主力のネットワーク関連商品・サービスで、中小企業のDXを支援。左から、石丸正弥取締役、横井一紀常務、富山強・法人マーケティング部長。
提供:バッファロー
パソコン周辺機器大手のバッファローは6月2日、法人向けネットワーク事業を強化すると発表した。
2022年4月に法人ビジネス本部の組織体制を刷新し、販売パートナー向けの支援体制を拡充、IT人材不足によって立ち遅れている中小企業のDX化に力を入れていく考えだ。
DXを阻む「ひとり情シス」の現実
グローバリゼーションの加速やテクノロジーの進化により、企業を取り巻く経営リスクはより複雑化してきた。
個人情報の漏洩などのセキュリティ対策、自然災害をはじめとする緊急時の事業継続(BCP)、コロナ禍で浸透したリモート環境の整備、さらには2022年1月に改正された電子帳簿保存法への対応など、企業が対応すべき課題は山積している。そこに輪をかけて、世界的な半導体不足やサプライチェーンの混乱が経営を圧迫している状況だ。
バッファロー取締役の石丸正弥氏は記者会見で、企業が抱える経営課題の例として、テレワークの導入や緊急時の事業継続計画(BCP)の策定が中小企業では進んでいないと指摘。その最大の理由として挙げたのが、人材不足だ。
「大企業は情報システム部門があり、部門として対処できる。しかし、中小企業では『ひとり情シス』という言葉があるように、本当に1人でやらなければならない。(対策を)やらなければいけないことは分かっているが、なかなか手が回らないというのが実情だ」(石丸氏)
【図1】日本の企業が抱える経営課題。テレワークの導入状況や、自然災害などの緊急時に遅滞なく事業を継続するバックアップ計画(BCP)の策定状況を見ると、中小企業の対応の遅れが目立つ。
出所:バッファロー発表資料
【図2】中小企業でテレワークやBCP策定が進まない最大の要因は人材不足。経済産業省の調査によると、2030年に最大79万人のIT人材が不足するという。
出所:バッファロー発表資料
人材不足解消・BCP対策・インフラ構築を強化
バッファローでは、そうした「ひとり情シス」企業のDXを促進するため、特に人材不足の解消、BCP対策、インフラ構築に力を入れて支援していく。
例えば、すでに約5200社が登録しているリモート管理サービス「キキNavi」では、遠隔地にある機器をネット経由で保守・管理が行えるため、保守・管理負担の軽減、情報システム担当者の働き方改革にもつながるという。
「キキNaviは簡易操作機能を有しており、通常であれば現地訪問での対応が必要な再起動やファームウェアアップデートについて、現地訪問せず、キキNaviからリモート対応できるため、訪問工数・訪問費用が不要になる」(バッファロー)
【図3】IT人材不足の解消、BCP対策、インフラ構築を中心に、中小企業のDXをサポートする。
出所:バッファロー発表資料
さらに、機器を開梱することなく登録・設定ができる「キキNavi クラウドゼロタッチ」を今年の冬に提供開始すると発表。BCP対策に関しても、2022年2月に開始した「キキNavi クラウドバックアップ」について、同じく今年の冬にサブスクリプションメニューの提供を始める。
一方、懸念される半導体不足の影響について、石丸氏は相当厳しい状況にあるとしながらも次のように語った。
「部品メーカー、サプライヤーと非常に強い関係性を築いているが、それでも調達できない部品もある。しかし、我々には自社設計をしている強みがある。目的の部品ではないが、近い部品を入手できれば回路変更して使えるようにできる。また、その性能品質を自社でしっかりと評価する体制もある」(石丸氏)
(文・湯田陽子)