多くの若者は、いつか起業したいと考えている。
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- アメリカ各地の大学で卒業式が行われた。
- 起業家など著名なリーダーが招かれ、卒業生へのスピーチをした。
- 3人の創業者による新卒者へのアドバイスを紹介しよう。
2022年5月、アメリカでは数百万人の大学生が卒業したが、その多くは就職ではなく、起業することを考えているという。
アメリカの国勢調査によると、過去2年の新規起業数は、過去最多の約980万件だった。加えて、起業の専門家によると2022年の卒業生は、起業するのにベストなタイミングで卒業しているという。
カインド・スナックス(Kind Snacks)の創業者、ダニエル・ルベツキー(Daniel Lubetzky)は5月7日、ノースカロライナ州のハイ・ポイント大学(High Point University)でのスピーチで「あなたたちがこの世界にやってくるその時に、我々の世界は再び新たな歴史を刻もうとしている。そして、その最もすばらしい章の1ページを、あなたたちが書くことができる」と述べた。
ルベツキーは今年の卒業シーズンでスピーチを行った代表的な起業家の1人だ。人生の新たなステージへと入って行く若き起業家たちに送る、創業者によるアドバイスを紹介する。
ハムディ・ウルカヤ(Hamdi Ulukaya):チョバーニ(Chobani)創業者
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ハムディ・ウルカヤは、2007年にヨーグルト会社のチョバーニを創業した。5月13日、マサチューセッツ州のノースイースタン大学で、起業志望者が起業に際して覚えおくべきことについて語った。それは、地域社会と従業員、どちらにも利益を与えるためにはどうすればよいかということだ。
ウルカヤによると、チョバーニ創業時、近所のある難民グループが、仕事を探すのに苦労していることを知った。彼らを雇おうと考えたが、やめた方がいいとアドバイスされた。そうするのであれば、チョバーニの製品を買うのを止めると言う顧客がいたという。だが、自身もトルコからの移民であるウルカヤは、すべてを投げ売って自国を離れることの厳しさを知っていた。
現在、チョバーニでは何百人もの移民や難民がアイダホやニューヨークにある同社の施設で働いているとウルカヤは述べた。こうして難民を受け入れたことが、ウルカヤに大きな影響を与え、難民を助けるためにもっと何かできないかを考えるようになったという。
彼は2016年に、非営利組織、テント・パートナーシップ・フォー・レフュジーズ(Tent Partnership for Refugees)を設立した。この団体はグローバル・ビジネス・コミュニティーが難民を受け入れるようになることを目指すものだ。今では220以上の企業が、難民の研修や採用に取り組んでるという。
ウルカヤはノースイースタン大学の卒業生に対し、起業の際には、どのような形で恩返しができるか考えるのがよい、それが達成感につながるからだと語った。
「どんなに大変でも、人のために前に出ることほど、やりがいのあることはない」とウルカヤは述べた。
チョバーニは2021年に上場申請書類を提出した。IPOは現在保留中となっているが、100億ドル(約1兆2700億円)以上の評価になる可能性もある。
リード・ホフマン(Reid Hoffman):リンクトイン(LinkedIn)共同創業者
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5月12日、テネシー州のバンダービルト大学でスピーチを行ったリード・ホフマンは、ビジネス特化型ソーシャルネットワーク大手のリンクトインの共同創業者だ。彼はプロフェッショナルの世界では個人的なつながりが重要だと強調した。ホフマンによると、友人は人生を豊かにするだけでなく、起業の際に味方にもなってくれる。
「親しい友人を作り、関係を深め、それを維持することが、人生において最も重要な仕事かもしれない」とホフマンは述べた。
「友人は間違いなく、幸福感、連帯感、意義の中心にあるものだ」
ホフマン自身も、リンクトインを始めたのは親しい友人が勧めてくれたおかげだと考えている。2002年、1年間の休職を考えたが、ある友人が休職を短くしてスタートアップのアイデアに集中するよう提案した。その翌年、彼はリンクトインを立ち上げ、2016年にはマイクロソフト(Microsoft)に262億ドル(約3兆3300億円)で買収された。
「友人は、自分が聞きたい事ではなく、聞く必要があることを言ってくれる」とホフマンは述べている。
ダニエル・ルベツキー(Daniel Lubetzky):カインド・スナックス(Kind Snacks)創業者
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2004年にスナックの会社、カインド・スナックスを創業したダニエル・ルベツキーは、起業家精神を駆り立てるような目的を見つけるように卒業生を促した。
ビジネス・リアリティ番組の「シャーク・タンク(Shark Tank)」にもゲスト審査員として出演したことのあるルベツキーは「何をするにしても、目的さえ見つければ、経済的な成功も含め、多くの成功を手にすることができる」と述べた。
「私は、What(何をするか)ではなく、How(どのようにするか)について話しているのだ」
また、ルベツキーは仕事上の成功と個人の成長のために、日々の習慣が重要だと述べた。
「単純なようだが、実に大変なことだ。個人の行動など小さな事と思うかもしれないが、皆がよい習慣を実践すれば、波紋が広がり、よい変化をもたらすことができる」
カインドでは、心のこもった議論、ユーモアのセンス、そして誰に対しても尊厳を持って接することを大切にしており、これらの要素が会社の業績にも貢献したとルベツキーは述べた。カインドは2020年には、大手食品会社のマーズ(Mars)に買収された。取引条件は公にはされなかったが、詳しい関係者がニューヨーク・タイムズに語ったところによると、評価額は50億ドル(約6400億円)だったという。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)