを怠ってはいけない」
ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン(Lloyd Blankfein)上級会長。
REUTERS/ Pascal Lauener
アメリカ経済は現在「非常に高いリスク」にさらされていると、ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン(Lloyd Blankfein)上級会長は、2022年5月15日に放送されたCBSの「Face the Nation」で語っている。
しかし、ブランクファインは依然として極めて楽観的であり、FRBの対応と不況回避に向けて自在に活用できる彼らの持つ「強力なツール」を賞賛した。
そして、備えを怠らず、パニックに陥らないように、とアドバイスした。
「もし私が大企業を経営していたら、相当な準備をするだろう。消費者だとしても、しっかりと準備をするだろう。しかし、それは織り込み済みではない」
[原文:CEOs are warning of a recession. Here's what they're saying, and their advice on how to prepare.]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)