米マイクロソフト(Microsoft)のサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)。
REUTERS/Fabrizio Bensch
米マイクロソフト(Microsoft)が全社的に採用計画の大幅な見直しを進めている。
とりわけ注目すべきは、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の元シニアバイスプレジデントで「エンジニア部門の魂」と呼ばれたチャーリー・ベルを引き抜いてトップに据え、2023会計年度のスタート(2022年7月)とともにローンチさせるサイバーセキュリティ部門の人材補強計画も見直し対象とされていることだ。
上記の動きはマイクロソフトの社内メールと内情を直接知る人物にInsiderが取材した結果、明らかになった。
マイクロソフトのエイミー・フッド最高財務責任者(CFO)は6月初旬、同社の経営幹部らに対し当初の採用目標を見直すことを伝えたが、それは想定されていた以上の内容だった。
社内メールによれば、同社エグゼクティブバイスプレジデントに就任したベル率いる新部門で7月1日以降に採用する従業員数は当初計画から大幅に減って200人とされた。
ベルを発信元とする社内メール(5月11日付)を通じて、抜本的な組織改革の覚悟と新部門のビジョンが共有されたばかりにもかかわらず、船出直前に計画見直しが決まった形だ。
採用数の見直しについて説明を受けた人物によると、ベルは当初、新部門で(2023会計年度中に)4000人を新規採用する計画を立てていたという。
マイクロソフトの広報担当に確認したところ、4000人という数字は正確ではないとしつつ、ベル率いる新部門の採用数が当初の想定を下回る形になるとしても、同部門を1000人以上の規模に成長させる計画は変わっていないとの回答だった。
「当社は新会計年度に向けた準備を進めるなかで、人材と機会が適切な組み合わせになるよう鋭意調整しています。新会計年度も採用数は継続して増加させる計画で、したがってその配属先の検討についてもますます大きな力を割くことになります」(広報担当)
Insiderがスクープ記事(5月13日付)で報じたように、マイクロソフトは最近、業績に応じた給与の最大3%積み増しに加え、「パートナー」職位以上を除く「レベル67以下」の従業員について年次株式報酬を最低25%、「パートナー」以上のシニアレベルの従業員については最低20%増やす計画を発表している。
今回の採用計画見直しは、そうした報酬引き上げ計画の発表からわずか1カ月足らずで決まった。
マイクロソフトが2022年に入って実施した年次の従業員意向調査では、「マイクロソフトで良い取引ができているか(つまり、会社への貢献に応じた合理的な見返りを得られているか)」との設問について、ポジティブな回答を提出した社員は66%にとどまっている。
同調査は2022年から実施手法が一新されたため、過去の調査結果と直接的には比較できないかもしれないが、2021年の同設問についてポジティブな回答を寄せたのは73%で、2022年はそれを下回ったことになる。
なお、想定される景気後退入りを前に、マイクロソフト以外にもテクノロジー企業の採用計画減速あるいは凍結が相次いでいる。
フェイスブック(Facebook)の親会社メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)は2022年内の新規採用を凍結、セールスフォース(Salesforce)も一部職種で採用見合わせを決定。
コインベース(Coinbase)も新規採用を無期限凍結し、一部のジョブオファー(採用内定)を取り消すことを決定し、候補者にメール通知を済ませている。
(翻訳・編集:川村力)