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- Z世代は、物価上昇に対して十分な収入を得るのか、気候変動を防ぐことを目指すのか、の狭間に立たされている。
- ウォール・ストリート・ジャーナルは、多くのZ世代が公務員などになりたいと考えているが、それでは生活に十分な給与が得られないと報じている。
- これは、Z世代が自分たちが作り出したわけではない危機によって追い込まれている例のひとつだ。
1997年から2012年の間に生まれたZ世代は、自分たちが引き起こしたわけでもない2つの危機の狭間に立たされ、どちらが優先すべき緊急の問題なのかで悩んでいる。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は2022年6月2日の記事で、Z世代の求職者が直面する問題のひとつを掘り下げている。つまり、給料のよい仕事を探すのか、それとも自分の社会的価値観に合った仕事を探すのかということだ。インフレが進むにつれて、その境界はより不明瞭になってきている。
大量に労働市場に参入してきたZ世代にとって個人の社会的価値観は長い間優先すべきことだった。人材サービスのランスタッド(Randstad)が3万5000人の労働者を対象に行った「ワークモニター・グローバル調査」によると、Z世代の半数近くが、自分の社会的・環境的見解に沿わない会社での職務を受け入れることはできないと回答した。しかし、その後、彼らはあらゆるものの価格の高騰に直面することになった。
実際、大手会計事務所デロイト(Deloitte)が2021年11月から2022年1月にかけて世界46カ国のZ世代1万4808人とミレニアル世代8412人を対象に行った調査によると、Z世代の37%が「個人の倫理観に基づいて」仕事や任務を拒否したことがあると回答しているが、これは前年度の調査結果よりも落ち込んでいるとWSJは指摘している。
同調査によると、Z世代が主に懸念していることは「生活費」が29%とトップであり、「気候変動」は24%で2位となった。つまり、WSJが指摘するようにZ世代にとって最大の関心事は、気候変動から生活費に変わったということだ。
注目すべきはデロイトの調査期間が2021年11月から2022年1月までであることで、2022年3月にインフレ率が41年ぶりの高水準に達する前からZ世代は生活費について懸念していたことになる。
「今、経済的ストレスを感じているZ世代とミレニアル世代の割合は、もっと増えているだろうと考えざるを得ない」とデロイトのエコノミスト、パトリシア・バックリー(Patricia Buckley)はInsiderに語っている。
WSJの取材によると、Z世代の中には公務員や非営利団体の仕事では生活していくのに十分な給料が得られない人もいる。
例えば、ロースクールを最近卒業したベンジャミン・ニッツァーニ(Benjamin Nitzani)は、10万ドル(約1300万円)以上の学生ローンを抱えている。彼は家族の中で初めての大卒者だ。学生ローンの返済が迫る中、バイデン政権は学生ローンの軽減に向けて取り組んでいるが、その軽減額はわずか1万ドルでしかない。
彼は就職活動では、最も給料の高い会社を狙った。
一方、来年ロースクールを卒業するアリサ・ホワイト(Alisa White)は、「Law Students for Climate Accountability(環境への責任を果たす法科学生)」という団体を立ち上げた。この団体のメンバーは、化石燃料を扱う企業には就職しないことを誓っている。ホワイトはこの誓いを守り、「ささやかな」収入を得る準備をしているとWSJに語っている。
「いずれはぜひ子どもや家を持ちたいが、『それは無理だ』と感じている」とホワイトは言う。
「それが心に重くのしかかっている」
つまりZ世代は、物価の高騰と、自分たちの将来に立ちはだかる気候の危機と、どちらの危機に先に取り組むべきか、選択を迫られているのだ。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)