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コロナ禍の先の見えない中で大学生活を過ごした「コロナ組(Covid Classes)」と呼ばれる若者たちは、社会に出て、安定を重視していることが調査から見て取れる。
クラウドベースの人材派遣企業であるiCIMS Insightsが2020〜2022年の卒業生1000人を対象に行った調査では、回答者の91%が「会社にどれだけ長く勤められるかを気にする」と答えている。現在職に就いているミレニアル世代の5人に2人が転職先を探しているのとは対照的だ。また、68%が「自分は1社で長期的なキャリアパスを歩むと思う」と回答している。
最近発表されたこの報告書には、500人の人材採用担当者を対象としたアンケート結果も掲載されている。採用担当者の半数は、現在の新入社員の方が前の世代の社員よりも会社への忠誠心が高いと答えている。
いまアメリカは求人数と退職者数が記録的な水準となっている「大退職(Great Resignation)」の真っ只中だ。そんな時代に就職する新卒者であることを考えると、この調査結果は直感に反するように思えるかもしれない。
Z世代が転職を繰り返すという話は最近よく耳にするが、2000年代初頭のミレニアル世代や1990年代のX世代でも同じようなことが言われていた。世代に関係なく、会社が自分のニーズを満たしてくれると感じられれば、従業員は会社に留まるものなのだ。
「人は、できるものなら辞めたくない。仕事に満足したいし、成長したい。コミュニティにも属したいんです」。キャリアコーチであり、キャリア指南の著書もあるアシュリー・スタール(Ashley Stahl)はそう語る。
スタールら専門家たちは、若者が自分に合った仕事を見つけるために転職を繰り返すのは普通のことだと述べている。だからこそ企業は、若手が何を求めているかに注意を払うべきなのだ。彼らのニーズを満たすことができれば、社内人材は大きな資産となり得る。
Z世代が会社に残りたいと思う条件とは?
iCIMSの今回の報告書からは、Z世代が会社に尽くす上で何を望んでいるか、そして応募者と企業がどこで折り合う必要があるかについて、非常に示唆に富んでいる。
この調査によると、人事・採用担当者の63%が、「非現実的な期待」を抱いている候補者は採用しないと述べている。新卒者は社会人1年目の年俸として平均7万5ドル(約975万円、1ドル=130円)を望んでいる。しかし会社側は、5万ドル(約650万円)程度を想定していると回答している。
また、新卒者の69%がある程度のリモートワーク環境を望んでいるが、フルタイムでオフィスに出勤することも厭わないということも分かった。
出社かリモートかという問題は、昨今の企業にとっては重要な決定事項だ。若手の働き手はどちらでもよいと思っているかもしれないが、専門家の指摘では、子育て中の従業員や有色人種の従業員ほどリモートワークを望むという。
デューク大学フクア・スクールオブビジネスの教授のドリー・クラーク(Dorie Clark)は、仲間意識や帰属意識を高めることが、長く会社に留まってもらうために不可欠だと言う。
「会社とのつながりが希薄になればなるほど、転職しやすくなります。何か特別なものを失うような感覚がないからです」とクラークは話す。「そもそも会社とのつながりを感じていないのに、誰が辞めることをためらうでしょうか」
キャリアアップとポジティブな職場環境づくり
iCIMSの最高人材活用責任者(CPO)であるローラ・コッカロ(Laura Coccaro)によれば、この調査は若手プロフェッショナルにとってキャリアアップがいかに重要かを示しているという。
コッカロは、売り手市場において人材を惹きつける方法として、早い段階で大卒者に店舗経営を任せるウォルマートの新制度を引き合いに出す。同社は年俸21万ドル(約2700万円)の役職に就くための明確な育成パスを示している。コッカロいわく、この制度は大卒者が何を望んでいるのかが反映されているという。
「社内の機動力を高める唯一の方法は、キャリアアップ、キャリア成長、能力開発を促進し、会社としてそれに投資することです」とコッカロは言う。
しかしそこには、成長の機会と高い給与だけでなく、価値観の共有、ワークライフバランス、メンタルヘルスに関する肯定的な文化など、ポジティブな職場環境が伴っていなければならない。
「(Z世代は)自分の価値観と一致する会社で働くことを重視します」と、LinkedInのグローバルコンテンツ戦略担当シニアディレクター、ダン・ブロドニッツ(Dan Brodnitz)は以前Insiderの取材で語っていた。2021年のCFA Instituteの調査では、大学生と新卒者の17%以上が、仕事のために自分の価値観を曲げなければならないことを危惧していることが分かった。
コッカロは、こうした価値観は人材を引きつけ、長く留める必要性についての考え方を一変させたと見ており、次のように語る。
「給料はこれからもインセンティブであり続けるでしょう。ただZ世代の人たちの話では、給料も大事ですが、将来の就職先に本当に求めるものはそれ以上にたくさんある、ということです」
[原文:Gen Z wants to be loyal to employers. They just need a reason to be.]
(編集・常盤亜由子)