株式市場では年初来続いた記録的な下げ相場が一服した感があるものの……。
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米金融大手モルガン・スタンレーによれば、この「警鐘」を過度に気にかける必要はなさそうだ。いまのところは。
ただ、ひと月もすれば状況は変わっているかもしれない。
同社チーフ米国株ストラテジスト兼最高投資責任者(CIO)のマイク・ウィルソンによれば、足もとで見られる株価の回復基調は維持され、もしウクライナとロシアの和平交渉に何か進展があるなら、今後数週間についてはもう一段上昇する可能性もあるという。
それでも、4~6週間後には企業の収益悪化が次々と明らかになり、弱気相場で見られた束(つか)の間の上昇も終わりを告げる、というのがウィルソンの考えるシナリオ展開だ。
近ごろ、アップル(Apple)やファイザー(Pfizer)、メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)、マイクロソフト(Microsoft)など多くの企業が、きわめて力強いドルをはじめ為替相場の上下動が各社の事業に及ぼす影響について、懸念を表明している。
6月7日には早くも、米ディスカウントチェーン大手ターゲット(Target)が2022年通期の営業利益率見通しを下方修正した。直近3週間で2度目の引き下げだ。
ウィルソンは最近の顧客向けレポートで次のように指摘している。
「第2四半期(4〜6月)の決算発表シーズンまで、株価は現在の水準で推移すると思われます。しかし、いざ各社の業績報告の中身が明らかになり、2022年下半期の業績見通しが軒並み下方修正ということになれば、株式市場への大きな打撃は必至です」
「業績の下振れリスクを織り込むために株価が下がるか、企業側が自ら業績見通しを引き下げるか、どちらかしかありません。当社としては、第2あるいは第3四半期(7〜9月)の決算発表シーズンにその両方が起きるとみています。
業績が再加速の方向に修正されなければ(そのように当社が評価できなければ)、株価の水準は適切ではないと判断されるでしょう」
ターゲットが2度目となる通期利益予想の下方修正を発表したことで、小売りセクターを中心に株価の下落が広がった。インフレで個人消費が落ち込み、余剰在庫が積み上がるなか、その解消のために同社は値引き対応を余儀なくされている。
現時点では投資家に特段の悪影響を及ぼしていないものの、ウィルソンはこの問題がいずれ深刻化すると考えている。
ウィルソンによれば、アナリストによる企業の業績予想は近ごろ引き下げばかりが目立ち、引き上げはごくわずかにとどまる。
このトレンドは今後も続くというのがウィルソンの見方だが、投資家はその逆で、このトレンドが早々に終わって1株当たり利益(EPS)の上方修正が始まると期待している。
「市場は(業績予想引き下げが当面続くという)見方には反対のようです。あるいは、小売りセクターについては同じ見方でも、それ以外のセクターで収益成長が再度加速するとの見方が根強いようです」
しかし、ウィルソンの予測はすでに触れたように、「業績の下振れリスクを織り込むために株価が下がるか、企業側が自ら業績見通しを引き下げるか、どちらか」と限定的だ。
ウィルソンによれば、業績予想の上方修正が最も多いのは不動産セクターで、外食、商業・専門サービス、素材の3セクターも見通しが上向きつつある。
一方、下方修正が多いセクターの代表格はコンシューマーテック(=スマートデバイスなど消費者向けテクノロジー)や食品および生活必需品の小売りで、特に後者2セクターの不調は際立つ。
「一般消費財も過去4週間、耐久消費財と衣料品、小売りセクターを中心に業績見通しの下方修正が目立ちます」
現時点では、エネルギーのようなシクリカル銘柄(景気敏感株)のポジティブトレンドのおかげで、企業の収益は全体として見れば良好に映る。しかし、その効果も薄れつつあるという。
「投資家にとって最大の悩みどころは、エネルギーや素材といった代表的なシクリカルセクターに大きく依存する(見せかけの)収益成長に対して与えられた割安なバリュエーション(あるいは株価マルチプル)に資金を投じるべきか否か、という点です」
(翻訳・編集:川村力)