撮影:太田百合子
食品機械の総合展「FOOMA JAPAN 2022(国際食品工業展)」が、東京ビッグサイトで開催中だ。期間は6月7日〜6月10日まで。
2020年は開催中止、2021年は愛知に会場を移しての開催となったため、東京ビッグサイトでの開催は3年ぶり。出展社数は過去最多となる874社にのぼる。
中でも筆者が注目したのは、人との「協働」を前提に、安全性はもちろん、省スペース性にも配慮したロボットだ。
「FOOMA JAPAN 2022」は、人手不足が進むなかで、食品工場の省人化と自動化がどのように進んでいくのか、その最前線がのぞけるイベントになっている。
AI、ロボティクス分野で特に気になった7つの展示をまとめた。
弁当の盛り付けで人と“協働”するロボット「Foodly」
撮影:太田百合子
ロボットメーカーのアールティは、人型の協働ロボット「Foodly」を出展している。弁当の製造ラインで、人とロボットが並んで作業する様子を、デモンストレーションで紹介していた。
「Foodly」はキャスター付きで、工場内の所定位置に自由に配置できる。人材不足の現場に作業の一員として加えられる、省スペース性が特徴だ。
1台に複数の食材や容器に合わせたパターンを登録できるため、食材に合わせてつかみやすいハンドに付け替え、設定を変えるだけで多品種少量生産に対応できるという。
カメラからの映像をAIで解析しながら動きを制御するため、唐揚げなどバラ積みされた食材も盛り付けることができる。
ブースではすでに食品会社の惣菜加工工程や、弁当の製造ラインへの導入実績もあるソリューションだと説明していた。
クレープやポップコーン、愛知工業大学は学生のアイデア生かす
撮影:太田百合子
デンソーウェーブのブースで、人協働ロボットアーム「COBOTTA」を使った愛知工業大学とのプロジェクトが展示され、注目を集めていた。
展示は、学生から「COBOTTA」を用いたシステムのアイデアを募り、それを具現化したものだ。過去の「FOOMA JAPAN」でも、ポップコーンの盛り付けや餃子の餡詰めなど、アイデア満載のシステムが展示されてきた。
今回展示されたのは、2台の「COBOTTA」を使って、クレープの生地を焼くところからトッピングや盛り付けまでを全自動で行うシステムだ。
注文はタブレットから行う。カメラやセンサーを使用していないため、こうした作業では微調整がむしろしやすいという。クレープを巻くための折りたたみの台など、学生独自の工夫がユニークだ。愛知工業大学ロボット研究ミュージアム 客員講師の西山禎泰氏によれば、「作業をロボットに任せることで、人はマネージメントなど他の取り組みができる。人とロボットとの協働を目指したプロジェクト」という。
惣菜盛り付けロボ「Delibot」…1日1000食で稼働中
撮影:太田百合子
新設されたスタートアップゾーンに出展する、コネクテッドロボティクスがデモンストレーションしていたのは、「Delibot」と名付けられた惣菜盛り付けロボット。「惣菜」はフードテック、省エネとともに、今年からFOOMAに加えられたカテゴリーだ。ポテトサラダ、きんぴら、胡麻和えなど「不定形の惣菜」を、重量センサーを備えたアームで一定量ずつ、素早くトレーに盛り付けることができる。
ポテトサラダのようなやや粘度の高い食材も、先端のハンドの形状やカバー、アームを振るように上下に動かすといった制御の工夫で、盛り付けられるようにした。すでに惣菜工場の製造ラインに4台の導入実績があり、1日1000食のポテトサラダを盛り付けているという。
粉をスコップで正確に秤取る「Powder Weighing」
撮影:太田百合子
技術商社たけびしのブースに出展するエクサウィザーズは、AIを用いて粉を正確に量り取るロボット「Powder Weighing」を展示した。
砂糖、塩、きなこなど、ものによって粒の細かさや凝縮性が異なる「粉」を、自社開発のAIプラットフォーム「exaBase」で解析。ロボットアームに取り付けたスコップで指定した量をすくうことができる。
カメラの映像とAIによる画像認識技術を組み合わせることで、粉の盛り上がりなどを立体的に認識し、スコップを差し込む角度や深さを細かく制御している。汎用のロボットアームを活用できることがポイントだと、担当者は説明していた。おそらくは導入コストを抑えられ、同時に省スペースで複数の粉に対応できるのもメリットだ。
これまで人が経験をもとにやっていた粉を量り取る作業を、1分で1kgほどのペースなら5%の誤差で自動化できるという。
画像認識で「超効率的な芯のくりぬき」を自動化するロボ「CUTR」
撮影:太田百合子
野菜などのカットを自動化する「CUTR」は、熟練の作業員でも7秒程度かかる「レタスの芯をくりぬく」という作業を、アームに取り付けたカッターを使って約5秒で実現するロボット。
作ったのは、一般消費者向けでは「めざましカーテン mornin'」のメーカーとしても知られるロビットだ。
くり抜かれたレタスの芯。単純作業に思えるが、廃棄される部分が非常に小さいことがわかる。
撮影:太田百合子
「CUTR」は、不定形物のカット加工を自動化するソリューションで、カメラの映像からAIが芯の位置や角度を予測し、アームとカッターを制御する仕組み。レタスなどさまざまな種類の芯のある葉野菜に対応するだけでなく、トマトなど他の食材にも応用できるという。
過酷な「フライ調理」環境をロボットで改善するデンソーウェーブ
撮影:太田百合子
前出のアールティは「Foodly」で培ったAI技術で、デンソーウェーブとも協業している。
デンソーウェーブがデモしていた人協働ロボット「COBOTTA PRO」とアールティのAI技術を組み合わせた冷凍フライの投入システムがその一例だ。
アールティの担当者によれば、食品工場の中でもフライ調理の現場は、蒸し暑くて油の臭いが強く、またやけどのリスクもあるなど、作業員には特に厳しい環境とのこと。
出展されたシステムでは、バラ積みにされた冷凍フライをAIを用いて認識し、「COBOTTA PRO」が1つずつピッキングして、コンベア上に並べる様子が披露されていた。システムの導入で省人化が実現すれば、現場の負担を軽減できる。
高い精度で食品の「品質検査」を実現、フードロス低減にも
撮影:太田百合子
このほか、産業機械大手の安川電機のブースでも、AIとロボットを組み合わせたシステムが大きく展示されていた。
傘下のアイキューブデジタルが手がけるAI画像判定ソリューション「Y's-Eye」を用いたもので、人が目視で行っている検査とほぼ同じ、90~95%という高い精度で、安定して製造ラインに流れてくる食品の品質検査ができるという。
検査の精度を上げることでフードロスを減らせるほか、人の経験に頼らないことで省人化にも貢献するとしている。
「FOOMA JAPAN 2022(国際食品工業展)」の開催にあたっては「Restart FOOMA」をテーマに掲げ、優れた技術研究・開発を表彰する「FOOMAアワード」を創設したほか、前出のDelibotなどが出展したスタートアップゾーンも、今回新設されたものだ。
東1~8ホールに設置された会場には、食品工場向けの多種多様な製造機械がずらりと並ぶほか、ロボティクスやAIといった最新技術で工場の効率化、自動化を実現する製品やソリューションを、デモを交えて見ることができる。
(文・太田百合子)