トヨタ車体は2022年5月下旬に行われた「人とくるまのテクノロジー展」で、独自開発した1人乗り超小型EV「コムス」の試作モデル「CNコムス コンセプト」を初披露した。
撮影:湯田陽子
ヤクルトレディの配達やセブンイレブンの宅配に使われている超小型電気自動車(EV)の「進化版」が、5月25〜27日にパシフィコ横浜で開かれた人とくるまのテクノロジー展で初公開された。
この超小型EVは、トヨタのランドクルーザーやアルファード、ハイエースなどの製造を手掛けるトヨタ車体が、独自に開発・生産・販売している一人乗り用EV「コムス」だ。
家庭用100Vのコンセントで充電でき、1回の充電で走れる距離は60km弱と、街なかの“ちょい乗り”に適した「カーボンニュートラル車」として、一般への販売はもちろん、ヤクルト、セブンイレブンのほか、自治体などでも導入されている。現行機のコムスの価格は、仕様により異なるが80〜98万円ほど。
発売開始から丸10年となる今年(2022年)中には、累計1万台を突破する見通しだという。
トヨタ車体は今回、現在販売中の2代目コムスに「カーボンニュートラルに貢献する6つの技術」を施した試作モデル「CNコムス コンセプト」を出展していた。
自動運転やボディ外側の塗装レス化、原付ミニカーのネックとなっていた暑さ対策として簡易クーラーを搭載、ドアとトランクを通常のハードタイプからソフトな「幌」タイプにして軽量化したほか、ダッシュボードは植物由来の材料「TABWD(タブウッド)」で成形している。
「CNコムス コンセプト」のダッシュボード(ブラウン部分)はトヨタ車体が開発したタブウッドを採用。左下の円筒形の部分は簡易クーラー。
撮影:湯田陽子
試作モデル「CNコムス コンセプト」。ドアとトランクをソフトな「幌」タイプにして軽量化を図っている。
撮影:湯田陽子
タブウッドのペレット(奥右端)とプレート状に成形されたカラーバージョン。
撮影:湯田陽子
タブウッドは、トヨタ車体が独自開発した新素材だ。
スギの間伐材を粉末にし、ポリプロピレンに混ぜたもので、同重量の既存部品と比べ、二酸化炭素(CO2)排出量は約27%削減できるという。すでに、ランドクルーザーやアルファード、ハイエースなどの部品としても採用されている。
完成車メーカーとして知られるトヨタ車体だが、実は近年、タブウッドをはじめ、環境負荷を低減させる材料の開発にも力を入れている。
トヨタ車体が開発した材料技術を紹介。
撮影:湯田陽子
植物由来100%のタブバイオ(左)とタブパルプ(右)。
撮影:湯田陽子
今回の展示では、タブウッドをさらに進化させた材料などを出展。「TAB-BIO(タブバイオ)」は、ポリプロピレンの代わりにバイオマスプラスチックを採用した植物由来100%の新素材だ。「TAB-PULP(タブパルプ)」は、古紙や段ボールといったリサイクル素材を使った、同じく植物由来100%の吸音材だという。
「自動車は振動することもあって、実は吸音材がけっこう使われているんです。今はほとんどがプラスチックですが、それを紙でつくろうというコンセプトで『タブパルプ』を開発しました。
水や火などへの耐性も含めて、自動車部品として安心して使える水準はクリアしているので、今後の実用化に向けて積極的に提案していきたいと思っています」(トヨタ車体)
(文・湯田陽子)