Sputnik/Sergey Guneev/Kremlin via REUTERS
- ロシアでは大統領府の内部の人間たちがプーチン大統領の後継者を考えていると、ロシアの独立系メディア『メドゥーザ(Meduza)』が報じた。
- 政界のエリートたちはウクライナとの戦争や崩壊しつつある経済に不満を募らせていると、メドゥーザは伝えている。
- 後継者候補には、モスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長やドミトリー・メドヴェージェフ前大統領らの名前が挙がっているという。
プーチン大統領がウクライナ侵攻をめぐって退陣に追い込まれたり、病に倒れた場合に備えて、大統領府の内部の人間たちは密かに後継者候補について話し合っていると、ロシアの独立系メディア『メドゥーザ』が報じた。
西側諸国の制裁の影響や、数カ月に及ぶウクライナでの戦争のコストはロシア経済を麻痺させていて、大統領府や政府の内部では不満が高まっているという。
ロシア政府の複数の関係者からの情報をもとに、メドゥーザは政界のエリートたちがこれまで以上に「プーチン後の未来」について話し合っていると伝えた。
「彼らがプーチンを今すぐに倒したいと思っているとか、策略を巡らせているということではないが、近い将来、プーチンがこの国を統治しなくなるかもしれないという認識… または願望は存在する」とある関係者はメドゥーザに語った。
他にも「大統領は失敗したが、これから全てを解決して(ウクライナとの)何らかの合意に至る可能性もある」と話す関係者もいるという。
大統領府の高官たちは密かにプーチン大統領の後継者候補について話し合っているとメドゥーザは伝えていて、モスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長、ドミトリー・メドヴェージェフ前大統領、セルゲイ・キリエンコ大統領府第1副長官らがその候補に挙がっているという。
ただ、ロシアのエリートたちはプーチン大統領を退陣させる唯一の現実的な方法は、大統領の健康問題が悪化するのを待つことだと分かっていると、メドゥーザは関係者の証言をもとに報じている。
「皆、うんざりしているが、現在の職にとどまっているし、この国の戦争に貢献している」とある関係者は話したという。
プーチン大統領の"重病説"は以前から囁かれている。
「(プーチンは)血液のがんで、かなり具合が悪い」と語るオリガルヒ(新興財閥)の発言が密かに録音されていたとNew Lines Magazineは報じているし、プーチン大統領に何度かインタビューをしている映画監督のオリバー・ストーン氏は、大統領は以前がんを患っていたが、回復したと話している。イギリスの元諜報員クリストファー・スティール氏も5月中旬、プーチン大統領が末期症状にあるとロシアの消息筋から聞いたと語った。
ただ、西側諸国の政府高官はこうした"噂"に冷水を浴びせてきた。ある政府高官は「プーチン大統領の健康状態をめぐってはいろいろな憶測があるものの、わたしの見たところ、現時点ではプーチン大統領は自身の側近や国、決定事項をしっかりコントロールしている。プーチン大統領が今でも政策決定者だ」と先週、語っている。
ロシア大統領府に近いある関係者は「プーチンに満足している人間はほとんどいないだろう。経営者や多くの閣僚は、制裁の規模をじっくり考えることなく大統領がこの戦争を始めたことを不満に思っている。こうした制裁の下で普通の生活を送ることは不可能だ」とメデューザに話している。
大統領府の関係者2人は、ウクライナでの戦争に起因する経済的な困難について、プーチン大統領は話したがらないとメドゥーザに語った。
とはいえ、大統領府の中にはロシアはウクライナに対してもう後戻りできないところまで来ていて、全面的にやるしかないと主張するタカ派的な声も複数あると、メドゥーザは伝えている。
「ここまで来たら、今さら態度を軟化させることはあり得ないと彼らは考えている。むしろもっと強硬に行く必要がある」とある情報筋はメドゥーザに話した。
ロシア軍はウクライナ東部のドンバス地方で制圧を進めていて、ウクライナ国防省のオレクサンドル・モツヤニク報道官は5月24日、ロシア軍が「最も活発な段階」に入ったと語った。
(翻訳、編集:山口佳美)