BEYOND第2回のゲストは、やさしいせいふく代表の福代美乃里さん(中央)、設立メンバーの島崎恵茉さん(右)。
撮影:小林優多郎
“変化の兆し”を捉えて動き出している人や企業にスポットを当てるオンライン番組「BEYOND」。
第2回は、ファッション業界の問題を訴える学生団体「やさしいせいふく」代表の福代美乃里さんと創立メンバーの島崎恵茉さんが登場。
5月18日(水)に放映した番組の抄録を、一部編集して掲載する。
本編アーカイブはYouTubeにてご視聴いただけます。
撮影:Business Insider Japan
——「やさしいせいふく」の活動について教えてください。
福代美乃里さん(以下、福代):「やさしいせいふく」は、中学3年生から大学1年生までの十数名で構成されている学生団体で、現在は同世代へ向けて二つの活動を行っています。
一つは講演会で、団体のメンバーがオンラインだったり実際に学校へ出向いたりして、服飾に関する環境や労働問題、私たちが活動を始めたきっかけをお話しています。ワークショップをすることもあります。
もう一つは服飾の問題に配慮したTシャツ開発で、学生向けに販売しています。文化祭や体育祭などでおそろいのTシャツを作るときなど、イベントや団体利用向けの商品です。
Tシャツを披露するふたり。
番組をキャプチャ
例えば、素材はオーガニックコットンでGOTS認証※を取得したものです。デジタルプリントも水をあまり使わないものを使用しています。
※GOTS認証:繊維製品が原料の収穫から消費者に届くまで、一環して環境と社会に配慮していることを示す国際的な基準。
——開発から販売するところまで、自分たちで行っているのでしょうか?
福代:そうですね。実際にインドの工場をオンラインで見学して、服を作っている方と話しています。
── Tシャツはどこで購入できますか?
福代:「やさしいせいふく」のホームページからオンラインで購入できます。現在は購入者の上限年齢を大学生までとさせていただいていますが、今後一般販売も検討しています。
「自分も何かしないと」危機感覚えた
—— 島崎さんは「やさしいせいふく」の設立メンバーですね。設立の経緯について教えてください。
島崎:「アースデイ※東京2019」に参加したとき「やさしいせいふく」の立ち上げメンバーに出会ったことが始まりでした。
※アースデイ:地球のことを考えて行動する国際的な1日。1970年に始まった。「アースデイ東京」は毎年4月下旬に代々木公園で開催している。
イベントには、SDGsについて課題意識を持った都内の他校の生徒が集まりました。生徒はおそろいのTシャツを着ていましたが、そのTシャツが私たちが販売しているような環境や労働問題に配慮したものでした。このTシャツを着たときに初めて「こんなものがあるんだ」と知りました。
同時に、私と同じ思いを持った方が参加者の中に何人かいました。
「アースデイ東京2019」の様子。
画像:取材者提供
そこで「アースデイ東京2019」の後から1年間ほど、有識者の方をお招きしてまずは服飾について知るための勉強会を重ねました。
2020年2月ごろ、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、学校が休校になりました。時間的余裕もあり、かつ一緒に勉強会を行ったメンバー、サポートしてくださる大人もいて、条件が揃いそのタイミングで団体を設立しました。
—— そもそも「アースデイ東京2019」に参加しようと思ったきっかけはなんだったのですか?
島崎:中学2年生のとき「地球学」という授業で山藤旅聞先生に出会ったことが、興味を持つきっかけでした。「アースデイ東京2019」に参加したのも山藤先生の元で活動していたからです。
2人に大きな影響を与えた山藤旅聞先生。
作成:Business Insider Japan
——福代さんはなぜ「やさしいせいふく」に参加したのでしょうか?
福代:私も学校で山藤先生に出会い、SDGsについて学んだことがきっかけです。
「アースデイ東京2019」には私も参加しましたが、すぐに「やさしいせいふく」に入ったわけではなく、後に学校の先輩だった島崎さんが声をかけてくれました。
最初は興味本位でしたが、服飾の裏側にある問題を取り扱ったドキュメンタリー映画「The True Cost(ザ・トゥルー・コスト 〜ファストファッション 真の代償〜)」を観て、より問題に対する危機感が生まれて「自分も何かしないと」と思いました。
SDGsに対する意識の変化について
——この数年、SDGsの認知度は高まり続けています。皆さんの周りでSDGsへの意識は変わっていると感じますか?
島崎:SDGsという言葉がすごく知られてきた一方で、言葉だけが先行して実態が伴っていない印象です。結局「SDGsって何だっけ」と聞かれたときに答えられない、当事者意識を持てていないのはまだあると思います。
福代:どういう社会問題が組み込まれていて、自分たちがそれにどう関わっていて、自分たちには何ができるのか。本質的なところまで考えていければいいのかなと思っています。
—— 2020年には経産省も訪問して、10代の視点から環境問題について提議をされました。このときはどういったことを話しましたか?
島崎: 経産省へ行った2020年は、「やさしいせいふく」を立ち上げて間もない時期。農家の方や、販売する方などさまざまな立場の視点から服飾産業を捉えてみたいと思っていました。経産省訪問はその一環で、行政の立場から服飾産業について聞きました。
このときは制服についても取り組もうと思っていたので、制服についても伺いました。ただ、大きな目的は対話することでした。
大手アパレル企業の社長とも話したい
「やさしいせいふく」のこれからとは。
番組をキャプチャ
——今後についてもぜひ伺いたいです。2022年の目標はありますか?
福代:まずは、Tシャツを通して私たちのメッセージを伝えたいです。一般の方への販売も検討中とお話しましたが、多くの方に届けることで、服飾の問題を知ってもらいたいのです。まだまだ届いている層が少ないと感じていて、今後は大人の方、政府や企業などもっと広げていきたいです。
また、今年は実現は厳しいと思いますが、Tシャツ制作に携わっているインドの農家の方と、直接お会いしたいということが私の中での大きな目標ですね。
これまでオンラインで工場見学やお話しはしましたが、まだ実際に現地に行ったことがないんです。
—— 島崎さんはどうですか?
島崎:(自分が影響を受けた)山藤先生のように自分も講演会で伝えたい、皆さんの意識の「ギア」を変えたいと思っていますが、なかなか思うように行かず悔しいこともあります。
例えば、課外活動に力を入れるよりも大学受験を重要視している進学校で話したときには、「やさしいせいふく」の活動をうまく伝えられなかったことがありました。何をどうやって誰に伝えればいいのかを考え続けていきたいと思っています。
—— 島崎さんは大学に進学されました。今後は「やさしいせいふく」の活動はどうなるのでしょうか。
島崎:私を含めて立ち上げメンバーはみんな大学生になったので、新メンバーを迎える準備をしようと考えています。元々福代さんを誘った理由も、当時中学生だった福代さんの考え方を聞いてみたかったからでした。幅広い年代の意見を知りたいんです。
島崎さん(左)と福代さん(右)。
撮影:小林優多郎
——「やさしいせいふく」の活動を通して、伝えたいメッセージは何でしょうか。
島崎恵茉さん(以下、島崎):Tシャツの販売はあくまで問題を伝えるための手段で、講演会をメインの活動として想定しています。
その上で伝えたいメッセージは、服飾の問題を知っていただくということもそうですが、問題を知った上で、何か行動をしたくてもその仕方が分からないといった方へ向けて、少し背中を押すことができればいいなと思っています。
—— ちなみにいま一番この人に伝えたい!という方はいますか?
福代:私は実際に服を作っている大企業の社長さんにお話しできたらいいなと思っています(笑)。
——最後に一言お願いします。
福代:今日のお話しを通して、少しでも興味を持っていただき、それが実際に行動や考えの変化につながればいいなと思います。
島崎:私たちもまだ学んでいる最中で、話したことが必ずしも正解だとは思えません。私たち自身も考えが変わっていくことはあると思いますが、ぜひ「やさしいせいふく」をこれからも応援いただければと思います。
(聞き手・西山里緒、構成・紅野一鶴)
「BEYOND」とは:
毎週水曜日19時から配信予定。ビジネス、テクノロジー、SDGs、働き方……それぞれのテーマで、既成概念にとらわれず新しい未来を作ろうとチャレンジする人にBusiness Insider Japanの記者/編集者がインタビュー。記者との対話を通して、チャレンジの原点、現在の取り組みやつくりたい未来を深堀りします。
アーカイブはYouTubeチャンネルのプレイリストで公開します。
本日5月25日(水)19時からは「RICCI EVERYDAY」の共同創業者・仲本千津さんをお迎えして「ウガンダ発、SDGsが軸のファッションブランド」をお送りします。