個人のCO2排出量を可視化するサービス「becoz wallet」。クレディセゾンと提携して、カード履歴から排出量の確認もできる。
撮影:西山里緒
クレディセゾンは、決済データに基づいて二酸化炭素(CO2)の排出量を可視化できるクレジットカード「SAISON CARD Digital for becoz」を6月2日から発行開始した。
開発に携わったデータ分析企業「DATAFLUCT」代表の久米村隼人氏によると「CO2の家計簿のようなもの」だといい、カードと名はついているものの、デジタル上で完結するサービスだ。年会費は無料で、希望する場合はプラスチックカードも発行できる。
クレジットカードと連携した時のイメージ図。
撮影:西山里緒
なぜ買い物するだけでCO2排出量を可視化できる?
なぜクレジットカードで買い物するだけでCO2の排出量を可視化できるのか? 仕組みはこうだ。
「SAISON CARD Digital for becoz」では、決済データがDATAFLUCTの提供するサービス「becoz wallet(ビコーズ ウォレット)」に自動連携できるようになっている。
このシステムでは、「ある業種が平均的に排出しているCO2量」を後述するアルゴリズムで算出できる。そこで、例えばコンビニで1000円分の買い物をしたとしたら、「コンビニ業種(小売店など)の平均的なCO2排出量」から、1決済あたりのCO2排出量を割った数値をカウントしていく、という仕組みだ。
データ連携イメージ。
出所:クレディセゾン
肝心のCO2排出量の算出方法は、スウェーデン発のフィンテック企業Doconomy(ドコノミー)社が提供する「Åland Index(オーランド・インデックス)」と呼ばれるアルゴリズムを採用している。
DoconomyはマスターカードやS&P Globalなどと提携し、すでにクレジットカード決済からCO2排出量を測るサービスを展開している。
今後は、CO2排出量を可視化するだけでなく、一定の料金を毎月支払うことで自分の出したCO2を「オフセット」する機能も搭載される予定だという。
料金を支払うことでCO2を「オフセット」できる機能もつく予定だ。支払ったお金は環境団体へ寄付される。今後は特典をつける構想もあるという。
撮影:西山里緒
オフセットされた分のCO2は、政府が認証する「J-クレジット制度」を通じて森林保全団体や環境事業団体などへ寄付される。
金融大手も脱炭素ビジネスに取り組む
記者会見に登壇した、DATAFLUCT代表 久米村隼人氏(写真右)、クレディセゾン社長 水野克己氏(写真中央)、J-クレジット制度にも携わる、ウェイストボックス代表 鈴木修一郎氏。
撮影:西山里緒
そもそも今回の取り組みは、2021年7月にDATAFLUCTがDoconomyと提携したリリースを発表し、それを見たクレディセゾン側から連絡が来たことから始まった、と久米村氏は明かす。
クレディセゾン社長・水野克己氏も、企業としてCO2排出量削減の取り組みに課題を感じる部分があったと語る。
「VISAやバンク・オブ・アメリカ、アリペイなど、大手金融企業はすでに脱炭素へ向けて大胆に動き出している。やや遅い感はあるが、なんとか海外に追いつけ、追い越せでやっていきたい」(水野氏)
久米村氏によると、初期のターゲットは「割高でも環境に配慮した商品を買いたい」と考える先進層、400万人だという。
(文・西山里緒)