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1年で利用者5倍、売り上げ10倍。副業とSNSを軸に漕ぎ出したブルーオーシャン【ユートラストCEO・岩崎由夏2】

ユートラスト・岩崎由夏

撮影:伊藤圭

友人や友人の友人といった身近なSNSコミュニティの中で、信頼できる人を紹介したり採用できたりするキャリアSNS、YOUTRUST。これまでになかったサービスは、コロナが広まった2020年4月からの1年で利用者数を5倍の10万人超が登録、そして売り上げを10倍に伸ばしている。

「日本の人材流動性を10倍にする」。そう宣言するユートラスト代表取締役CEO、岩崎由夏(33)がその想いに至ったのは、かつてDeNAで採用担当として働いていた時にぶつかった人材業界の課題があったからだ。

求職者のキャリアが狭められる仕組み

キャリエージェントのイメージ写真

人材業界では必ずしも本人のキャリアが広がる転職先を提案されるとは限らない(写真はイメージです)。

DC Studio/ShutterStock

従来型の転職市場では、求人情報を持つエージェントを介した転職活動が主流だ。しかしそうなると、エージェント側には紹介手数料の高い企業を求職者に優先的に紹介しようとする力学が働く。「今月中に採用できたら、手数料をアップする」とエージェント側に持ちかける会社もあるという。特定の企業に誘導されやすくなることは、求職者にとって望ましい状況ではない。本来もっと広がるはずのキャリアの可能性が、狭められてしまうからだ。

一方で、採用担当として求職者と会うと、履歴書や職務経験だけでは、その人柄や魅力は伝わりにくいと感じた。求職者の人柄や魅力を一番知っているのは誰か。それは、友人や知人なのではないか。信頼できる人が転職先を紹介してくれる仕組みがあったら、採用側にとっても求職者側にとっても、良いのではないか。そう考えたのが、YOUTRUSTが生まれるきっかけだった。

思い立ったら早かった。岩崎は勤めていたDeNAに退職の意思を表明し、起業の準備を進めた。その時あったのは、「知り合いからのリファレンス(紹介)を貯めていく」というアイデアだけ。オンラインプログラミング学習サービスのProgateを何周も何周も繰り返してプログラミングの触りを習得した。よく分からないところは前職の先輩に家庭教師を頼んだ。見よう見まねでプロトタイプの「YOUTRUST」を1カ月で開発した。

「インセンティブがなくても、知り合いのリファレンスを書いてくれるものだろうか」との懸念も、このプロトタイプを60人ほどの知り合いに使ってもらって検証したことで払拭できた。モノができたことで、仲間を集めることもできるようになった。

同期を誘ってサービス立ち上げ

DeNA時代の同期だった山田昌弘

DeNA時代の同期である岩崎と山田。山田はエンジニアとして岩崎と二人三脚で立ち上げ期を乗り越えてきた。

提供:ユートラスト

この時、声をかけられたのが、岩崎とDeNA時代の同期だった山田昌弘(36)だ。2017年10月、突然「やまでぃ、一緒にサービス作りませんか!!!! 直球で言ってしまった」というテンションの高いメッセージが、岩崎から届いた。そこには、岩崎が自作したプロトタイプのサイトが貼り付けられていた。

友人からの評価が丸見えになっているサイトに興味を持った山田は、数日後、中目黒のスターバックスで岩崎に会うこととなる。そこで山田は岩崎から、このサービスを立ち上げたいと考えた理由を聞かされる。転職市場をもっとフェアにしたい。頑張った人が報われる世界にしたい。岩崎の熱量は高かった。

「岩崎はパッション型で、ビジョンがはっきりあるタイプ。でも、それを実現するための技術が足りない。僕はそのちょうど逆だったんです。技術はある程度あるけれど、大きなプロジェクトのいちメンバーとして働くことに悶々としていた。何か自分でやりたいなと思っていたときに、ちょうど声をかけてもらった」(山田)

山田は岩崎と別れたその夜のうちに、サービス名の候補をずらっと20個ほど送っている。その中にあったのがYOUTRUSTだった。週末の数時間、岩崎の書いたコードを修正していた山田だが、12月にはDeNAを退職して共同創業者としてユートラストに参加することを決めた。年末までかかったのは「一応、帰省した時に親には伝えなきゃ。お金も借りなきゃいけないし」と思ったからだ。自分の心は、もっと先に決まっていた。

2人目のフルタイムエンジニアの採用まで2年半、山田は岩崎と二人三脚でサービスの骨格を作っていった。

副業とSNS。2つの柱は偶然生まれた

岩崎由夏・ユートラストCEO

撮影:伊藤圭

ユートラストはいくつかのスモールピボット(方向転換)を経験している。一つ目の転換点は、転職だけではなく、副業を考える人たちも対象にしたサービスにしたこと。

起業当初、岩崎はいろんな知り合いにサービスについて説明して回ったのだが、「転職までは考えていないんだけれど、副業ができるところはないかな」とか、「副業でいいのだけど、良い人、紹介してくれない?」などと言われることが多かった。

「最初は、『いや、副業じゃなくて、転職のチャネルを増やすって言うてるがな!』と思っていたんですけれど(笑)。でも、よく考えたらここまで言われるということは、ニーズがあるのかと考え直したんです」(岩崎)

よくよくユーザーを観察すると、副業先に転職する人も多い。フリーになって、3〜4社の仕事を手伝いながら、一番面白かったところに転職するという人もいる。

「そうか! キャリアチェンジは0→1の転職だけじゃない。グレーのタイミングを作って転職する人たちも多いんだ! そう気づいたら、これは私たちがやりたいことの文脈に乗っているなと思うようになりました」(岩崎)

YOUTRUSTがユーザー数を伸ばすこととなった一因が、副業希望者にも門戸を開いたことだった。が、この「副業を求める人」がコロナ禍に激増することを岩崎が知るのは、その数年先のことだ。

もう一つは、今となってはYOUTRUSTの代名詞でもあり、最大の特徴でもある「キャリアSNS」という思想だ。これは実は、偶然生まれたものだった。もともとサービス開始当初からリファラル採用を軸に考えていたので、友達申請の機能はあった。が、SNSとしてこの場を活用させることに関しては、それほど深く構想していなかった。

しかし、2018年4月、YOUTRUSTのサービスをリリースした際、想像に反して1日に700人を超える人がサービスに登録してくれた。岩崎がTwitterでつぶやいただけで、これだけの反応があったのだ。本来であれば喜ばしいことであるが、その時点でマッチングできる企業はゼロだったので、岩崎は大慌てで法人営業に回ることとなる。

その間、山田は別の動きをした。700人をお待たせしているのだから、またこのサイトを訪れる理由を作りたい。山田は岩崎に「タイムラインを作ったらどうか」と提案する。

「最初は『転職サイトにタイムラインって、意味が分からないんだけど?』と反対したのですが、彼が『誰にも使われなかったら、すぐに引き下げるから』と言うので、そこまで言うのなら……と進めてもらいました。それが、ちょくちょく使われるようになって、じゃあまあ消さなくてもいいかとなったんです」(岩崎)

このSNS化が、のちにYOUTRUSTを他社のサービスと大きく切り分ける特徴になった。もともと創業当時から、「レッドオーシャンである転職市場に後発として入るのであれば、10%しかいない転職顕在層にアプローチするのではダメだ」と考えていた。競合がアプローチしていない残りの90%をいかにして獲得するか。偶然とはいえ、その2つ、「副業」と「SNS」が、早い段階で実装されることで、YOUTRUSTのユーザー数は目に見えて増えていった。

ローンチ前に心配していた、「転職意欲を公開する人はどれくらいいるのか」も、初期の段階で検証できた。岩崎がにらんだとおり、若い世代は「いつかは転職する」ことを想定して働いている。その後、同じ会社に勤める人には転職意欲は表示されないといった機能改修を経て、「転職意欲」や「副業意欲」を公開する人はさらに増えていった。現在ではユーザー全員が、転職意欲や副業意欲を公開する設定になっている。

大型資金調達に「ものすごい借金!」

ユートラスト集合写真

現在は30人以上のメンバーがいるユートラストだが、創業から2年ほどは3人しかおらず、成長のスピード感もあまりなかったという。

提供:ユートラスト

順調に滑り出したように見えたYOUTRUSTのビジネスだが、岩崎曰く、「あやうく茹でガエルになるところだった」という時期があった。

リリースして2年弱、YOUTRUSTのユーザー数はじわじわと伸びていた。3人しかメンバーがいないから、手持ちの資金もそれほど減らず、このままだったらゆるやかにやっていけるね、と感じる期間があった。

「当時は気づきづらかったんですけれど、あのまま続けていたら、茹でガエルになって会社を潰していましたね」(岩崎)

岩崎の経営方法は、全て独学だ。起業する前は、「資金調達とは借金をすること」と思っていたほど、経営に関して無知だった。10億円調達と聞くと、「ものすごい借金!」と思っていた。

熱意はある。解決したい課題もある。でも経営は1年生。だから、スタートアップなのにまったくスピード感がない理由に気づけなかった。幸運だったのは、良い人材が入社し、岩崎にアドバイスをしてくれたことだ。今のCOOである佐藤亮太(31)である。佐藤は岩崎に「もっと営業を採用しよう」と言った。YOUTRUSTのビジネスモデルは、採用したい企業が採用サービスとして利用するSaaS型の月額費用で回っている。もっと営業をして有料企業を増やせば、売り上げも増えると佐藤は言うのだ。

「『いやでも、キャッシュもそんなにないのに、人を採って大丈夫かなあ?』と聞く私に、佐藤は『人を採ったら、必ず売り上げが伸びるから』と自信たっぷりに言うんです。うーん、じゃあ、それだけ言うならやってみようかって」

タイムラインの実装の時もそうだが、岩崎の意思決定は常に「一番考えている人が偉い」である。セールスに関しては、一番考えている佐藤に任せよう。「じゃあ、信じるわ!」と伝え採用を増やしたら、売り上げは採用人数に比例するように伸びていった。

振り返ると当時は「投資」という概念がなかったと岩崎は言う。

「適切なタイミングで踏むべき投資をしていなかった。それは翻って言うと、私自身がこの事業を信じていなかったということですから、もう大反省でしたね。あの時、佐藤が来てくれなかったら、この会社はきっと潰れていたと思います」(岩崎)

その後、DeNA代表取締役会長である南場智子に叱咤激励され、「もっと高い視座でこの事業を拡大せねばならない」と考えるようになったのは、第1章で紹介したとおりだ。この頃から、岩崎は「日本の人材流動性を10倍にする」と口に出すようになった。もともと採用の仕組みに対する違和感から起業した若者が、経営者として日本の将来を考えるようになった。

そんな岩崎だが、新卒時代は「ダメを通り越して相当イタい社会人だった」という。次回は岩崎が、DeNAでの仕事を通じて、どのように高い志を抱き起業する人物にまで変貌したのかを聞く。

(敬称略、続きはこちら▼)

(第1回はこちら▼)

(文・佐藤友美、写真・伊藤圭)

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