マイクロソフトのブラッド・スミス社長は、従業員が「組合を結成したり、組合に加入したりする法的権利」を尊重すると述べている。
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- マイクロソフトのブラッド・スミス社長によると、同社は組合と協力する意向だという。
- マイクロソフトの動きは、他のハイテク企業が組合結成を拒否しているのとは対照的だ。
- 同社が買収するアクティビジョン・ブリザードでは、ゲーム業界初の組合が結成された。
マイクロソフト(Microsoft)は労働組合と協力していくと述べ、同業他社とは異なる新たなアプローチを示した。
同社のブラッド・スミス(Brad Smith)社長が2022年6月2日にブログに投稿した記事によると、マイクロソフトは従業員が「組合を結成したり、組合に加入したりする法的権利」を有していることを理解し、尊重すると述べている。
「従業員が権利の行使を望むのであれば、我々は組合とともに創造的かつ協力的なアプローチを取ることを約束する。そしてマイクロソフトは具体的な組合結成について提案されているところだ」とスミスは述べている。
同社がこの新たなアプローチに乗り出したのは、仕事の性質や従業員に対する企業の責任への考え方が変化してきたためだという。
アメリカの民間企業において、労働者は自らの権利を強く求めるようになっており、ここ数カ月、組織化を目指してその取り組みを活発化させている。ギャラップ(Gallup)が2021年に行った世論調査によると、調査対象となったアメリカ人の68%が労働組合を支持すると答え、1965年以来、労働組合運動に対する最も強い支持を示した。
このような支持の波は、組合の結成を後押ししている。
例えば、アメリカ各地のスターバックス(Starbucks)のバリスタたちは2022年初め、組合への加入、あるいは組合結成の計画を立てていたとInsiderが報じている。
ハイテク分野では、2022年4月にアマゾン(Amazon)初となる組合が、ニューヨークの倉庫で働く従業員によって結成された。一方、アップル(Apple)の小売店従業員も今年に入ってから組織化に奔走している。
しかし、ハイテク企業は長年、組合結成の取り組みに抵抗してきた。
アマゾンは、組織化を求める従業員を威圧したと報じられており、2021年には組合の結成を問う選挙の際にソーシャルメディア上に反対票を投じることを推奨する広告を掲載した。アップルについては、同社幹部が、従業員に組合結成のリスクについて考えるよう促すビデオを送ったと報じられている。また、店長に対して組合結成の支持を取り下げるよう従業員を諭す話し方について記したメモを送ったとされている。
マイクロソフトが労働組合と協力し合うという驚くべき宣言をブログで発表したことは、他のハイテク企業による労働組合結成への対応とは一線を画していると言えるだろう。
マイクロソフトは、ゲーム業界で初めて労働組合を結成したアクティビジョン・ブリザードを買収
マイクロソフトが組合との協力に前向きなのは、ゲームソフトウェア開発会社のアクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)を690億ドル(約9兆円)で買収することが影響しているようだ。この買収は2023年には完了する予定となっている。
マイクロソフトによる買収が発表された数日後にあたる2022年1月、アクティビジョンの子会社Raven Softwareで品質保証を担当するグループが、組合結成の意向があることを声明で発表した。
組合を結成した労働者は全米労働関係委員会(NLRB)に請願することで、雇用主に対して組合を強制的に承認させることができる。しかし、このプロセスは時に闘争的で長引くことがあるため、そのトラブルを避けるために自主的に組合を承認する雇用主もいる。
この場合は、アクティビジョンが品質保証担当グループによる組合結成の取り組みを認めなかったことから、同グループはNLRBに請願書を提出したとInsiderが報じている。
5月23日、品質保証担当グループが組合結成の是非を問う投票を行ったところ、賛成が多数を占め、ゲーム業界初の労働組合の結成が可決されたとガーディアンが報じている。マイクロソフトはこれを受け、組合結成の取り組みを妨害することはないと述べた。
6月2日にスミス社長が投稿したブログによると、マイクロソフトは組合と連携して、争議が公になることで会社のイメージが損なわれることを避ける方法を模索していると述べた。
「これらの状況を巡って争いながら対処するよりも、建設的で友好的な方法で対処し、従業員が十分な情報を得た上で選択できるようにしたい。そうすることで少なくとも当社や当社の文化にとって建設的ではないと考えられる公での論争を避けることができる」と、スミスはワシントン・ポストに語った。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)