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IT人材獲得へ、マネフォがベトナムに2拠点目。過熱する争奪戦と「日本離れ」の危機

betnam

ベトナムでは国を挙げてエンジニアを養成。日本を含む各国のIT企業が人材獲得に乗り出している。

shutterstock,REUTERS/Yen Duong/File Photo

従業員数が1400人を超え、日本におけるフィンテックをけん引するマネーフォワードが、エンジニアを獲得するため海外に目を向けている。

マネーフォワードは2019年、初の海外開発拠点をベトナムのホーチミンに設置。2022年4月には、同じくベトナムのハノイに2つ目となる海外拠点を置いた

ベトナムと言えば、かつては安い人件費を目指して製造業を中心に日系企業が進出。2000年以降は、IT企業が現地企業に開発を委託する「オフショア開発」の拠点になった。

しかし、今やベトナムは安い開発拠点ではなくなりつつある。

国を挙げてIT人材の育成を進めてきたベトナムには、今や欧米などのIT企業が拠点設置を進めているほか、ベトナム発のベンチャーも次々と誕生。エンジニアの獲得競争が激化している。

20年でIT人材が20倍に

永井さん

マネーフォワードベトナム・永井七奈CEO。現地での愛称は「エマ」。

撮影:横山耕太郎

ベトナム発のベンチャーは、どんどん資金調達して勢いに乗っています。他国では欧米やシンガポール、韓国の企業が多く進出していて、エンジニア人材獲得の競合になっています」

マネーフォワードベトナム・永井七奈CEOはそう話す。

永井氏は前職で2014年から4年間、べトナムのオフショア開発企業に勤務。その後、2021年にマネーフォワードに転職し、ホーチミン拠点でマネジメントを担当。6月からベトナム拠点のCEOに就任した。

マネーフォワードがベトナムに注目する理由は、優秀なIT人材を大量に生み出しているからだ。

マネーフォワードによると、ベトナムでは2000年以降、IT業界を重要産業として、人材育成を強化。教育のデジタル化も進めてきた。結果、2000年からの20年間で、IT業界の労働者は20倍の100万人を超えたという。

今後もIT人材の輩出が見込まれるうえ、日本企業にとっては時差が少なく、地理的に近いメリットもある。

「IT人材が多い開発拠点ではインドも有名ですが、欧米企業の参入が進んでおり、IT人材の獲得競争はさらに厳しくなりつつあると聞きます」(永井氏)

アピールポイントは「成長環境」

ハノイの町

ハノイ開発拠点の周囲の風景。

提供:マネーフォワード

マネーフォワードが、IT人材採用のアピールポイントとしているのが、オフショア開発ではなく、開発から運用、グロースまでを担う「開発拠点」だということ。マネーフォワードもかつては、ベトナムでオフショア開発を進めていたが、あえて現地に開発拠点を設ける戦略に転換した。

開発拠点では、開発に使用する技術の選定から開発、プロダクトの管理までを担当する。これまでにベトナムでは、マネーフォワード・クラウド固定資産など、日本で展開するサービスを独自で開発した実績がある。

「海外企業の拠点の多くが、開発の上流・中流工程は、自国で担っている企業も多い。その点マネーフォワードでは初期工程から携われるので、エンジニアにとって成長機会になる」(永井氏)

新しく設置されたハノイ拠点長を務める竹中一将氏は、キャリアパスを意識して就職先を選ぶベトナム人エンジニアもいるという。

「採用面接では、『技術的なチャレンジができるのか?』や、ロール&レスポンジビリティ(役割と職務における責任)について多く質問されます」(竹中氏)

またベトナムでは、フィンテックやSaaSへの関心が高いことも、採用の追い風になっている。

『フィンテックに詳しくなりたい』、『大規模な開発に関わりたい』という声も聞く。もちろん市場の年収水準を満たしていることが前提です」(竹中氏)

ベトナム拠点「開発をリードしたい」

竹中さん

ハノイ拠点長の竹中氏は、インターンを経て2018年にエンジニア職でマネーフォワードに入社。現地での愛称は「バンブー」。

撮影:横山耕太郎

現在ベトナム拠点に在籍する社員は約百数十人で、日本人は拠点長やプロダクトマネジャーら数人のみ。現地では積極採用を続けており、多い月では10人以上が入社することもある。

「ベトナム人エンジニアと日本人エンジニアで、スキル面での差は感じていません。ただ若いベトナム人エンジニアは、学生時代からIT企業で長期インターンを積んでいる人が多く、経験豊富な即戦力が多い」(竹中氏)

特にホーチミンやハノイといた都市部では、IT人材が多く育っており、若い世代のあこがれの職種になっている。

ベトナムで採用した人材が、東京の開発拠点で働く例もあり、今後その人材がベトナムに帰国して現地の拠点に関わるなど、グループ全体での人材の獲得や育成にも期待がかかる。

「このプロダクトは難しいから、ベトナムに任せようと言われるくらい、マネーフォワードグループの中でも開発力に強みを持ちたいと思っています」(竹中氏)

もはや「日本を見ていない」

小林CEO

2020年7月にマザーズ上場したSun Asteriskの小林泰平CEO。

撮影:今村拓馬

一方で、ベトナム人エンジニアの「日本離れ」に危機感を募らせる企業もある。

「ベトナムの若いエンジニアは、日本を見なくなってきている。だったらアメリカに行くというエンジニアが増えています。経済がシュリンクしている日本で、まだ外国人材が日本企業で働いているのが奇跡と捉えたほうがいい」

ベトナム現地でエンジニア約1460人を雇用し、日本企業向けに開発支援事業を展開するSun Asterisk(サンアスタリスク)の小林泰平CEOはそう指摘する。

Sun Asteriskは2012年、ベトナムで起業(当時の社名はフランジア)。当時すでに、システム運用や保守のオフショア開発が盛んだったが、Sun Asteriskではあえて新規事業の開発業務の受注に力を入れ、受注案件の単価を上げてきた。結果、Sun Asteriskへ業務を委託する企業が右肩上がりに増え、現地でのエンジニア雇用も順調に拡大してきた。

しかし、ここにきてベトナムでは「日本離れ」が進んできているという。

ベトナム国内では、日本の技能実習制度についてマイナスイメージが定着してしまったことに加え、待遇面で優位な欧米の企業を志望するエンジニアが増えているという。最近では円安の影響もあり、ベトナム国内では「安い日本」のイメージも広がりつつあるという。

「日本企業から受注する案件の単価は、この10年ほど大きく上がっていない。一方でアメリカの市場では単価が上がり続けている。ベトナム国内でも日本の発注単価の安さは知られるようになってきています」

現地では特にフィンテックやブロックチェーン企業がエンジニアに人気で、先進国のIT企業は、現地の給与水準の5倍や10倍を支払って雇用するケースも増えているという。

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