NASAの探査機ボイジャーは2機ある。両機ともすでに太陽系を離れ、星間空間に到達した。
NASA/JPL-Caltech
- NASAによると、ボイジャー1号が実際の動きとは合致しないデータを送信してきた。
- この探査機は、1977年から太陽系や星間空間の探査を行っている。
- 現在、地球から145億マイル(233億km)と、人類が作った物体では最も遠く離れた地点にある。
NASAの探査機ボイジャー1号は、打ち上げから45年を経て、今も太陽系外への旅を続けている。だがこのベテラン探査機が不思議な信号を送信し、エンジニアを戸惑わせているという。
NASAは2022年5月18日、ボイジャーは正しく動作しているが姿勢制御システム(AACS)の信号がボイジャーの動きや方向とは合致せず、宇宙空間での自らの位置について混乱していることを示唆していると発表した。AACSは周囲の星間空間に関するデータを送信するために不可欠なもので、ボイジャーはアンテナを地球の方向へ向け続けている。
「この種の謎は、ボイジャーのミッションにおけるこの段階ではあり得ること」とNASAのジェット推進研究所でボイジャー1号と2号のプロジェクトマネージャーを務めるスザンヌ・ドッド(Suzanne Dodd)はコメントした。
「ボイジャーは2機とも約45歳で、当初ミッションプランナーが予測していた運用期間をはるかに超えている」
NASAによると、ボイジャー1号の双子機であるボイジャー2号は正常な動きを見せている。
ボイジャー1号は太陽系の外惑星を探索するために1977年に打ち上げられ、予測していた期間を大幅に超えて運用され、進行経路の情報を地球に送り続けている。先駆者的存在であるこの探査機は2012年に太陽系を離れ、星間空間に到達した。現在、地球から145億マイル(約233億km)離れた地点にあり、人類が作った物体では最も遠いものだ。
皿のような形をしたボイジャーの高利得アンテナとエンジニア。1976年7月9日撮影。
NASA/JPL-Caltech
NASAは、エンジニアが知る限り、ボイジャー1号のAACSはランダムに生成されたデータを送っており、「船内で実際に起きていることを反映していない」という。だが、仮にシステムデータがそれを示唆したとして、NASAからの指令を受信して実行し、データを地球に送り返しており、ボイジャーのアンテナは正しい方向を向いていると思われる。現在のところ、このシステムの問題で古いボイジャーが必要な運用だけを行うセーフモードになることはないという。
「この問題の本質をより理解しなければ、ボイジャーが科学的データの収集と送信をできる期間に影響を与えるかどうかを予測することはできない」とNASAは述べている。
ドッドとそのチームは、この地球からの使者がなぜおかしなデータを送ってくるのかを解明したいと考えている。「エンジニアチームにとって、大きな挑戦となる」とドッドは述べた。大きな問題は、ボイジャーの現在の位置に辿りつくまで光でも20時間33分かかり、NASAとボイジャー間のメッセージのやり取りに2日かかることだ。
「だが、AACSに関するこの問題を解決する方法があれば、我々のチームは見つけ出すと思う」とドッドは付け加えた。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)