左からスペースXのイーロン・マスクCEO、ブルーオリジン創業者のジェフ・ベゾス、ヴァージン・ギャラクティック創業者のリチャード・ブランソン。
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- スペースXやブルーオリジンのロケットから出る煙が健康と気候を脅かす可能性があると、ある研究が示した。
- それによると、ロケットが出す煙の窒素酸化物の濃度は「人の健康に有害である」という。
- 商業ロケット会社による打ち上げの増加が、気候に大きな影響を与えるかもしれないとも述べている。
スペースX(SpaceX)、ブルーオリジン(Blue Origin)、ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)が製造するロケットによる汚染が、人の健康を損ない、地球環境を悪化させる可能性があると新たな研究が示している。
2022年5月17日、学術誌『Physics of Fluids(流体物理学)』で発表された研究論文「Atmospheric pollution from rockets(ロケットによる大気汚染)」では、スペースXの再利用可能ロケット、ファルコン9(Falcon 9)と同等の標準的なロケットから排出されるガスをデジタルモデル化している。
イーロン・マスク(Elon Musk)のスペースX、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)のブルーオリジン、リチャード・ブランソン(Richard Branson)のヴァージン・ギャラクティックなど、商業宇宙企業によるロケット打ち上げの増加が「累積すれば気候に大きな影響を与える可能性がある」とこの論文では述べられている。打ち上げのたびに、炭素ガスや窒素酸化物が大量に発生するためだという。
研究によると、上昇するロケットが2立方kmの大気中に放出する窒素酸化物の濃度は、世界保健機関(WHO)の基準で「人の健康に有害」とされる濃度であることが明らかになった。
「大気への影響は、今後のロケット打ち上げ計画において慎重に考慮すべき、重要な要素だ」と研究の著者、ヤニス・コキナキス(Ioannis Kokkinakis)とディミトリス・ドリカキス(Dimitris Drikakis)は記している。商業ロケットの打ち上げ回数が増えるにつれ、それに伴う大気汚染についても検討しなければならないという。
ブルーオリジンの広報担当者はInsiderに対し、同社の再使用型ロケット、ニューシェパード(New Shepard)の 「燃料は非常に効率的でクリーンな液体酸素と水素」であり、副産物は「炭素を排出しない水蒸気」のみだと語った。
同社は5月、ニューシェパードによる5回目の有人飛行を計画している。初の有人飛行は2021年7月で、ベゾスとその兄弟が搭乗した。
同じく再利用型ロケットを製造するスペースXは、2021年に31回の飛行に成功し、過去最高を記録した。2022年には60回打ち上げる計画だとマスクは3月のツイートで述べている。
一方、ヴァージン・ギャラクティックは、2023年に観光フライトを強化する予定で、再利用可能なロケットで月に3回、顧客を宇宙へ送り出すことを目指すという。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)