- トランスニストリア地域(沿ドニエストル共和国)は1990年代前半に「独立」を宣言し、ロシア軍の支援を受けてモルドバ共和国から離れた。
- 一方的に独立を宣言したものの、国際的な国家承認は受けていない。
- 現地の様子を知るため、Insiderはトランスニストリア地域を訪れた。
4月下旬、ウクライナと国境を接するモルドバのトランスニストリア地域が「攻撃」を受ける48時間前、Insiderはロシア兵約1500人が駐留するこの地域の様子を知るために現地を訪れていた。
モルドバはウクライナの西に位置している。
INSIDER
トランスニストリア地域はモルドバ東部の、ロシアが支援する分離独立派が実効支配する地域だ。
タイル会社の看板。
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ウクライナと国境を接し、約47万人が暮らしている。
カジノとバス停。
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1990年に独立を宣言し、1992年には本格的な武力紛争に発展した。その後、事実上の独立状態を保っている。
集合住宅。
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モルドバは1991年に旧ソ連からの独立を宣言した。
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独立したモルドバは、ルーマニア語を公用語に定めた。
ベンデルにある貨物列車の駅。
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その後、ロシアが介入した。トランスニストリア地域のロシア語を話す人々を守るためというのが表向きの理由だった。
駅構内の様子。
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トランスニストリア地域は主権を主張しているが、ロシアを含め、いずれの国からも国家承認は受けていない。
切符売り場。
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ただ、少なくとも1500人のロシア兵が「平和維持部隊」などとしてこの地域に駐留していると考えられている。
駅構内の様子。
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装甲車両に乗った平和維持部隊がモルドバとの間の事実上の"国境"に展開している。
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トランスニストリア地域はパスポートにスタンプを押すことはできないので、海外からの旅行者には滞在可能期間が書かれた紙が発行される。
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Insiderが訪れた際は、記者が持っていたアメリカのパスポートについて当局から質問されることはなかった。最大12時間の滞在が許された。
旧ソ連時代の電話。
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Insiderが訪ねたすぐ後、当局は複数の爆発が起きたと報告した。
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ロシアの政府高官は、トランスニストリア地域とクリミア半島をつなげるためにウクライナ南部を制圧するのだと主張した。
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ロシアがこうした意図を示したことで、トランスニストリア地域で新たな戦争が始まるのではないかとの懸念が広がった。
ロシア皇帝の記念碑。
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この地域は旧ソ連時代、モルドバの中で最も工業化が進んでいた。
駅の駐車場。
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今でもロシアから無料で供給される天然ガスを使って、モルドバの電力の半分以上を提供し続けている。
ベンデルの駅には14本の線路がある。
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トランスニストリアは独自の軍隊を持っている。1万人ほどの兵士がいると考えられていて、予備役もいる。
旧ソ連時代の車両。
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ヨーロッパ有数の弾薬庫もある。ロシアがその軍事プレゼンスを正当化するのに使う、旧ソ連時代の名残だ。
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4月下旬、トランスニストリア当局は武器庫の周辺が攻撃を受け、ウクライナから監視ドローンが飛んできたと主張した。
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ただ、ウクライナ側はトランスニストリア地域で攻撃は一切していないと、これを否定した。
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軍事専門家の中には、侵攻を正当化するためか、ウクライナの注意をそらすためにロシア側が攻撃したのではないかと指摘する声もある。
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こうした攻撃を受け、モルドバ側は軍事力の強化を望むようになった。
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トランスニストリア側は長年、ロシアに加わりたいと希望してきた。チラスポリ —— 沿ドニエストル共和国の"首都" —— にある政府の建物にはロシア国旗が掲げられている。
ベンデルにある鉄道博物館。
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ただ、ロシアによるウクライナ侵攻を明示的に支持してはいない。
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ここ数カ月で逃れてきた人たちを含め、数万人のウクライナ人がトランスニストリア地域で暮らしている。
ベンデルのレーニン・ストリート。
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ウクライナ戦争の痕跡は、最近逃れてきた人たちが運転する車のウクライナ語のナンバープレートくらいだ。
ベンデルにある公園に立つレーニン像。
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政治的には孤立しているものの、トランスニストリア地域はモルドバ国内の他の地域に比べて、特に景気が悪いようには見えない。
映画館では、最新のハリウッド映画やロシア映画が上映されていた。
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通りには映画館やカフェ、レストランが並んでいる。
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高級車もたくさん走っている。
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ただ、海外の企業はほとんど見かけない。金融セクターはロシアの銀行が独占している。
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この地域に住む多くの人々がロシアやモルドバ、ルーマニアの市民権を持っていて、ルーマニアの市民権があればビザなしでヨーロッパを旅することができる。
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ロシアの支援を受けてはいるものの、トランスニストリア地域はヨーロッパとも関係が近く、その輸出の多くは欧州連合(EU)向けだ。
EUが支援するプロジェクトも。
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Insiderもこの地域の観光業を盛り上げるためにEUが支援するプロジェクトを目にした。
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トランスニストリアの軍事基地では、ロシア兵と現地の志願兵が協力している。
ベンデルにある軍事基地。
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ベンデルにあるオスマン帝国時代の要塞の塔からは、基地の様子も見える。
ベンデル要塞。
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定期的な戦闘訓練は行っているものの、この地域の兵士たちは古い、旧ソ連時代の装備が頼りだ。
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トランスニストリア地域の多くは、ドニエストル川の東側に位置している。
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過去30年間、住民たちはモルドバがこの地域のロシア語話者を消し去ろうとしていると教えられてきた。
ベンデル要塞の博物館。
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「シェリフ(SHERIFF)」というスーパーマーケットやサッカーの競技場など、この地域のほぼ全てのビジネスがロシアのオリガルヒ(新興財閥)によって支配されている。
チラスポリにあるスーパー「シェリフ」。
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トランスニストリア地域では軍と経済界のエリートの間に分断があると、モルドバ側は指摘している。
軍関係者が住んでいると考えられている建物。
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旧ソ連時代の表現やイメージを一部使用しているものの、トランスニストリアはロシア式の資本主義を実践している。
「沿ドニエストル・モルドバ共和国」への観光客を歓迎する看板。
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指導者たちは旧ソ連よりもロシア帝国の時代を懐かしんでいる。
ロシアの「大祖国戦争」を称え、第二次世界大戦でのナチスドイツの敗北を祝う戦車のモニュメント。
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チラスポリにあるスヴォーロフ広場には、ロシア国旗とトランスニストリア地域の旗が掲げられている。
スヴォーロフ広場(2022年4月23日)。
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政府の建物を撮影することは推奨されていない。
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4月下旬のある土曜日には、道路は車でいっぱいで、街を歩く人の姿も多く見られた。
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チラスポリには、国際的には承認されていない、ロシアが支援するジョージアの分離独立派地域アブハジアと南オセチアの領事館がある。
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チラスポリにあるレストランでは、ロシア料理やウクライナ料理も食べられるようだ。
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思うように独自の紙幣を印刷することができないため、トランスニストリアはカジノで使われるようなプラスチック製のトークンに頼らざるを得なくなっている。
通貨の広告。
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チラスポリにある空港は、民間の航空会社には開かれていない。先日あったとされる「攻撃」の標的にされた場所だ。
チラスポリにある旅行会社。
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爆発事件を受け、モルドバ側はトランスニストリア地域からやって来る車の捜索を強化している。
チラスポリの大通りからは、火災で被害を受けた建物が見える。
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チラスポリの中心部には、18世紀のロシアの軍人アレクサンドル・スヴォーロフの像がある。
スヴォーロフ広場。
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トランスニストリア地域は自らを「沿ドニエストル・モルドバ共和国」と称している。
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新しく作られた建物は現代的で、欧米の都市と似たような雰囲気だ。
チラスポリにある高級レストラン。
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チラスポリにあるソビエトの家(House of Soviets)は現在、 市庁舎として使われている。
チラスポリにあるソビエトの家。
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(翻訳、編集:山口佳美)