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文字商標「ゆっくり茶番劇」問題:ドワンゴが公式声明…記者会見にみる「ネット文化」のありか

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出典:ニコニコ動画

ニコニコ動画を運営するドワンゴは5月23日、「ゆっくり茶番劇」という動画コンテンツの商標登録(以下、「ゆっくり茶番劇」問題)に関するドワンゴのアクションに関する記者会見を開いた。

「ゆっくり茶番劇」問題とは、5月15日に動画投稿者の柚葉氏が、ニコニコ動画上で多くのユーザーが作品を製作・投稿してきた「ゆっくり茶番劇」の文字商標を取得し、この商標使用に対して年間10万円を請求すると発表したことに端を発する一連の騒動のことだ。

騒動の発生から約1週間でドワンゴによる見解発表と記者会見。大手企業の動きとしては比較的素早いアクションと言える。

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出典:ニコニコ動画

ドワンゴの専務取締役COOで「ニコニコ」代表の栗田穣崇氏は、「ユーザーのアクションから生まれたゆっくり茶番劇は、10年以上続き、80万件数以上の動画がある文化圏である」と言及。「ゆっくり」発祥の地であるプラットフォーマーとしての意思を明確にした形だ。

この1週間でドワンゴが決めたアクションは以下の4つだ。

  • 商標権の放棄交渉
  • 「ゆっくり茶番劇」の商標登録に対する無効審判請求
  • 相談窓口の設置
  • 「ゆっくり」関連用語の商標出願

柚葉氏が所属するコミュニティの公式アカウントは、「柚葉より『月曜日(※編注:5月23日)から放棄手続きを開始する』との報告がありましたこと、ご報告をさせて頂きます」とツイートしている。

一方で、動画プラットフォームであるドワンゴとしては権利者から訴訟を起こされる可能性がる。そのため「ゆっくり茶番劇」の商標権放棄について交渉し、放棄交渉に応じてもらえなかった場合は無効審判請求を検討する方針だ。

なお、ドワンゴ側は商標権出願者と柚葉氏が同一であるかは現時点では不明だとしている。

現時点でドワンゴは「ゆっくり茶番劇」の商標権について「ほとんどの『ゆっくり動画』に影響しないと考える」との見解を発表。従来どおり動画を投稿しても問題ないとしている。

仮に柚葉氏が「ゆっくり茶番劇」を商標登録した当事者で、商標権放棄を手続きしていることが事実であれば、今後はドワンゴによる相談窓口の設置と、商標独占防止のための「ゆっくり茶番劇」以外の「ゆっくり」関連用語(「ゆっくり実況」「ゆっくり劇場」など)の商標出願がキーになる。

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出典:ニコニコ動画

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出典:ニコニコ動画

ドワンゴが設置する相談窓口は、ユーザーからの相談内容に応じて警察か弁護士事務所を紹介するというもの。

「ゆっくり」関連用語の商標出願については、「ゆっくり解説」「ゆっくり実況」などの派生ケースのことを指す。ドワンゴとしてはこれらの商標を取得しても、権利行使はせず、コミュニティ・文化保護をはかりたい考えだ。

いささか、本件は問題の展開が速い。また、ゆっくり茶番劇の背景がやや複雑であるため、おさらいとして触れておく。

「ゆっくり茶番劇」とは

いわゆる「ゆっくり茶番劇」は、国内同人サークル「上海アリス幻樂団」(ZUN氏運営)の作品「東方Project」に登場する、博麗霊夢と霧雨魔理沙というキャラクターの二次創作物が、音声合成フリーウェア「softalk」を用いて対話する形式のコンテンツだ。

内容に関しては解説から実況まで多岐に渡る。

登場した時期は具体的には不明※だが、グラフィックデザイナー・Dプ竹崎氏が2ちゃんねる掲示板のスレッドに投稿したアスキーアートが起源だとされる。

2008年にそのアスキーアートをイラストレーター・まそ氏がイラスト化して、ニコニコ動画、その後YouTubeなどでも親しまれるようになり、現在に至っている。

※筆者が「ゆっくり」のキャラクターを認識したのは2007年秋頃。2007年末頃から多くのスレッドで見かけるようになった。

従来は権利に不明瞭な部分があったが2020年に解消し、東方Projectの二次創作ガイドラインの範囲であれば、自由に使用できるようになった。有志が作成した「ゆっくり」を解説するコンテンツに、その経緯がよくまとまっている。

参考:東方Projectの二次創作ガイドライン https://touhou-project.news/guideline/

「ゆっくり茶番劇」問題をめぐっては、2022年5月20日にZUN氏から次のような発表があり、「東方Project」の二次創作としての「ゆっくり茶番劇」の使用は問題ないと投稿している。

また、東方Projectに関わる部分以外はドワンゴに任せるとも発言している。

「ゆっくり茶番劇」は、このフォーマットにオリジナルキャラクターなどを当てはめたバージョンも存在し、それらにも「ゆっくり茶番劇」などの表記が組み込まれていることもある。

今回、ニコニコが言及したのは、こうした派生コンテンツも含めてネット発祥の表現文化の保護としていくという意味が強い。

「ゆっくり茶番劇」問題は2005年の「のまネコ」騒動を想起させる

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Coyu.Liveのプレスリリース

出典:Coyu.Live

柚葉氏が所属するCoyu.Liveは、5月20日に同氏の無期限の会員資格停止処分を発表している。時系列的にも契約に反する要素があり、ライバーコミュニティ側(Coyu.Live)に管理責任はないが、管理者のけじめとして、商標権の放棄がおわるまでは最低限の面倒を見ると発言している。

なお、柚葉氏が代理人を通じて商標登録を出願したのは2021年9月13日であり、Coyu.Liveとの契約は2021年10月19日に行われている。このとき、柚葉氏からCoyu.Liveに対して、問題の商標に関するアナウンスはなかったとのことだ。

CGM型のプラットフォーム上の二次創作をめぐっては、過去にも似たような問題が起こっている。例えば、2005年にネット上で話題になった「のまネコ」問題は、騒動の構造が今回の事象に近い。

「のまネコ」の場合は企業(エイベックス・グループ・ホールディングス)をめぐって騒動になった。同社は当時、騒動から約1カ月で、商標登録の出願中止を発表している。

(文・林佑樹

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