ウクライナ南部ヘルソン州にあるカホフカ水力発電所を警備するロシア兵(2022年5月20日)。
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- ロシア大統領府の高官は、秋までにウクライナでの戦争に勝てるとの希望を持っていると、メドゥーザが報じた。
- ヨーロッパ諸国がウクライナに武器を送ったり、軍事支援を続けるのに疲れてくると見ているという。
- ロシアの最低限の目標はドンバス地方を手に入れることで、最大の目標は首都キーウ(キエフ)を手に入れることだと、情報筋は話している。
ロシア大統領府の高官は、西側諸国がウクライナ支援に疲れてくることでロシアが秋までにウクライナでの戦争に勝てるとの希望を持っていると、ロシアの独立系メディア『メドゥーザ(Meduza)』が報じた。
「最終的には我々が彼らを打ち砕くだろう」と大統領府に近いある情報筋はメドゥーザに語った。
「恐らく全てが秋までに終わる」
別の情報筋は「遅かれ早かれ、ヨーロッパは支援を続けるのに疲れてくるだろう」と話した。
「資金面でも武器製造の面でも… どちらも自分たちのために必要だからだ」
ヨーロッパはエネルギーをロシアからの輸出に依存しているため、冬が近づくにつれ、ロシアと「交渉しなければならなくなる」だろうとも情報筋は見ている。
メドゥーザは、ウクライナでの戦争において具体的に何が"勝利"を意味するのか、ロシアの政府関係者も未だによく分かっていないと伝えている。情報筋の1人は、ウクライナが2014年から戦い続けている東部ドンバス地方を手に入れることが"最低限"だと話している。
ロシアが兵力を強化する中、ウクライナは今、ドンバス地方で劣勢に追い込まれている。ウクライナ軍の高官もつい先日、東部ルハンシク州の戦線でロシア側が優勢にあると認めた。
ロシア側がドンバス地方を手に入れることができれば、「大統領府はこれを実質的な政治的功績と見なし、軍事侵攻を正当化するものとして国民に伝えられる可能性が非常に高い」とイギリス国防省は5月28日にコメントした。
ただ、最大の目標は首都キーウを手に入れることに変わりはないと情報筋は話している。
侵攻開始から6週間が経ってもロシア軍は首都キーウを制圧できず、3月にはドンバス地方の奪取に注力するために部隊を再配置した。
プーチン大統領はもともと、ロシア軍が2日でキーウを制圧できると考えていたと、米中央情報局(CIA)のビル・バーンズ長官は3月に語っている。
西側諸国からはここ数日、ウクライナ支援の継続を約束するコメントが出されている。
5月28日には、イギリスのジョンソン首相が「長期的に」ウクライナを支援する考えをツイッターで示した。
アメリカのバイデン政権は、ウクライナに最新型の長距離ロケットシステムを送る方向に傾いている —— こうした兵器が以前は除外されていたことを考えると、ウクライナ支援は強化されていると言えそうだ。
ロイター通信が入手した欧州連合(EU)の首脳会議の声明草案は、EUの「決意は揺らがない」と表現している。
ただ、加盟国の足並みは必ずしも揃っていない。例えばハンガリーは、EUが提案したロシア産原油の禁輸措置について反対し続けている。
ウクライナは以前から対ロシア制裁は不十分だと批判していて、それが戦争を長引かせ、痛みを増大させていると指摘している。
(翻訳、編集:山口佳美)