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“脱TOEIC”じわり。メルカリやITベンチャーで進む「会話」重視

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渋谷にあるHENNGEのオフィス。アメリカ国籍の男性社員と英語で会話する日本人社員。

撮影:横山耕太郎

英語能力を図るテストと言えば、TOEIC。その常識が変わり始めている。

外国籍の社員の多い企業を中心に、TOEICリスニングテスト&リーディング(L&R)で測定される読解力ではなく、むしろ英語で話したり、英語でチャットしたりするスキルが重視するようになっている。

社内の公用語を英語化しているSaaSのスタートアップ・HENNGE(ヘンゲ)では、TOEIC(L&R)だけだった基準を変更し、2020年から4技能(読む・聞く・書く・話す)を評価する制度に変更。

また東京オフィスのエンジニアリング組織の半数が外国籍社員というメルカリでも、求人募集に記載する英語レベルをTOEICから国際的な指標・CEFR(セファール)に変更したほか、独自開発のスピ―キングテストを導入して会話レベルを判定している。

こうした「脱TOEIC」の背景にあるのは、エンジニアなど外国籍人材を獲得するため、企業が英語利用を進めていることが背景にある。

企業が求める「英語力」の今を取材した。

英語を公用化。背景には「採用難」

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HENNGE執行役員の汾陽氏(右)と人事評価などを担当する高須氏。

撮影:横山耕太郎

東南アジアにはエンジニア人材の『宝の山』があります。ただ彼らは日本語が話せないので、日本で働くことに抵抗を持っていました。ならばこっちが英語を話せるようになればいいと、英語を公用化することを決断しました」

HENNGE執行役員で、人材採用に関わってきた汾陽(かわみなみ)祥太氏はそう話す。

クラウド利用の際のセキュリティに関するSaaSを展開するHENNGE(ヘンゲ)は、2016年に社内における公用語を英語化した。約230人の社員うち、東南アジアや欧米など外国籍の社員が約2割を占める(2021年9月時点)。テキストコミュニケーションは英語が原則で、半数の社員が日常的に英語で会話している。

公用語を英語化した狙いは、東南アジアなど外国籍のエンジニアを採用するためだ。

「うちのエンジニアが150万円以上の年収アップを約束されて、引き抜かれることもありました。募集しても一人も採用できず、採用が止まってしまった」(汾陽氏)

次第に生まれた「TOEICへの固執」

TOEICの受験者数。

TOEICの受験者はやや低下傾向が見えるが、年間200万人が受験するビジネスシーンでは最も一般的な英語テストの一つだ。

TOEICのウェブサイトより編集部キャプチャ。

外国からのエンジニア採用を活発にするため、公用語を英語化に踏み切ったものの、当時の社員のTOEIC(L&R)スコアの平均点は、990点満点中、495点。受験者全体の平均は600点程度になることが多く、英語を公用語としている企業としては厳しい結果だった。

しかしその後、昇進条件として人事評価にTOEICスコアを組み込み、会社としても英語学習を後押しした結果、TOEICスコアは順調に伸びていった。

英語の能力を高める文化はできたものの、次第に「TOEICの点数に固執する文化も生まれてきた」という。

「TOEICの良さは、実施頻度も多く、テキストも含めて学習しやすいという点。ただ外国人社員からは『なんでTOEICのL&Rのみで評価するのか? 点数が高くてもコミュニケーションが取れていない社員もいるし、逆に点数があまりなく英語で仕事ができている社員もいる』という声も聞かれるようになり、評価軸から根本的に考え直すことにしました」(人事評価など担当する高須俊宏氏)

国際的な指標に切り替え

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そこで2020年、英語力の判断基準の変更を決断した。

これまではTOEIC(L&R)スコアだけで判断していたが、外国語の運用能力を図る国際的な指標・CEFR(セファール)を導入することになった。

CEFRは英語レベルを6段階で評価する指標で、TOEICやTOEFL、IELTS、ケンブリッジ英語検定、Duolingo English Testなどを受験すれば、そのスコアをCEFRに置き換えることができる。

ただTOEICの場合は、L&R テストの点数に、スピーキングとライティングをテストするTOEIC(S&Wテスト)の点数を合計して評価されるため、これまでは評価されていなかった「話す・書く」能力も求められるようになった。

英語を勉強する目的は何かを改めて考えると、英語を使って仕事を成立させることです。これまでは結果的に読む・聞くにこだわる評価基準になっていましたが、まずは英語で何ができるようになりたいかの基準を作り、4技能すべてを評価する仕組みが必要だと考えました」(高須氏)

また人事評価も変更。英語力がないと昇進できない制度を、英語レベルが上がれば、収入が上がる加点制に切り替え、自発的な学習を促している。

「日本で英語で働ける」がアピールポイント

アジア人のエンジニア

ベトナムでは国を挙げてIT人材を育成。IT人材を求めて東南アジアに目を向ける企業も増えている(写真はイメージです)。

shutterstock

社員の英語力が上がったことは、外国人採用の面でプラスの効果を生んだ。

HENNGEの外国人採用チームは、インドネシアやアメリカなどの各国の大学のジョブフェアやテックカンファレンスに参加し、現地のエンジニア求人媒体にも情報を掲載。「英語が公用語の日本企業」としての認知も進んできているという。

ただベトナムなど東南アジアでは、欧米など他国のテック企業もエンジニア獲得に動いており競争は激化している。だが、「だからこそ、英語が必要になっている」と汾陽氏は話す。

「ベトナムのIT人材の母数は日本より圧倒的に多く、日本で暮らしてみたいと考えるエンジニアも少なくない。英語で働けると言うことは、海外からの採用で重要な要素になっていくると思います

メルカリ、自前でテストを開発

メルカリで語学教育を担当する親松氏

メルカリで語学教育を担当する親松氏。 親松氏は前職では、フリーランスで外国人への日本語教育を行っていた言語教育のプロ人材だ。

撮影:横山耕太郎

東京オフィスのエンジニアリング組織の半数が、外国籍の社員だというメルカリでは、TOEICなど外部のテストではなく、会話能力を測るために独自開発したスピーキングテストを導入した。

半年に1回、社員の英語力をテストし、一人ひとりにフィードバックとレベルアップのための学習提案をしているという。

メルカリではかつて、人材募集の条件にTOEIC(L&R)スコアを記入していた時期もあったが、現在は人材募集のページに、国際的な指標であるCEFRレベルを明記。例えば、データアナリスト・マーケットリサーチャーの募集ページでは「英語:Independent(CEFR-B2)歓迎」などとされている。

メルカリインド拠点

メルカリは2022年6月にインド開発拠点を開設。グローバルでの開発や人材獲得を加速させている。

出典:メルカリ発表資料

メルカリでは2018年の上場後、急激に外国籍の社員が増え、社内公用語として使われる日本語と英語のレベルアップが課題になった。そこで英語・日本語教育などを専門とする部署・Language Education Team(LET)を発足させ、社員向けに語学学習カリキュラムを提供している。

LETの親松雅代マネジャーは、独自のスピーキングテストを導入した理由について、こう説明する。

「過去にはさまざまな英語教育サービスを使って、時間とお金をかけて英語を学んでいました。しかし、レッスンから職場に戻ると、英語を話せない社員が多かった。それはレッスンの目的がTOEICスコアだったことも原因の一つだったと思います。

また外部の学習サービスでは、何年もかけてやっと初級が終わるようなものもありますが、それではビジネスのスピードに追い付きません。より短時間で実務に直結する内容を学ぶことを目指しています」

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