ソニーの2022年フラグシップ機である「Xperia 1 IV」。
撮影:小林優多郎
ソニーの2022年夏スマホである「Xperia 1 IV」。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクから6月3日に発売される。価格はキャリアによるが、端末購入時の価格はいずれも19万円台となっている。
今回は、ほぼ開発最終版のXperia 1 IVを使って、カメラを中心にファースト・インプレッションをお送りする。
Xperia 1 IVはXperia PRO-I、αとは違う方向性
Xperia 1 IVの背面カメラ。
撮影:林佑樹
既報の通り、Xperia 1 IVは写真に軸足を置きつつ、動画配信をする人を強く意識した機種だ。
Xperia 1 IVに触れてみると、「Xperia PRO-I」で感じた「真正面から『α』(ソニーのデジタル一眼カメラ)に向かおうとしている」印象が薄れ、「αと似た方向に進もうとしているが、微妙に軸足を変えようとしている」と感じる。
これは昨今のデジタルカメラにも付きまとう要素だが、写真や動画といったカテゴリーの境界線が曖昧になっている点が大きく影響している。また、ソニーが頑なにコンピュテーショナルフォトグラフィー(Computational photography)への道を進まないでいる理由とも言える。
カラーバリエーションは3色。写真左からブラック、アイスホワイト(ドコモ、KDDIのみ)、パープル(ドコモのみ)。
撮影:林佑樹
そのキーが「光学ズーム」だ。
デジタルズームと、光学ズームでのクローズアップには、絵的に大きな違いがある。リアルタイムで超解像処理をしつつ、光学的な演算をして補完して……というのは2022年時点では性能が足りず難しい。
もちろん、処理性能の話であるため、いずれは可能になるだろうが、それは当分先になるだろう。愚直に光学に走ったXperia 1 IVは、いまの道具として最適解を狙ったものだといえる。
作例で見る望遠レンズの実力
Xperia 1 IVの背面カメラは3つ。超広角16mm(F2.2)、広角24mm(F1.7)、望遠85mm〜125mm(F2.3〜F2.8)の3つで、それぞれ1200万画素のイメージセンサーを搭載している。
そのなかで大きな進化点は「望遠カメラ」だ。85mm〜125mmは光学5.2倍ズームで切替式ではないため、その間であれば、好きな焦点距離で撮影できる。
その際の光学的な現象もメリットになる。わかりやすいものでは、望遠圧縮になるが、これはニュース映像などでお馴染みの人混み撮影テクニックのひとつで知っている読者もいるだろう。
Xperia 1 IVはペリスコープを採用している。
出典:ソニー
もちろん、600mmといった超望遠ではないため、強烈な望遠圧縮は生じないが、人物や小物撮影においてはほどよい絵になりやすい。
とりわけ、85mmは人物撮影で多用される焦点距離であり、写真や動画を考えると50mm付近をスキップしてでも実装したかったのだろう。
ズームの速度はとてもクイックだ。85mmから125mmへのシフトはタップとともに終わるし、85mm〜125mm間の変更もドラッグにしっかりと追従した。
画像:筆者によるスクリーンショット
以下の4枚の写真(ソニーが実施した先行体験会にて撮影したもの)は、同じ位置から16mm、24mm、85mm、125mmと分けて撮影したものだ。この距離だと前ピン(ピントが被写体より手前にズレること)になりやすい「α」のクセは同じだった。
また瞳AFは85mmと125mmで動作せず、顔検出をしているにも関わらず測光があやしいあたりもチューニング真っ最中といったところだ。
Videography Pro使用時には3つのカメラをシームレスに切り替えて画角を変更できる。イメージセンサーを跨いでいるのにも関わらず、色の変化がほとんどない点は驚きだ。
撮影:小林優多郎
繰り返しになるが、今回触ったXperia 1 IVは最終版ではないため、フォーカス精度やAWB(オートホワイトバランス)については製品版でまた変わっていそうな印象が強い。といっても、トラッキング性能は高く、通常のフォーカスだけでなく、瞳AFについても良好だった。
Xperiaとしてはいつものシャッターボタン(写真右側のボタン)。少しクリック感が減った印象だ(写真は上が1 IV、下が前期種1 III)。
撮影:小林優多郎
Xperia 1 IVはすべてのカメラで120fps高速読み出しに対応。
最大60回/秒のAF/AE演算、20コマ/秒の連写も実現しているほか、望遠カメラにも光学手ぶれ補正を搭載していると、撮影面ではよりコンパクトデジタルカメラ的になったと言える。
モデルさんにクルッと回ってももらい連写したもの。もう少し挙動の改善がありそうな印象を受けるが、人体検出と顔検出、瞳検出の動きがわかるだろう。また測光は顔及び瞳検出時、そこを最優先で実行されるため、状況の影響を受けにくいのもわかるはずだ。
撮影:林佑樹
絵づくりはXperia PRO-Iをベースに、Xperia 1 IVに最適化を狙ったという。
わかりやすい部分は「緑」の表現だ。Xperia PRO-Iのレビューでも触れているが、デジタルカメラのαでお馴染みの「妙に青くて暗い緑」になってしまうケースが大きく減っている。
連写して木々を撮っていると、稀に「いつもの緑」と遭遇したくらいだった。
意外と良かったのは125mmのサイズ感だ。人物よりもオブジェクトの撮影にほどよく、お気に入りのアイテムや製品を紹介したい場合に都合がよさそうだ。
α7RM4Aを125mmで撮影してみたもの。またシャドウ側の階調の具合もわかるデータにした。DRO OFFにして、あとはカメラアプリ任せだ。なお、DROをオンにすると、グリップ部の濃い影はもう少し柔らぐ。※写真をタップ(クリック)すると、大きな画像で表示します。
撮影:林佑樹
Xperia PRO-Iはガラスモールドレンズ採用の24mmが群を抜いて描写がよく、そのほかのカメラの描写が置いてけぼりだったが、Xperia 1 IVはすべてのレンズが高次元にまとまっている。
写真であれ、動画であれ、画角が豊富であると見せ方を増やせるし、被写体に最適な焦点距離でより魅力的に見せることもやりやすい。