オーストラリアの飲食・フードサービス系でシェア1位のv2food(v2フード)。日本でも徐々に販路を広げている。
撮影:湯田陽子、画像:バーガーキング公式サイト
100%植物性の大豆ミートパティを使ったバーガーキングの「プラントベースワッパー」。そのパティを開発・製造しているオーストラリアのベンチャー「v2food(v2フード)」の植物肉が、日本市場で広がりを見せている。
日本のバーガーキングにプラントベースワッパーが登場したのは2020年12月。当時は期間限定だったが、その後間もなく定番メニューに加わった。
v2foodの100%植物性パティを使用したバーガーキングの「プラントベースワッパー」。2020年当初は590円(単品)だったが、現在は540円(同)で販売。
出所:バーガーキング公式サイト
また、食品メーカー大手・カゴメと「卵を使わないオムライス」を開発したTWOも、v2フードのパティを採用。2022年4月から、植物性食品(プラントベースフード)専門カフェ「2foods」で「濃厚てりやきアボカドバーガー(弾力パティ)」「スパイシージャンクバーガー(同)」の提供を開始している。
「コロナ禍で飲食店さんはどこも厳しい状況だったので苦戦していましたが、ここへ来て引き合いが増えています」
こう話すのは、v2フードの日本代理店を務めるオザックスのライフサイクルソリューション本部副本部長の田中文明氏だ。
「詳しくはまだ言えませんが、ステーキハウスや全国チェーンの居酒屋など、今年中に、v2フードの“肉”を使ったメニューを提供するお店がいくつか登場すると思います」(田中氏)
飲食店だけではなく、自宅で食べられるミールキットを提供している企業や大手食品メーカーからの引き合いもあるという。
5月31日に開かれたオーストラリア大使館商務部主催の「オーストラリアの食品産業とSDGs 取材会」には、v2フードの「v2ミンチ」を使ったお弁当が登場。麻婆茄子(前列右)、ハンバーグ(前列中央)、焼き餃子(後列右)、串カツ(後列中央)など、ひき肉の代替としてさまざまな料理に使えるようだ。
撮影:湯田陽子
取材会で試食した、v2ミンチのビーフ味(手前)とポーク味(奥)を使った水餃子。豚肉の餃子に慣れているせいか、筆者にはポーク味のほうがしっくりきた。オザックスの田中氏自身の経験によると、ビーフ味は「コロッケに使うと抜群。ラザニア、グラタンもおすすめ」だという。
撮影:湯田陽子
v2フードの植物性パティ「v2バーガー」。バーガーキングのプラントベースワッパーは、このパティをベースに、直火焼きなどのオペレーションに適した工夫が施されているという。
撮影:湯田陽子
豪州のプラントベース食品市場を牽引
v2フードは、地元のオーストラリアではどんな存在なのだろうか。
5月31日、オーストラリア大使館商務部が開いた「オーストラリアの食品産業とSDGs 取材会」で、参事官のマレー・スペンス氏は次のように語った。
「オーストラリアでバーガーキングが展開するチェーン『ハングリー・ジャックス(Hungry Jacks)』では、2019年10月の発売開始以来、v2フードのパティを使ったハンバーガーが1000万食も売れています」(スペンス氏)
v2フードの特徴。オーストラリア連邦科学産業研究機構と提携し、独自の技術を開発している。
出所:オーストラリア大使館商務部「オーストラリアの食品産業とSDGs 取材会」発表資料
田中氏によると、「シドニーは『ヴィーガンの聖地』とも言われるほどで、プラントベース食品がかなり浸透している」という。
そうした土地柄のため、「植物性ミート・食品を販売する企業が続々と登場している」(オーストラリア大使館商務部)ほか、代替肉業界では著名なビヨンドミート(Beyond Meat)やインポッシブル・フーズ(Impossible Foods)といったアメリカのベンチャーも積極的に展開している。
「外食・フードサービス向けの市場ではv2フードが国内シェア1位。小売りに関してはビヨンドミートがシェア1位で、v2フードはそこに“追いつけ追い越せ”という状況です」(田中氏)
海外市場では、中国、香港、フィリピン、ニュージーランド、タイ、韓国にも進出している。日本市場でも前述した通り、今後の展開が期待される。
「将来的には、『お肉にする? 魚にする? プラントベース(植物性ミート)にする?』といったように、メニューを選ぶ際の選択肢になることがゴールだと思っています。そこに到達できるように頑張りたいと思います」(田中氏)
(文・湯田陽子)