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「もっと早く勉強しておけばよかった」をこの世からなくす。コクヨのノート電子化アプリ「Carry Campus」開発秘話

コクヨが開発したノート電子化アプリ「Carry Campus」開発の裏側とは。

コクヨが開発したノート電子化アプリ「Carry Campus」開発の裏側とは。

撮影:小林優多郎

いま、学生をとりまく「勉強道具」が進化を遂げています。1905年創業の大手文具・家具メーカー、コクヨでは、ノートを電子化できる勉強用アプリや文具にIoTをかけ合わせた子どものやる気を引き出す文具を考案し、話題となっています。

今回は、自分で書いたノートを電子化できるアプリ「Carry Campus」の開発経緯を取材。担当者は、スマホを活用する学習環境を整えることで「もっと早く勉強しておけばよかった」をなくしたいと語ります。

スマホが勉強道具として当たり前になった今、テストに悩む学生の救世主になるかもしれません。老舗メーカーが挑む、アナログとデジタルを掛け合わせた攻めの一手に迫ります。

特集企画「だから『老舗』は生き残る」:戦争、災害、不況、疫病…日本の老舗は数々の危機をどう乗り越えてきたか。これからの時代「守るべきもの」「変えるべきもの」は何か。伝統企業のトップやキーパーソンに聞きます。

コンセプトは「ノートとテストをつなぐアプリ」

コクヨの歴代キャンパスノート。

コクヨの歴代キャンパスノート。

撮影:小林優多郎

「コクヨの代表的な商品に『キャンパスノート』があるのですが、それをアプリにしたら便利じゃないかって」

そんなアイデアから生まれたのが、中高生向け勉強アプリ「Carry Campus」だ。

プロジェクトリーダーの久我一成さんは入社8年目。これまでペンケースなど文具の開発を担ってきた。

「コクヨでは学習意欲の向上につながる環境をつくっていくことを取り組みの1つとしています。その1つがこのアプリです。次の時代を担っていく学生、主に中高生をターゲットにしています」

「ご存知のようにコクヨはアナログの文具は強みなのですが、デジタルとアナログを掛け合わせることで新しい価値を出せないか……というのが発想の原点です」

アプリのコンセプトは『ノートとテストをつなぐアプリ』。キャンパスノートを気軽に持ち運べるという意味でCarry Campusという名前にしました」

今やスマホが「勉強道具」となった時代

撮影:小林優多郎

開発の背景には、勉強シーンの大きな変化があったと久我さんは語る。

「コロナ禍やGIGAスクール構想の影響もあり、この数年でパソコンやタブレット、スマホが勉強道具の一つとして当たり前になりました」

「オンラインの授業を見ながらノートにメモをする。勉強シーンにデジタルとアナログが共存することが当たり前になりました。開発のための調査では、高校生の約7割がノートをスマホで撮影したりスキャンしたりした経験があったこともわかりました」

「こうした学習環境から、どうすれば効率的に勉強できる環境を作れるか。どうすれば学習意欲の向上にコミットできるか。そこがミッションでもあります」

「早く勉強しておけばよかった」を、なくそう。

キャッチコピーは「『早く勉強しておけばよかった』を、なくそう。」

キャッチコピーは「『早く勉強しておけばよかった』を、なくそう。」

出典:コクヨ公式サイト

Carry Campusは中学・高校生の課題意識に寄り添ったものだ。

「私たちも学生の頃に『あぁ……あと1日早く勉強しておけば良かったなぁ』って思う瞬間ってありましたよね。テストや模試の日程を何となく覚えていても、予定に対して何を勉強したらいいかわからない学生さんは多いと思うんです」

「Carry Campusなら自分で書いたノートを撮影し、教科ごとに分類することはもちろん、小テストや定期テストの予定にノートを紐付けることもできます。『あと○日で数学のテストがある』『見直すべきノートはこれ』とリマインドもできます」

「アナログではキャンパスノートをご愛顧いただいていますが、デジタル分野で既存の電子ノートなどに勝負できるかといえば難しい。ならば、強みを活かしながら『次の価値』になるものを考え、『アナログとデジタルをつなぐ』ことに意味があると思ったんですね」

「つなぐ」という意味で注目したのは「撮影機能」だ。開発過程で中高生にヒアリングすると、よく使われている撮影アプリは「snow」「B612」「LINEカメラ」だった。

「自撮り用や画像補正用の“盛れる”アプリなど、普段遣いのアプリを多用していました。『ちょっとノート貸して』といったやり取りも、該当部分をアプリで撮影し、画像をLINEでやりとりしています。必要な機能に特化し、使い勝手のいいアプリが人気なんですね」

「おそらく社会人の感覚だとAdobeのAdobe ScanやマイクロソフトのOffice Lens を使うと思うんです。でも、学生の感覚ではこれらは『多機能すぎて使いこなせない』という声がほとんど。なので、Carry Campusでは勉強用ノートに特化した機能にしました」

撮影:小林優多郎

実際の紙のノートのように、赤いマーカーや緑のマーカーを引ける。また、暗記シートをつかって勉強できる機能もある。

「アナログのノートは一度マーカーをひいたら消すことはできない。どんどんメモを書き込むと見にくくなるし、汚れることもある。後で見たら見直しにくい……なんてこともあります。でも、デジタルならそれはありません」

ルーズリーフのようにノートの順番を入れ替えることができる。これもデジタルならではの強みだ。

全教科の定期テスト範囲のノートを一つにまとめて見直せるのが便利だというお声もいただきました。移動時間やテーマパークに行ったときの待ち時間など、いつでもスマホで見直せる。すきま時間で勉強を積み重ねるのに向いています」

中高生向けの勉強に特化したCarry Campusだが、思わぬ副次効果も生んでいる。

「SNSを見ていると、社会人や大学生の投稿もあるんですね。資格の勉強や英語学習にも使える。公務員試験や国家試験の勉強に使っている方もいました。登録ユーザーの割合で言うと社会人・大学生、高校生、中学生が1:1:1ぐらいです」

「キャンパスノートは現在5代目ですが、僕らは『第6世代』のようなものかもしれません。大々的なプロモーションはしていませんが1月末のローンチ以来、3カ月で5万ダウンロードを超えました。頻繁に中高生のモニターさんからご意見も頂き、UX/UIも常に見直しています」

プロジェクトリーダーの久我一成さん

プロジェクトリーダーの久我一成さん

撮影:小林優多郎

現在無料で頒布しているCarry Campus。勉強の効率化で生まれた可処分時間をさらに探求学習に使えるようなコンテンツがつくれないか、アイデア出しもはじめているという。

今後の目標を久我さんはこう語る。

「当面の目標は3年で100万ダウンロード。主軸となるCarry Campusのノートやスケジュール機能は無料でご提供し続けることは大前提だと考えています」

「その上で、塾や予備校の先生の板書と先生の解説を組み合わせた教材などもアイデアとしてはありえますよね。有料のコンテンツは探求学習のコンテンツにしたいと思っています」

勉強や定期テストに悩む全ての中学・高校生のみならず、学ぶ意欲のある全ての人にとって、Carry Campusは救世主になるかもしれない。

(取材・文:吉川慧

コクヨ:1905年、当時26歳の黒田善太郎氏が創業した和式帳簿の表紙製造業「黒田表紙店」がルーツ。1917年に社名を「国誉(こくよ)」に変更。由来は善太郎氏の「故郷富山の誉れとなる」という目標から。代表的商品「キャンパスノート」は1975年発売開始。これまでにシリーズ累計で約34億冊を販売。2021年度12月期の連結決算は売上高3201億円、純利益137億円、営業利益200億円。連結従業員は6825名(2021年12月末時点)。
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