土屋鞄製造所は、キノコ由来の素材を開発するアメリカの「ボルト・スレッズ」社との提携を発表した。
画像:土屋鞄製造所
ランドセルや大人向けの鞄・革小物を製造・販売する「土屋鞄製造所(以下、土屋鞄)」がキノコの菌糸体から生まれたレザー代替素材を採用した、新たな商品ラインナップを販売する。5月25日、発表した。
土屋鞄での商品開発が進んでいるのは、ランドセル、鞄、小物などのプロトタイプ計6型。このうち、ファスナー付きミニ財布は2022年内の発売を目指すという。
注目集まる“キノコの菌糸”からつくるレザー代替素材「Mylo」
協業したのは、アメリカのバイオテック企業、Bolt Threads(ボルト・スレッズ)社だ。土屋鞄によると、ボルト・スレッズ社と国内ブランドとの共同開発は初めてだという。土屋鞄はボルト・スレッズ社へ出資したことも明かしている。
土屋鞄の特設サイトより。素材にはマッシュルームレザーの「Mylo」を採用している。
出典:土屋鞄
今回、土屋鞄が採用したレザー代替素材「Mylo」とは、キノコの菌糸体(キノコの下にある根のような部分)から生まれた新素材だ。
プレスリリースによると、キノコの菌糸体は加工によって柔軟性を持たせることができ、さまざまな製品に利用できるという。さらにMyloで育てている菌糸体は、100%再生可能なエネルギーで稼働する垂直農法(高さのある建築物の階層や、傾斜面をつかった農業)施設で栽培されている。
キノコ由来の素材「Mylo」は、垂直農法によって栽培されている。
画像:土屋鞄製造所
生育には水と空気とマルチング材(菌糸体の生育時に培地の表面を覆うもの)のみが使われ、さらに菌糸体は2週間足らずの短い周期で育つとする。
こういった特徴から、サステナブルかつ安定した供給が見込めると、土屋鞄は説明している。
Myloをはじめとするキノコ由来の素材は近年、アニマルレザーに代替するものとして注目が集まっている。エルメスもバッグの素材に採用したMycoworks社は2022年1月、1億2500万ドル(約160億円)の資金調達を発表した。
「Mylo」を開発するボルト・スレッズ社は2009年に創業。ベンチャー企業データベース「crunchbase」によると、現時点までに約4億7100万ドル(約598億円)を調達している。2020年には、アディダスやステラ・マッカートニーら大手ファッションブランドと、「Mylo」を独占的に利用できるコンソーシアムを結成している。
(文・西山里緒)