Z世代は普段どんなアプリを使っているのだろうか?
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Z世代は、幼少期からスマホに触れて大人になった最初の世代だ。1995年から2012年頃に生まれた世代と定義されるこの層は、インターネットのない世界を知らないため「デジタルネイティブ」と呼ばれることも多い。
トレンドの発信者としては、ようやくミレニアル世代(1980年から1994年頃生まれ)からの世代交代が起き、Z世代がメインストリームになってきた。今や彼らが流行を牽引する世代だとベンチャーキャピタルも注目しており、これまでにも、Z世代の動きが消費者向けテクノロジーの次の大きなトレンドをつくり出してきた。
例えば、衣服のフリマアプリである「Depop」を、2000年代に流行ったローライズのジーンズやバゲット・バッグ、ビンテージのスカジャンがよく取引される場にしたのもZ世代だ。2021年にネットショッピング大手のEtsyはこの動きに目を付け、16億ドル(約2000億円、1ドル=127円換算)でDepopを買収した。
それでも、コロナ禍により使うアプリを見直すZ世代は多かった。オレゴン州ポートランドに住むスザンナ(25)は、InstagramとFacebookに費やす時間を減らした。
「依存を断ち切ることができてしまうくらい、魅力が激減したんです。今は薄っぺらい友人関係がかなり減って、ごく近しい人たちと親密な関係を築けていると感じます」
インデックス・ベンチャーズ(Index Ventures)のパートナーであるレックス・ウッドベリー(Rex Woodbury)は、Z世代が使うアプリは最も親しい友人との関係を強めるプラットフォームが中心になっていくだろう、と考えている。Z世代に人気の写真共有アプリは、気心の知れた者同士で、フィルターをかけない写真をシェアするようなコミュニケーションが基本となっているからだ。
「デジタル・ネイティブ」というメルマガも発行しているウッドベリーは、4重の同心円を使ってSNSを分類する(下図)。
Rex Woodbury
最も内側の円は親しい家族や友人だ。2つ目が普通の友人、3つ目が知人、4つ目が他人となる。
「人気のSNSは1番と4番の円に向けたものになるんじゃないでしょうか」
一方で、Z世代は人生に対する不安を軽減してくれるアプリにも惹かれるようで、アイデンティティや人生の意味についての疑問を解決するために占星術のアプリを使っている。これらのアプリでは、生まれた日付、時刻、場所を入力することで、占星術チャートと毎日の星占いを受け取り、友達と比較することができたり、相性のいいパートナーを見つけたりできる。
「出身地や宗教に基づいたアイデンティティがなくなったことで、アイデンティティを変化させたり自分で選んだりする人が増えています」
そう話すのは、ビハインド・ジーニアス・ベンチャーズ(Behind Genius Ventures)の創業者兼パートナーであるペイジ・ドハーティ(Paige Doherty)だ。占星術アプリの人気が一時的なものではないのはそれも理由だと指摘する。
以下では、Z世代50人とZ世代のベンチャーキャピタリスト数人に、最近ダウンロードしたアプリを挙げてもらい、それをもとに人気のアプリ6選をまとめた。
Co-Star:一番人気の占星術アプリ
Lakshmi Varanasi
アプリの内容:今回の調査で一番人気だったのは、ファッション業界出身のバヌ・グーラー(Banu Guler)が2017年に立ち上げた占星術アプリ「Co-Star」だ。ユーザーの生まれた日時・場所をもとに、AIを使ってカスタマイズした星占いを提供する。
資金調達額:2021年4月に、シリーズAでスパーク・キャピタル(Spark Capital)、マベロン(Maveron)、フィーメイル・ファウンダーズ・ファンド(Female Founders Fund)から1500万ドル(約19億円)を調達。 Crunchbaseによると、これまでの調達合計額は2100万ドル(26億6700万円)となっている。
The Pattern:占いアプリでは人気2位
Lakshmi Varanasi
アプリの内容:10年ほど前にYouTubeに動画を投稿し人気を博したリサ・ドノヴァン(Lisa Donovan)が2017年創業したThe Patternは、Co-Star同様、アルゴリズムと生まれた時間を組み合わせてパーソナライズされた星占いを提供する。
2021年に「Connect」というマッチング機能を追加し、占星術で割り出された相性をベースにパートナーを見つけることができるようになった。
資金調達額:基本的に自己資金で運営されているが、Vanity Fairによれば2019年にロンドンのスウィート・キャピタル(Sweet Capital)からシード資金を調達している。
BeReal:「仲良し同士オンリー」の写真共有アプリ
Lakshmi Varanasi
アプリの内容:ユーザーが友人に宛てて自分の写真を毎日送り、お互いにリアルタイムで何をしているのかが分かるアプリ。
「みんなBeRealを使ってます」とミシガン州ウエスト・ブルームフィールドのラマ(21)は言う。2019年から存在しているアプリだが、Apptopiaによれば、ダウンロードの65%は2022年に入ってからのものだ。
資金調達額:シリーズBラウンドでバリュエーションが4倍以上の6億ドル(約762億円)になる見通し。CB Insightsによれば、これまでの資金調達額は合計3000万ドル(約38億1000万円)。
Locket:人気急上昇中のアプリ
Lakshmi Varanasi
アプリの内容:iPhone向けのこのアプリは、友達からの写真をホーム画面上のウィジェットとして表示する。Apptopiaによれば、2022年初頭にはアメリカのApp Storeのチャート1位となった。その月にはTikTok上で話題となり、若いユーザーから人気を博す一因となった。
資金調達額:合計資金調達額は非公表。
Discord:ゲームで喋るように使うチャットアプリ
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アプリの内容:Discordはもともとゲーマーの間で人気を博してきたインスタント・メッセージアプリだったが、今やゲームをしていないときでもマルチプレイヤーゲームでしゃべるように話したい人向けのアプリとして認知されている。
音声通話、ビデオ通話、テキスト・メッセージを組み合わせたチャットルームは「サーバー」と呼ばれ、あらゆる形のコミュニケーションをとることができる。Protocolによれば、月間アクティブユーザーは1億人以上にものぼる。
資金調達額:Crunchbaseによれば、16回のラウンドでベンチャーキャピタルから合計10億ドル(約1270億円)弱を調達している。投資したのはグリーンノークス・キャピタル(Greenoaks Capital)、インデックス(Index)、スパーク・キャピタル(Spark Capital)など。
Snapchat:人気再燃中のアプリ
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アプリの内容:Snapchatは、Instagram、Facebook、Twitterなどと共にSNSアプリ第一世代として2011年に登場したインスタント・メッセージ・アプリ。時間が経つと消えてしまう写真を通じたコミュニケーションが特徴だ。ここ数年でZ世代からの支持によりまた流行りだしている。
「Z世代にとっての魅力は便利さです。SNSアプリはフォーマルなものが多く、ミレニアル世代向けでした。Snapchatはそれよりも気軽なアプリだったのです」とAdapt VCの創業者兼パートナーであるアマー・アムダニ(Ammar Amdani)は言う。
資金調達額:Crunchbaseによれば、2017年3月の上場以前にはベンチャーキャピタルから50億ドル(約6350億円)弱の資金を調達している。
(翻訳・田原真梨子、編集・野田翔)