世界有数の資産運用会社フィデリティ・インベストメンツ(Fidelity Investments)は、2022年後半のバリュー(割安)株のパフォーマンスに注目している。
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確実にリターンが得られる投資というのは世の中に存在しない。
それでも、米フィデリティ・インベストメンツ(Fidelity Investments)のトップ・クオンツストラテジスト、ディニース・チザムによれば、株式市場で厳しい局面が続いたあとには明るい先行きを示すシグナルが見えてくるという。
米大型株の動向を示すS&P500種株価指数は年初来18%超の下落を見せ、ここ数日に至ってはもうすぐ弱気相場入りしそうな気配すら漂(ただよ)っている。
運用残高4兆2800億ドル、世界有数の資産運用会社であるフィディリティでクオンツ戦略責任者を務めるデニス・チザムは、市場の歴史を踏まえた上で株価低迷にはふたつの類型があると指摘する。
ひとつは、企業の収益低下に連動してバリュエーション調整(=予想株価収益率の低下)が起こり株価が下落するケース。もうひとつは、業績が安定しているにもかかわらず株価だけが下落するケース。
株価と企業収益の両方とも下落するケースは確かに厄介(やっかい)だ。
しかし、足もとで見られるようなバリュエーション調整と好調な収益のコンビネーションは、投資家があきらめさえしなければ、たいていの場合リターン増加につながる。
チザムは最近、Insiderの取材にこう語っている。
「2023年にかけて想定されるあらゆる相場の谷(=株価下落)に動じず、泰然自若の姿勢で待つ覚悟があれば、企業の業績は(バリュエーション低下に連動せず)きわめて力強く伸びているので、大きなリターンを伴う株価上昇の可能性がきわめて高いでしょう。
私の予測では、90%以上の確率で株価は上昇し、リターンは2ケタを期待できます」
チザムによれば、現在の株式市場では、最も割高な(グロース)銘柄に対して投資家が支払ってもいいと考えている金額と、それらの銘柄の(実績あるいは予想株価収益率などの指標で示される)バリュエーションとの間に大きなギャップが存在する。
一方、同じように株価収益率などの指標をもとに考えれば、市場で最も割安なバリュー銘柄が現在ほどの水準まで割安になったことは、少なくとも1990年以降では一度もない。
2020年11月以降、銀行やエネルギーセクターのバリュー銘柄は、投資コストの高いテクノロジー銘柄に比べて全般的に力強いパフォーマンスを示しており、今後市場の動きをけん引するのはバリュー銘柄になるとチザムは語る。
こうした(割高株と割安株の間にある)ギャップは投資家の強い不信感のあらわれで、持続的なものではなくいずれ修正されるという。
「過去20年間の大半の景気サイクルに比べても、現在のサイクルでみられる割安感は抜きん出ています。今日のようなバリュエーション・ギャップが続くなら、S&P500種指数の年率平均リターンは18%に達するでしょう。
また、こうした環境のもとでは、一般的に(時価総額と流動性ともに低い)小型株のほうが大型株より良いパフォーマンスを発揮します」
また、株式市場全体を見渡したとき、エネルギー株が年初来S&P500種指数をアウトパフォーム(=ベンチマークをパフォーマンスで上回ること)しながら、いまだに過去60年間なかったほどの割安感が続いていることにチザムは注目する。
(原油や天然ガス含む)コモディティ価格の上昇と力強い需要が続いているにもかかわらず、エネルギー企業の収益見通しが低くとどまっているのがその理由だという。
「ここまでアウトパフォームを維持してきたバリュー株ですが、エネルギー株や金融株まで含めて、アウトパフォーマンスはさらに長期間にわたって続く可能性があります」
(翻訳・編集:川村力)