米投資信託評価機関モーニングスター(Morningstar)は、市場のボラティリティ(価格変動性)が高く先行き見通しの立たない現状について、株式投資残高の「減らし」時ではなく「しぼり込み」時と位置づけています。
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※この記事は2022年6月9日初出の記事の再掲です。
米投資信託評価機関モーニングスター(Morningstar)は、パンデミックの発生以降でいまほど株価が割安に感じられる時期はなかったと指摘する。
米国株チーフストラテジストのデイブ・セケラは、企業の将来キャッシュフローとその予測可能性に基づいて算出される適正株価をもとに、上のように思い切った見解を披露している(同社の評価手法によれば、現在の株価は適正価値を13%下回る水準)。
セケラによれば、現在の株価は「あり得ないほど(incredibly rare to see)」安く、適正価値に対してここまで割安になったのは、2011年のギリシャ債務危機、2018年12月のクリスマス大暴落、2020年3月の新型コロナ感染拡大を受けたロックダウン開始時の、過去に3度だけだという。
「株式市場は相当な割高水準で推移していたので、年初来の揺り戻し(株価下落)そのものには特に驚きませんでした。ただし、揺り戻しの振れ幅があまりに大きかったために、長期投資家にとってかなり割安と言える水準まで下がったという認識です」
2022年は高インフレや金利上昇、景気後退入りの可能性など投資家が考慮すべき問題が多く、株式市場では悪戦苦闘の状況が続いている。
そうしたファクターの影響により、一部のセクターで割安銘柄が生み出されているのは確かだが、一方でそうしたファクターは大きなボラティリティ(価格変動)を生み出す要因でもあり続けるという。
セケラは、投資家が株式を購入する際に考慮すべき「4つのリスク」を挙げ、それを踏まえた上で選ぶべき「あり得ないほど割安な」8銘柄を推奨する。
今夏の価格変動リスク
セケラがいま注視しているのは、経済成長の鈍化、インフレ、金利上昇、債券市場だ。
モーニングスターは最近、アメリカの2022年国内総生産(GDP)成長率予測を3.5%から3%に引き下げ、翌23年についても下方修正して2.2%にとどまるとした。
とは言え、景気後退入りの定義(テクニカルリセッション)は一般的に2四半期連続のマイナス成長とされ、したがって下方修正後の数字も依然として景気後退入りとは無縁だ。
「経済成長は鈍化するかもしれませんが、それでも、近々に景気後退局面入りする可能性はそれほど高くないと考えています」
高インフレについても、4月の米消費者物価指数の伸び率は8.3%(前月比マイナス0.2ポイント)と8カ月ぶりに鈍化を見せたこともあり、セケラはさほど不安視していない。
モーニングスターはインフレ率が2023年末までに2%まで低下すると予測している。
「サプライチェーン問題が緩和され、インフレ率も(急上昇が始まった)対前年の伸び率は頭打ちになるため、2022年下半期には沈静化に向かうでしょう」
しかし、インフレ抑制を目的とする金融政策については、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに際してタカ派なのかハト派なのか矛盾するシグナルを出すこともあり、投資家たちはいまも振り回され続けている。
セケラは、FRBが予定している今後2回(6月、7月)の米連邦公開市場委員会(FOMC)が株式市場の行く先に大きな影響を及ぼすとみる。
「市場では引き続き、FRBが今後2回のFOMCでそれぞれ0.5%の利上げを決定するとの予測がコンセンサスになっています。FRBは2回の利上げ後にあらためてインフレと経済成長の見通しについて評価を行ったうえで、将来の利上げの道筋を決めることになるでしょう」
さらに、投資家は債券市場からも目を離さないほうがいいと指摘する。
FRBは計画通り6月1日から量的引き締めに着手した。8月までは毎月475億ドル、9月以降は毎月950億ドルのペースでバランスシートを縮小する。そのため、米国債をはじめ政府系機関が発行するエージェンシー債や住宅ローン担保証券(MBS)を売却していく。
「FRBが保有する債券の売却を開始したこの6月が、債券市場にとって次なる試練の始まりです。FRBはもはや満期を迎えた債券の償還資金を再投資に回さず、そのままランオフ(保有債券を減少)させるので、債券市場はその分を吸収しなければならなくなります」
推奨8銘柄
このように株式市場を揺らがせるさまざまなリスクは存在するものの、以下で紹介する優良8銘柄はきわめて割安で注目すべきとセケラは強調する。
グロース(高成長)株は、金利上昇に対する投資家の懸念をまるごと引き受けて下落した形だが、モーニングスターが採用する適正価値推計を用いた評価手法によれば、グロース株は現在19%の割安水準となっている。
「私たちモーニングスターのバリュエーションによれば、グロース株は目下最も割安な水準で取引されており、したがっていまはエクスポージャーを単に減らすのではなく、(グロース株のなかでも)真の優良銘柄に慎重にしぼり込む時期なのです」
それでは、セケラの推奨する8銘柄を具体的に見てみよう。
【割安株1】アマゾン(Amazon)
Markets Insider
[セクター]テクノロジー[株価]123.65ドル
[時価総額]1兆2500億ドル
[URL]https://www.amazon.com/
【割安株2】バイオジェン(Biogen)
Markets Insider
[セクター]ヘルスケア[株価]197.11ドル
[時価総額]293億7000万ドル
[URL]https://www.biogen.co.jp/
【割安株3】ボーイング(Boeing)
Markets Insider
[セクター]資本財[株価]138.92ドル
[時価総額]824億ドル
[URL]https://www.boeing.jp/
【割安株4】コンパス・ミネラルズ・インターナショナル(Compass Minerals International)
Markets Insider
[セクター]基材[株価]44.49ドル
[時価総額]15億2000万ドル
[URL]https://www.compassminerals.com/
【割安株5】ガイドワイア・ソフトウェア(Guidewire Software)
Markets Insider
[セクター]テクノロジー[株価]79.44ドル
[時価総額]66億8000万ドル
[URL]https://www.guidewire.com/ja/
【割安株6】メルカドリブレ(MercardoLibre)
Markets Insider
[セクター]Eコマース[株価]804.34ドル
[時価総額]397億5000万ドル
[URL]https://mercadolibre.com/
【割安株7】タイラー・テクノロジー(Tyler Technologies)
Markets Insider
[セクター]テクノロジー[株価]358.28ドル
[時価総額]148億ドル
[URL]https://www.tylertech.com/
【割安株8】ジンマーバイオメット(Zimmer Biomet)
Markets Insider
[セクター]ヘルスケア[株価]119.17ドル
[時価総額]252億9000万ドル
[URL]https://www.zimmerbiomet.com/ja
(翻訳・編集:川村力)