“脱TOEIC”じわり。メルカリやITベンチャーで進む「会話」重視

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渋谷にあるHENNGEのオフィス。アメリカ国籍の男性社員と英語で会話する日本人社員。

撮影:横山耕太郎

※この記事は2022年6月9日初出です。

英語能力を図るテストと言えば、TOEIC。その常識が変わり始めている。

外国籍の社員の多い企業を中心に、TOEICリスニングテスト&リーディング(L&R)で測定される読解力ではなく、むしろ英語で話したり、英語でチャットしたりするスキルが重視するようになっている。

社内の公用語を英語化しているSaaSのスタートアップ・HENNGE(ヘンゲ)では、TOEIC(L&R)だけだった基準を変更し、2020年から4技能(読む・聞く・書く・話す)を評価する制度に変更。

また東京オフィスのエンジニアリング組織の半数が外国籍社員というメルカリでも、求人募集に記載する英語レベルをTOEICから国際的な指標・CEFR(セファール)に変更したほか、独自開発のスピ―キングテストを導入して会話レベルを判定している。

こうした「脱TOEIC」の背景には、エンジニアなど外国籍人材を獲得するため、企業が英語利用を進めていることがある。

企業が求める「英語力」の今を取材した。

英語を公用化。背景には「採用難」

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HENNGE執行役員の汾陽氏(右)と人事評価などを担当する高須氏。

撮影:横山耕太郎

東南アジアにはエンジニア人材の『宝の山』があります。ただ彼らは日本語が話せないので、日本で働くことに抵抗を持っていました。ならばこっちが英語を話せるようになればいいと、英語を公用化することを決断しました」

HENNGE執行役員で、人材採用に関わってきた汾陽(かわみなみ)祥太氏はそう話す。

クラウド利用の際のセキュリティに関するSaaSを展開するHENNGE(ヘンゲ)は、2016年に社内における公用語を英語化した。約230人の社員うち、東南アジアや欧米など外国籍の社員が約2割を占める(2021年9月時点)。テキストコミュニケーションは英語が原則で、半数の社員が日常的に英語で会話している。

公用語を英語化した狙いは、東南アジアなど外国籍のエンジニアを採用するためだ。

「うちのエンジニアが150万円以上の年収アップを約束されて、引き抜かれることもありました。募集しても一人も採用できず、採用が止まってしまった」(汾陽氏)

次第に生まれた「TOEICへの固執」

TOEICの受験者数。

TOEICの受験者はやや低下傾向が見えるが、年間200万人が受験するビジネスシーンでは最も一般的な英語テストの一つだ。

TOEICのウェブサイトより編集部キャプチャ。

外国からのエンジニア採用を活発にするため、公用語を英語化に踏み切ったものの、当時の社員のTOEIC(L&R)スコアの平均点は、990点満点中、495点。受験者全体の平均は600点程度になることが多く、英語を公用語としている企業としては厳しい結果だった。

しかしその後、昇進条件として人事評価にTOEICスコアを組み込み、会社としても英語学習を後押しした結果、TOEICスコアは順調に伸びていった。

英語の能力を高める文化はできたものの、次第に「TOEICの点数に固執する文化も生まれてきた」という。

「TOEICの良さは、実施頻度も多く、テキストも含めて学習しやすいという点。ただ外国人社員からは『なんでTOEICのL&Rのみで評価するのか? 点数が高くてもコミュニケーションが取れていない社員もいるし、逆に点数があまりなく英語で仕事ができている社員もいる』という声も聞かれるようになり、評価軸から根本的に考え直すことにしました」(人事評価など担当する高須俊宏氏)

国際的な指標に切り替え

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