投資家の誰もが、この株価下落の最中で「いつ買いに転じるべきか」に頭を悩ませている。
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株式市場の暴落はもちろん良いことではないが、ときには必要なことでもある。
バリュエーションがあまりに急激に上昇したときには水準の調整が必要であり、そうでないとあとですべてが茶番劇だったと分かって、もっと落差の大きい暴落が起きることになる。
賢い投資家はそうした暴落のあとほとぼりが冷めるころに動き出す。ポートフォリオに組み込む価値があるものの割高すぎて手の出なかった優良銘柄が、そのころには信じられないようなバーゲン価格で取引されているかもしれない。
底値のタイミングをずばり読み切るのはほぼ不可能でも、ある銘柄の価格が高値から20%あるいはそれ以上下落した場合、再度の買いを少なくとも検討してみる価値はある。
もちろん、問題はその買いに転じるタイミングがいつなのか、ということだ。
オンライン専業株式ブローカー(=委託売買業者)フリーダム・ファイナンス・ヨーロッパ(Freedom Finance Europe)の投資アドバイス部門を率いるマキシム・マントゥロフは、現在きわめて割安と評価される7銘柄について、潮目が変われば最大135%のリターンを期待できると予測している。
「金融関係者が発行するレポートなどの記述に従えば、割安株とはその実質的な価値が市場で取引されている価値より高い銘柄を指します。
つまり、それらの銘柄には客観的に考えてより高い価値があるはずで、利得を得たい投資家がそのいくつかをポートフォリオに組み込む判断が理にかなっていると言える銘柄のことです」
「割安株への投資にはリスクが伴います。資産保全を重視する投資家は部分的に組み入れれば十分ですし、獲得可能な最大のリターンを期待する投資家は(割安株ではなく)個別のグロース(高成長)株から成るポートフォリオを組むこともできます」
そうした注意も踏まえた上で、マントゥロフが選んだ「きわめて割安な」7銘柄とそれぞれについての分析を紹介しよう。
【割安株1】アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)
2月14日、アダプティブコンピューティング(=特定のアプリケーション向けに最適化可能で運用開始後もアップデートできるプログラマブルロジックデバイスなどのハードウェアを核とするデータ処理)分野の有力企業ザイリンクス(Xilinx)の買収を完了。収益とフリーキャッシュフローの引き上げ効果を期待できる。
5月26日には分散型サービスプラットフォームを提供するペンサンド(Pensando)の買収も完了し、クラウド、エンタープライズ、周辺アプリケーション市場における影響力拡大は加速していくだろう。
「引き続き買収が収益成長をけん引します。投資家はおそらくAMDの売上高および利益ポテンシャルを過小評価したままでしょう。2022年中に市場投入する新製品は、既存の顧客から支持されるだけでなく新規の顧客を惹きつけ、ひいては同社の企業価値を高めることになります」
目標株価は155ドルで、現在の90ドルから73%の上昇余地がある。
【割安株2】アストラ・スペース(Astra Space)
「アストラ・スペースはアメリカの民間宇宙企業。2021年11月、同社製のローンチ・ヴィークル(打ち上げ機)が米アラスカ州コディアック打ち上げ基地を離陸し、周回軌道に達しました。市場はこの成功を歓迎し、株価は42%の大幅上昇を記録。今後の打ち上げ成功がどんな影響をもたらすか想像できます」
「2022年も多くの打ち上げが予定されており、試験段階から商用化フェーズへの移行も計画されています。年末までには売上高の増加も予想されます。同社は2年分に相当する十分なキャッシュを有し、その点も投資家にとって魅力的と言えます」
目標株価は8ドル、現在の3ドルから135%の上昇余地がある。
【割安株3】モデルナ(Moderna)
「新型コロナのパンデミックは沈静化に向かっているとの見方が強いものの、先行きを予測するのは困難です。
モデルナは、新型コロナがエンデミック(=一定の季節や周期でくり返し流行する感染症)への移行期にあり、人類はそれと共存しなければならず、どんな展開になろうとワクチンの使用は必須としています。
2022年はすでに大量のスパイクバックス(=追加接種向けワクチン)受注が予測されていますが、2023年の受注はそれを上回るとみられます」
「モデルナは合計44件の感染症その他疾患向けのワクチン開発を進めており、なかでもインフルエンザワクチンとHIV(ヒト免疫不全ウイルス)ワクチンが注目されます。開発に成功すれば、同社の株価は一気に上昇するでしょう」
目標株価は250ドルで、現在の145ドルから72%の上昇余地がある。
【割安株4】ギットラボ(GitLab)
「GitLabプラットフォームは、次世代の主要アプリケーションを構築するのに必要なコーディングの核心に位置する存在です。
記録的な物価上昇が続くなかでも成長を続けることができるきわめて重要なプラットフォームで、DevOps(デブオプス、開発担当と運用担当が協調して迅速にソフトウェアを開発する手法)領域におけるGitLabの獲得可能な市場規模はおよそ400億ドル(約5兆2000億円)に達します」
目標株価は70ドルで、現在の48ドルから46%の上昇余地がある。
【割安株5】リビアン・オートモーティブ(Rivian Automotive)
「リビアンは2022年第1四半期(1〜3月)に2553台の電気自動車(EV)を生産し、年内には増産を計画しています。アマゾンとの(配送用EVバン10万台の受発注含めた)パートナーシップは同社に安定的なキャッシュフローを保証し、リビアンブランドの信頼性を高め、競争における優位性をもたらします」
リビアン株は受注済み販売額のわずか5.3倍という低いバリュエーションで取引されており、足もとのサプライチェーン問題が同社の成功への道を妨げる唯一の障害と言える。
目標株価は75ドルで、現在の34ドルから123%の上昇余地がある。
【割安株6】シバンイェ・スティルウォーター(Sibanye Stillwater)
「不換紙幣(法定通貨)のボラティリティ(価格変動)に対するヘッジ手段を必要とする人々は白金(プラチナ)に関心を寄せることが多いものです。
世界規模で自動車生産の停滞が続いており、白金の取引価格は2016年の水準にとどまっているものの、ロシアからの輸出が途絶するおそれがあることに加え、新たに関心を寄せる投資家からの需要が高まることで余剰感がなくなる可能性があります」
「シバンイェ株は市場や同業他社の水準に比べてきわめて低いバリュエーションとなっています。配当利回りは8%と高く、しかも現金持ち高が十分、債務残高も良好な水準で、設備投資など資本的支出を削減する計画もあります」
目標株価は25ドルで、現在の15ドルから69%の上昇余地がある。
【割安株7】ウィーワーク(We Work)
「ウィーワークは過剰財務がふくれ上がり、収益性や安定性より成長を優先させた結果、破たん寸前までいきました。それでも、同社の提供するフレキシブルオフィス(=シェアやコワーキングなど柔軟性の高い共用型オフィス)は面白く、パンデミックが沈静化しつつあるなかで驚くほどのレジリエンス(=回復力、強靭さ)を発揮しています」
「時価総額は50億ドル(約6500億円)まで下がり、今後アップサイドの余地があります。いずれ稼働率9割以上を実現できるなら、株価は現在の価格の数倍にふくれ上がる可能性があります」
目標株価は10ドルで、現在の7ドルから51%の上昇余地がある。
(翻訳・編集:川村力)