6月7日、メルカリが東証グロース市場からプライム市場へ移行した。
株価の低迷が続く同社。国内では物価高への不安の声も聞かれるが、CEOの山田進太郎氏は「インフレの影響がEC業界にどのように表れるか正直分からないところもあるが、メルカリは二次流通でお得なものをお買い求めいただける場。そういったアドバンテージを生かしていきたい」と語る。
アメリカ以外への海外進出を
会見で今後の展望を語るメルカリCEOの山田氏。2022年6月7日。
提供:メルカリ
同日開かれた会見に登壇した山田氏は、2018年6月に東証マザーズ市場(当時)に上場してからこれまでの約4年間を振り返り、
「フリマアプリ『メルカリ』の日本事業、アメリカ事業、そして決済サービス『メルペイ 』という3本柱が着実に成長して、組織として新たな挑戦ができる基盤が整ってきました。今後は事業者向けのECサービス『メルカリShops』や暗号資産を活用した金融サービス『メルコイン』、物流の効率化を図る『メルロジ』などに注力したいです」
と語った。さらに、
「アメリカ以外へも進出し、グローバル展開を加速させていきます」
という。
メルカリUSのFY2022.6 3Qの決算概況。
出典:メルカリ2022年6月期3Q決算説明会資料
アメリカ事業の2022年1~3月期の営業損益は4040万ドル(約53億円)の赤字で、GMV(流通取引総額)成長率も鈍化している。新たな海外展開とはどういうイメージなのだろうか。山田氏は言う。
「アメリカの事業展開で得たノウハウは使っていきますが、メルカリやメルペイなどの3本柱の事業とは関係ないところで、新しいことをやっていく形になると思います。
独自で進出する形だけでなく、出資やM&Aすることも含めて、幅広くリサーチしている段階です」
注目のWeb3、ESG経営の今後は
青柳直樹氏。
提供:メルカリ
一方、今後、注力していくという暗号資産やNFTなど「Web3」領域の見通しについてメルカリ上級執行役員で日本事業責任者の青柳直樹氏は、
「現在、暗号資産交換業の申請をしています。サービス開発や体制構築は順調に進んでいるという認識で、来年度には暗号資産関連の事業をスタートしたいと考えています。
NFTではすでにパ・リーグと共同で事業を展開しています。
この1年間でもセキュリティの専門家やブロックチェーンの技術者に数多くメルカリグループに参画してもらいました。まずは暗号資産の交換業をスタートし、Web3関連の事業についても鋭意、取り組んでいきます」
と語った。
メルカリといえば、かねてより「ESG経営」を掲げて環境不可の軽減やダイバーシティ&インクルージョンの達成に向けてさまざまな取り組みを進めてきた。プライム市場に移行したことによって、さらなる役割が期待される。
「メルカリの事業そのものが環境問題に対してポジティブだと考えています。循環型社会に必要不可欠な存在になることを目指して事業を進めてきました。プライム市場に移行することを理由に何かする(施策を打つ、数値目標を掲げる)ということはないですが、今後もサステナビリティやガバナンスを強化していきたいです」(山田氏)
今後さらにESG投資ファンドなどとの面談の機会も増やしていくという。
(文・竹下郁子)